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114,再びの〈死の楽園〉。
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「……こほん。これこれ、そこの人間、ジェシカとは誰か? こっちは女神アリエルでござい」
私は〈女神石〉を手に取った。サンディさんのお付きの者が、ショックすぎたのか気絶した。とにかく、この石は【覇王魔窟】の攻略記録ポイントと似ているようだ。
「ジェシカさん。エルフ族が何をしたいのか、なんとなく分かってきましたよ。【覇王魔窟】を乗っ取り、神の座につこうというのですね。その計画の段階として【覇王魔窟】管理権を奪い、魔物たちを人間世界に解放しているわけですね」
「あのさぁ、アリア。キミにしては、読みが浅い。うちらが【覇王魔窟】の管理権を手にできるわけがないでしょ。キミの後見人という立場になってやっと、【覇王魔窟】に入れるようになったくらいなんだからさぁ」
もちろん、それは分かっている。とにかく、だいたい情勢というものが読めてきたぞ。
だが私はまず、〈未来予知〉スキルパネルを解放することから始めよう。そのためには地下迷宮〈死の楽園〉へ戻り、強化素材による武装Lv.上げモードに入るのだ。
しかし、その前にもう一つだけ確かめてみよう。
「アリエルさんという奴がですね──」
「こら、アリエル様に対して、なんという言い草だっ! あ」
恐ろしくチョロい。逆に騙しかと思うくらいに。だがここは、ジェシカさんの素朴さを信じるとしよう。
ジェシカさん、ひいてはエルフ族は女神アリエルに仕えているのだ、と。
ならば女神アリエルを解放するめ、【覇王魔窟】に執着していた理由も、エルフ族が長らく立入禁止だった理由も納得だ。とはいえ、ジェシカさんが女神アリエルの代役遂行しているのはなぜかは、いまのところ不明だけども。
とにかく〈女神石〉は機能停止したようで、灰色になってしまった。と思ったら、手から滑って、床に落ちたら割れちゃった。
「………………まぁ、いっか」
「よくないよ、アリアちゃん! どうするの、これ! 私は大神官として、〈女神石〉なくしてどうやって、信者を率いていけばいいの!」
サンディさんの《擬態Lv.1》を解除する。これでサンディさんは、誰がどう見てもサンディさん。
「もうバードンに成りすます必要はないので、私たちもクラウディアさんにならって、とんずらしましょう」
「いいね、とんずら。けどまって、いったんバードン邸に戻るよっっ!」
バードン邸に戻り、大量の高級ワイン強奪に走るサンディさん。これが酒におぼれた修道女の末路である。
ふと自分の足元を見たら、草色の髪の少女が跪いていた。先ほどの拷問吏の少女さんか。しかし、なぜ私に跪いているのだろう? 先ほどバードン姿のサンディさんと親しく会話していたのを聞かれたので、要人と誤解されているのかな。
「師匠!」
「はい?」
「師匠、どうかこのミィを弟子にしてください!!」
「なんの弟子ですか???」
するとミィちゃんが顔を上げて、きらきらと輝く瞳で見てくる。
「ミィはあなたさまを、拷問の道を究めた方とお見受けしているのです!」
「…………え、そうなんですか?」
「どうか弟子に! 弟子にしてください! ミィは、いまは亡き父から拷問吏の職を受け継ぎながらも、拷問のたびに拷問対象を殺してしまいました! バードン様はそれを愉しんでおられましたが、ミィ自身はあまりにも恥辱の日々でした。ですから是非とも、殺さずに拷問する方法をお教えください!」
「……」
両手一杯にワイン瓶を抱えたサンディさんが、目の前を通り過ぎる。
「変な女の子にモテるね、アリアちゃんっっ!!」
面倒なので拷問吏ミィちゃんを弟子にして、一路、アーテル国へと戻る。
ちなみにサンディさんは、それこそ山ほどのワイン瓶を荷車につんで、えっちら引いていた。
アーテル国内に入ってから6時間ほど進んだところで、サンディさんと別れることに。
「サンディさん。私は、このまま【覇王魔窟】に行きます」
