幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

文字の大きさ
246 / 314

第246話 ケジメ

しおりを挟む
月曜日。いつも通りの朝。愛翔がランニングを終えシャワーを浴びたところで桜につかまった。
「ねえ愛翔。昨日のはプロポーズよね」
桜がじとりとした目つきで愛翔を睨む。桜の愛翔を見るこんな視線は珍しい。
「え、そのつもりだったけど。何かまずいことやっちゃったか?」
「違うわよ。むしろなんでしないのって話よ」
「あー、それってエッチな関係の話か?」
愛翔の返しに桜はぼっと火が出るように顔を赤く染めた。
「そ、そうよ。愛翔がプロポーズしてくれて、あたしと楓は受け入れたじゃないの。そのまま愛翔の家に泊まれば、あれは、もう普通そのまま最後まで行くながれでしょう。なのになんでしないのよ」
桜の後ろでは楓がコクコクと頷いている。
「あたしは、ううん、楓だってきっとそのつもりだったのに。プロポーズしてくれたのに、あたし達ってそういう対象としては実はそんなに魅力ない?」
ここに至って桜は不安げな顔を見せた。”しまったな”愛翔は自身の言葉足らずを自覚し
「そう言うのじゃないんだ。桜も楓も凄く魅力的な女の子だよ。今までだって我慢するのに必死だった」
桜がむぅという顔で不満を表明しつつ口を開いた。
「前にも言ったわよね。我慢しないでって」
そこに至って楓がふんわりと言葉を重ねてきた。
「魅力がって事じゃないなら、愛翔としての別の理由でもあるのかしら。今更変な遠慮は無しよ」
楓はそこまで言って、ふと気づいたように気づかわし気な雰囲気になる。
「あ、ひょっとして、その、もしかしてごめんなさい」
愛翔の”将来普通には子供が出来ない可能性があるって言われたんだよ”楓もこの言葉は桜から聞いていた。だからこそ、愛翔にとってデリケートなデリケートすぎる部分に無遠慮に踏み込みすぎたかと控えようとしたところに愛翔が口を開いた。
「そっちの話は、このあいだ検査をして、結果、僅かだけど回復傾向にあるそうだ。だからそこまで気にしなくていい」
それは楓としても桜としても喜ばしいことで
「え、そうなのね。よかった」
と桜と楓が手を握り合い喜びを共有している。そしてさらに楓が気付く
「なら、なおさらどうして?」
「いや、なおさらってのはわけわからんけど」
そこで愛翔は一瞬目を泳がせ口にした言葉は
「ケジメだよ」
桜も楓も”今更なに?”と思いつつ。
「けじめって、ちゃんとプロポーズしてくれたじゃないの」
桜がケジメはついていると主張したのに対して、愛翔のこたえは
「2人に対してだけじゃないだろケジメってのは。理沙さん直樹さん麗奈さん慎一郎さんへもちゃんと言わないと」
「うーん、それいるかなあ。多分うちの両親はもうしてるって思ってるわよ」
桜がぶっちゃける。
「あ、うちも多分。ていうかそのあの日に持っていったアレ、お母さんに持たされたやつだから」
楓が”もう手遅れ”と答えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...