農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

文字の大きさ
24 / 119

24,ベロニカ論。

しおりを挟む
 ベロニカさんの説得によって、私も冒険者ギルドのパーティの皆さんと行動を共にすることになった。

 これは嬉しいことなのでしょうか問題。
 正直、ソロプレイを望む身としては、別に嬉しくはない。逆に迷惑。しかしながら、これもカブ畑が霜で凍ってダメになってしまったと知った冬の朝と同じ。
 こういうことも、あるのです。

「ベロニカさん。バルク盗賊団にはお知り合いでも? 先ほどの『あいつ』という言い方に、何やら含みがありましたが」

「そ。ちょっとした知り合いがねぇ~」

 と、話しながら、ベロニカさんが抱き着き歩きをしている。すなわち、私に抱きつきながら歩くという、器用な芸当を。
 私としては、ベロニカさんのいい匂いに包まれつつも、さすがに邪魔だな、とも思ってしまうのだった。
 ちなみにベロニカさんの隣では、大鎌デスサイズが自立歩行していた。

「ベロニカさんも、武器強化型なんですか?」

 必ずしも武器が自立歩行しているからといって、武器強化タイプとは限らない。つまり自身がスキルツリー覚醒し、そのスキルのひとつに『自分の武器を自由に操る』というものがあるのかもしれないし。
 ただベロニカさんは、肯定した。

「そう、アリアちゃんと同じかなぁ~」

 それから私の耳元で甘く囁く。別に甘さとは関係のない内容を。

「うちのリーダーは、ジョンソン君というんだけどね。見たとおりの堅物。だけど実力はそこそこあるよ。けどね、彼は残念ながら、〈開華のタネ〉でスキルツリーに目覚めたくちでね」

 どうやら耳元で囁いているのは、この話をジョンソンさんに聞かせたくないかららしい。ということで、私も小声で尋ねた。

「はぁ。ですけど、それって残念なことなんですか?」

「ふふん。気づいてた? 〈開華のタネ〉でスキルツリーに覚醒した者は、強化武器、つまり『魔素を取り込みそれ自体がスキルツリーを覚醒させた』武器を、装備することはできない。反発が起きるんだね」

「だけど、当人がスキルツリーを覚醒させたほうが、なんというか、凄いのでは?」

「素人の感覚だと、そうかもねぇ。だけど実際は違うんだなぁ。
 スキルツリーには、それぞれの素質や遺伝子などなどが関係してくる。それは当然だよね。そして全般的にいって、人間自体が開拓できるスキルツリーには限度がある。
 たとえば強化武器には、武装Lv.があるよねぇ。上限は999とも言われている。そしてレベルが上がるごとに、スキルポイントを得られる。
 人間自体の場合、Lv.と言う概念はないんだよね。修練を極めたり、戦闘の経験を得て、ちびちびとスキルポイントが貯まるわけ。
 けどね、ある研究によると、仮に人間にLv.の概念をあてはめたとしたら、上限は99だと言われている。分かるかな? 武器強化の上限の111分の11で、人間は成長が終わるわけ。よって解放できるスキルツリーパネルも、111分の11どまり。
 スキルツリーは開拓すればするほど、どんどん凄い代物が出てくるのはアリアちゃんも承知の通り。ね? この世界では、真の猛者たちは、みなが強化武器を装備できる『自力ではスキルツリーを覚醒できなかった者たち』なんだよ。面白いよね」

 ベロニカさんのオトナの匂いにくらくらしていたので、話はあんまり入ってこなかった。そんなこんなで、先へと進み。

 先頭を行くパーティリーダーのジョンソンさんが、手の合図でみなを止めた。それから、やはり手振りで指示を出す。
 どうやらバルク盗賊団のアジトである貴族の屋敷に到着したようだ。パーティメンバーには、屋敷を取り囲むため散開させようとしているわけか。つまり、敵の逃げ場をなくそうと。

 うーん。素人ながら、それはどうかと思う。バルク盗賊団に『ヤバい敵』がいるのなら、ここはパーティを離ればなれにさせるべきではない。パーティ強度を下げずに挑むべきだ。
 まぁ、ソロプレイ好きの私としては、あんまり関係のない話だけど。

「じゃあね、アリアちゃん。アリアちゃんは、ここから動かないよーに」

 ベロニカさんが私の耳元でそう囁いて、ジョンソンさんの指示どおりに行ってしまった。えー、結局、私はここで『留守番』かぁ。
 まぁこのパーティのメンバーではないのだから、ヘタに混ざると足手まといになっちゃうかもだし。とりあえず、ここで待機しています。

 ジョンソンさんがちらっと私を見て、私がヘタに動くつもりがないことを確認。ひとつうなずくと、ジョンソンさん自身も、バルク盗賊団のアジトへ向かった。

 あ、蚊に刺された。かゆい。

 しばらくして、バルク盗賊団のアジトから戦闘の音が響き渡ってきた。カブ畑虐殺の罪をつぐなってもらいに来たけど、どうやら冒険者ギルドが、かわりに仕事をしてくれるようだ。

 などと考えていたら、一人の男がアジトの屋敷から駆けて逃げだしてくる。その男は、影の中をジャンプして移動していた。〈影鰐(シャドウアリゲーター)〉と同じようなスキルのようだ。
 ところで、影というのは、伝導率が良いらしい。そこで私は、〈影鰐(シャドウアリゲーター)〉と同じ攻略手段を取った。
 影に向かって、《雷打》を叩き込んだのだ。

 激しい雷撃が影を走り、その男を弾き飛ばした。私はそこへ駆けていく。その男はまだ意識があるようで、立ちあがり、私へと殺意を向けてくる。

「貴様。このオレ様が誰か分かっているのか? バルク盗賊団が団長、バルク様だぞ!」

「………………カブ畑」

「あぁ? なんだと??」

「カブ畑の恨みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「な、なんだ、コイツはぁぁぁぁぁ!!?!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...