「OK。わたしは、王都に戻るよ。あんまり気が進まないけど、今回の聖都への旅のことを、女王陛下とギルマスに報告しないとだからね。ところでなんで気が進まないかといえば、アリアちゃんと二人旅したと知ったら、ミリカさんとベロニカさんがどんな反応を示すことか。まぁ想像はついているんだけど、それが今からわたしのメンタルを削っているわけ。何が嬉しくて、わたしは女王とギルマスに喧嘩売るようなことをしちゃったんだろうっっ!」
嘆くサンディさんと別れ、【覇王魔窟】へ。1階に入り、さっそく鍵を使って地下迷宮〈死の楽園〉へ降りようとしたときだ。
「せんせぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」
と感極まって呼びかけられた。振り向くと、ロクウさんが駆けてきて、抱きついてくる。
「おおっっ、やはり生きていてくださったのですね、先生!!」
「ロクウさん、よしよし。鼻水はつけないでくださいね」
「先生。拙者、先生がどこまでも【覇王魔窟】攻略を続けているものと思い、ついに752階まで上がりました。しかしながら、もしや先生は地下迷宮〈死の楽園〉でひたすらお力をつけているのではないかと思い、ここまで降りてきたのです」
【覇王魔窟】752階って、私の記録どころか、人類の記録を越えてしまったのだね。
ロクウさんの刀型〈魔統武器〉である〈時雨晩〉は、前回のときは武装Lv.752。それが今は、武装Lv.921まで上がっている。
ふむ。やはり【覇王魔窟】地上階の攻略では、これが限界か。〈攻略不可能体〉の意味が、よく分かってくる。
通常の【覇王魔窟】地上階の攻略だけでは、よくて武装Lv.999が限度なのだろう。それでは、995階から待ち受けている〈攻略不可能体〉には全く歯が立たない。そこからは異次元の強さになるのだから。
ロクウさんが怪訝な顔で、ミィちゃんを見やった。
「ところで先生、こっちの女は何者でしょうか?」
ミィちゃんが、不審人物を見る眼差しで、ロクウさんを見る。
「ミィは、アリア様の一番弟子だ。おまえ、さっきから師匠に失礼だぞ。師匠から離れろ、汗くさい男が」
「一番弟子だとぉぉぉ?? 貴様、拙者に斬り殺される理由を、いままさに自分の口で申したのだぞ!!」
なぜだろう。
もうサンディさんが、凄く恋しい。
私は〈女神石〉を手に取った。サンディさんのお付きの者が、ショックすぎたのか気絶した。とにかく、この石は【覇王魔窟】の攻略記録ポイントと似ているようだ。
「ジェシカさん。エルフ族が何をしたいのか、なんとなく分かってきましたよ。【覇王魔窟】を乗っ取り、神の座につこうというのですね。その計画の段階として【覇王魔窟】管理権を奪い、魔物たちを人間世界に解放しているわけですね」
「あのさぁ、アリア。キミにしては、読みが浅い。うちらが【覇王魔窟】の管理権を手にできるわけがないでしょ。キミの後見人という立場になってやっと、【覇王魔窟】に入れるようになったくらいなんだからさぁ」
もちろん、それは分かっている。とにかく、だいたい情勢というものが読めてきたぞ。
だが私はまず、〈未来予知〉スキルパネルを解放することから始めよう。そのためには地下迷宮〈死の楽園〉へ戻り、強化素材による武装Lv.上げモードに入るのだ。
しかし、その前にもう一つだけ確かめてみよう。
「アリエルさんという奴がですね──」
「こら、アリエル様に対して、なんという言い草だっ! あ」
恐ろしくチョロい。逆に騙しかと思うくらいに。だがここは、ジェシカさんの素朴さを信じるとしよう。
ジェシカさん、ひいてはエルフ族は女神アリエルに仕えているのだ、と。
ならば女神アリエルを解放するめ、【覇王魔窟】に執着していた理由も、エルフ族が長らく立入禁止だった理由も納得だ。とはいえ、ジェシカさんが女神アリエルの代役遂行しているのはなぜかは、いまのところ不明だけども。
とにかく〈女神石〉は機能停止したようで、灰色になってしまった。と思ったら、手から滑って、床に落ちたら割れちゃった。
「………………まぁ、いっか」
「よくないよ、アリアちゃん! どうするの、これ! 私は大神官として、〈女神石〉なくしてどうやって、信者を率いていけばいいの!」
サンディさんの《擬態Lv.1》を解除する。これでサンディさんは、誰がどう見てもサンディさん。
