幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第243話 初得点

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ゲームが再開された。愛翔はとりあえずは楠野の入っていたポジション、ライトウィングとして動く。
中央左サイドよりでステラスターFCが突破をはかるが、東京バンデットFCの守りが硬く切り込み切れない。そんな展開の中愛翔は、右サイドのオープンスペースにするりと入り込む。そこに左サイドから大きくパスが来た。
愛翔の足を前提としたエリアに出すパス。愛翔はすぐに反応しパスを受けそのままドリブルで駆けあがる。
注目選手とは言え昇格予定でしかない愛翔へのマークは少しばかり緩い。その緩さを突いて愛翔があっという間にトップスピードに乗る。
ようやくディフェンダーが2人愛翔の前をふさぐが、その目は明らかに格下を見る目だった。フォローもいない、愛翔は口の端を引き揚げ2人の間にドリブルで突っ込んだ。ワンタッチでボールを浮かし、ツータッチさらにボールを落とすことなく前に進める。さらにスリータッチ身体を前傾させディフェンダーの目を自分の上半身に向けさせたうえで、やはりボールが落ちる前にやや強めに前方に蹴りだしディフェンダーの間を通した。自身もボールの後を追いディフェンダーの間を抜け攻めあがる。
「格下だと思ってフォローも無しで突っ込んでくるからだ」
ディフェンダーの間を抜ける時にわずかに崩れた体制をすぐに立て直し愛翔が更に敵陣に切り込む。
新人1人を止めるどころか時間稼ぎさえできなかったのを見て東京バンデットのディフェンダー陣が慌ててフォローに入ってくる。途端に愛翔はセンターにハイボールを上げた。
生意気で自信過剰な新人が自慢の個人技で切り込んでくると思った東京バンデットのディフェンダー陣の陣形が更に崩れる。愛翔の上げたハイボールに対応できずボールを見送るディフェンダーの先、中央左よりをフリーで駆け込むステラスターFCのセンターフォワード戸塚夏樹(とつか なつき)。
戸塚がフリーでボールを受け取る様相に慌てた東京バンデットのディフェンダー陣はあわてて戸塚を抑えるためにメンバーが移動することで更に陣形を歪ませる。戸塚は愛翔からのハイボールに頭を合わせ更に左サイドにボールを流した。そしてレフトウィングに入っている笹嶋がそこに走りこみシュートを打つ。
右へ左へと振られた形のゴールキーパーは間に合わずボールはゴールネットを揺らした。
「Yes、Yes、Yes!!」
笹嶋が拳を固めガッツポーズを決める。
「ナイスシュート!笹嶋」
「ナイスアシスト。戸塚」
「住吉もナイスプレーだ」
ハイタッチを交わし、自陣へ戻るステラスターFCのメンバー達。
それに反して東京バンデットFCの愛翔に対する評価は、
「ち、昇格テストだっていうから油断したな」
「ああ、十分に一線級のJリーガーじゃねえか」
「それでもな」
「綺麗すぎるな」
「泥臭い地道なプレーが出来るか試してやろうじゃないか」
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