僕が守りたかったけれど

景空

文字の大きさ
145 / 166

145話

しおりを挟む
 「ミーア大丈夫か」
「う、うん。ここ赤鳳のいた広場よね」
これまでの事を話すと、どうも僕もミーアも同じ体験をしたようだ。
「なんだったのかしらね」
「恐らく、なんだけど。僕達に幻のようなものを見せて試したのかなと思う。印ってのが何なのかは分からないけど」
「でも、これで赤鳳はいいのよね」
「多分ね。それにこれって四神獣それぞれにこなす条件があって、単なる力押しじゃダメなんだと思う」
「そうすると、残りの西と北でそれぞれにってことね」


 今僕達の目の前には巨大な4つ足の神獣。
あれから西の山では白き巨虎に僕達の愛情を試され、北の巨蛇亀には道を問われた。
 そして全ての印を得た今、中心の山の上で麒麟と相対している。
「4つの試練を乗り越えた人の子よ。お前たちは何を望むか」
「力を、自分の力をきちんと使えるような力を」
僕が答えると続けてミーアも口に乗せる。
「あたしも、これ以上大きな力が欲しい訳じゃない。でも十分に使えるようにしたい」
僕達の答えに
「ならば、我の影を打倒して見せよ」
麒麟が言った途端に、その横に影が立ち上がる。ドラゴンにこそ及ばないものの身の丈10メルド近い巨体の麒麟の影が目の前に現れた。
 僕達があっけにとられていると、その影の麒麟の目が虹色に光り1歩踏み出してきた。僕もミーアも慌てて剣を取る。麒麟、おとぎ話の中でしか聞いたこともない神獣。どんな動きをするのか、どんな攻撃をするのか魔法を使うのか、ブレスはどうなのか、何も分からない。それでも、ただ見ているだけでは埒もあかない。となれば、まずは僕が一当て。最近は僕の主武器ともいえるオリハルコンの両手剣を手に駆け寄り首を狙い振るう。『ガッ』硬い手ごたえ。それでもまったく歯が立たないということでは無さそうだ。手ごたえを感じている僕に、麒麟の前足が振り下ろされてきた。とっさに飛び退り躱す。動きも速い。見ると打ち下ろした前足の威力で地面が大きく陥没している。やはり攻撃力も巨体に見合ったもののようだ。そうして僕が麒麟の敵意を稼いでいるうちに、するするとミーアが麒麟の後ろに回っている。もう一度、今度は右前足を狙ってみる。一度下がったところから一足で近づき右前脚の膝を狙う。『グリン』何かを抉った手ごたえ。そうして僕が前面で打ち込んでいる向こうで、ミーアがいつもの通り麒麟の左後ろ足に両手に持った片手剣を振るい切りつけている。ミーアの剣撃が当たった瞬間、麒麟の敵意がミーアに向きかける。そこに僕が両手剣を振るう。一瞬でも意識が離れたところからの一撃に麒麟に与えるダメージも大きめだ。ここからは本当に大物を狩るときのいつも通り。僕が前面で敵意を稼ぎ、ミーアが後ろから切りつけ、相手の足を鈍らせる。このまま行けるか、そう思ったところに麒麟の角がバチバチと光を放つ。頭を大きく振るい僕を狙って角を振り下ろしてくる。とっさに左に剣をかざし盾にしつつ右横に飛んで躱す。わずかにかすった角からバチッと衝撃が走った。左腕がしびれて動きが鈍い。動きの鈍い左腕を諦めて両手剣を右腕1本で振るう。スピードの落ちた僕の剣は度々躱される。そうしているうちにミーアからの攻撃が気になってきたのだろう、麒麟の敵意がミーアに移りかける。とっさに両手剣に身体を預け、身体ごとぶつけた。かなり深くに刺さったらしく剣を抜くのにやや手間取ってしまった。剣が抜けたところに麒麟が前足を突き出してきた。とっさに身体の前に両手剣をかざし直撃を避けたものの勢いを殺しきれるものでは無く吹き飛ばされてしまった。地面を2度3度と跳ね、膝を着き止まる。ダメージはまだ許容範囲内。すぐに顔を上げ麒麟に向かい駆けだす。麒麟の顔がミーアに向いている。幸いなことに今の攻防で左腕のしびれが取れた。僕は両手剣を大上段に振り上げ横を向いた麒麟の首に振り下ろした。麒麟がガクンと身体を揺らした。影の麒麟だけにダメージが分かりづらかったけれど、そうとうに効いてはいるようだ。
 危ないところはその時までで、徐々にダメージによって動きの鈍ってきた影の麒麟をどうにか討ち果たしたときには2度目の夕日が空を茜色に染めていた。
僕もミーアも肩で息を継ぎながらも、麒麟本体に目を向けている。
「よくぞ我が分身を討ち果たした。そなた達の力を十全に発揮できるようになったと言ってやりたかったのだが、そなたたちの力は大きすぎる。すべてを発揮するには今少しの試練が必要だ。もし望むのならば北の魔竜ガイアドラゴンをその剣で討ち果たすがよい。しかし、いまのままでも半ばの力は出せよう。人の世においては十分な力よ。お前たち自身で選ぶがよい」
そう語ると麒麟は空高く飛び立ってしまった。
「次は北の魔竜か。それでもとりあえず、今回はここまでかな」
「そうね、一度エイリヤに帰りましょう。イングリッドとエルンストの顔も見たいわ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...