「もうバードンに成りすます必要はないので、私たちもクラウディアさんにならって、とんずらしましょう」
「いいね、とんずら。けどまって、いったんバードン邸に戻るよっっ!」
バードン邸に戻り、大量の高級ワイン強奪に走るサンディさん。これが酒におぼれた修道女の末路である。
ふと自分の足元を見たら、草色の髪の少女が跪いていた。先ほどの拷問吏の少女さんか。しかし、なぜ私に跪いているのだろう? 先ほどバードン姿のサンディさんと親しく会話していたのを聞かれたので、要人と誤解されているのかな。
「師匠!」
「はい?」
「師匠、どうかこのミィを弟子にしてください!!」
「なんの弟子ですか???」
するとミィちゃんが顔を上げて、きらきらと輝く瞳で見てくる。
「ミィはあなたさまを、拷問の道を究めた方とお見受けしているのです!」
「…………え、そうなんですか?」
「どうか弟子に! 弟子にしてください! ミィは、いまは亡き父から拷問吏の職を受け継ぎながらも、拷問のたびに拷問対象を殺してしまいました! バードン様はそれを愉しんでおられましたが、ミィ自身はあまりにも恥辱の日々でした。ですから是非とも、殺さずに拷問する方法をお教えください!」
「……」
両手一杯にワイン瓶を抱えたサンディさんが、目の前を通り過ぎる。
「変な女の子にモテるね、アリアちゃんっっ!!」
面倒なので拷問吏ミィちゃんを弟子にして、一路、アーテル国へと戻る。
ちなみにサンディさんは、それこそ山ほどのワイン瓶を荷車につんで、えっちら引いていた。
アーテル国内に入ってから6時間ほど進んだところで、サンディさんと別れることに。
「サンディさん。私は、このまま【覇王魔窟】に行きます」
「OK。わたしは、王都に戻るよ。あんまり気が進まないけど、今回の聖都への旅のことを、女王陛下とギルマスに報告しないとだからね。ところでなんで気が進まないかといえば、アリアちゃんと二人旅したと知ったら、ミリカさんとベロニカさんがどんな反応を示すことか。まぁ想像はついているんだけど、それが今からわたしのメンタルを削っているわけ。何が嬉しくて、わたしは女王とギルマスに喧嘩売るようなことをしちゃったんだろうっっ!」
嘆くサンディさんと別れ、【覇王魔窟】へ。1階に入り、さっそく鍵を使って地下迷宮〈死の楽園〉へ降りようとしたときだ。
「せんせぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」
と感極まって呼びかけられた。振り向くと、ロクウさんが駆けてきて、抱きついてくる。
「おおっっ、やはり生きていてくださったのですね、先生!!」
「ロクウさん、よしよし。鼻水はつけないでくださいね」
「先生。拙者、先生がどこまでも【覇王魔窟】攻略を続けているものと思い、ついに752階まで上がりました。しかしながら、もしや先生は地下迷宮〈死の楽園〉でひたすらお力をつけているのではないかと思い、ここまで降りてきたのです」
【覇王魔窟】752階って、私の記録どころか、人類の記録を越えてしまったのだね。
ロクウさんの刀型〈魔統武器〉である〈時雨晩〉は、前回のときは武装Lv.752。それが今は、武装Lv.921まで上がっている。
ふむ。やはり【覇王魔窟】地上階の攻略では、これが限界か。〈攻略不可能体〉の意味が、よく分かってくる。
通常の【覇王魔窟】地上階の攻略だけでは、よくて武装Lv.999が限度なのだろう。それでは、995階から待ち受けている〈攻略不可能体〉には全く歯が立たない。そこからは異次元の強さになるのだから。
ロクウさんが怪訝な顔で、ミィちゃんを見やった。
「ところで先生、こっちの女は何者でしょうか?」
ミィちゃんが、不審人物を見る眼差しで、ロクウさんを見る。
「ミィは、アリア様の一番弟子だ。おまえ、さっきから師匠に失礼だぞ。師匠から離れろ、汗くさい男が」
「一番弟子だとぉぉぉ?? 貴様、拙者に斬り殺される理由を、いままさに自分の口で申したのだぞ!!」
なぜだろう。
もうサンディさんが、凄く恋しい。
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