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記憶2
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扉を開き、一斉に部屋に突入すると、学校の体育館程の広さの空間に出た。入る前に予想した通り、ここが魔王の部屋だとすぐにわかった。
こんな部屋で三日月形の寝椅子に横たわり、優雅に本を読んでいる人物など、城の主以外に考えられないからだ。
その人物はオーロラのような捉えどころのない色の服をふわりと揺らし、ゆっくり立ち上がると、読んでいた本をパタリと閉じた。
まるで日常の一幕のような動作に一瞬毒気を抜かれたが、奥歯にグッと力を込め、気を引き締め直した。
「お前が魔王だな!」
『そういうあなたは勇者マサトさんですね』
頭の中に直接響く声に一瞬ギョッとしたが、顔には出なかったと思う。
俺は動揺を隠す為に語気を強めた。
「質問に答えろ」
突き出した剣を握る手にじわりと汗がにじむ。
『確かに最近、私のことを“魔王”と呼ぶ方は増えました。私自身でそう名乗ったことは一度もないのですが』
「そんなことはどうでもいい。“魔王”がお前のことを指すなら、それで十分だ。お前を殺す。その為に来た」
『人の家に無断で侵入し、家人達を殺し、あまつさえ家の主まで手にかけるというのですね? あなた方のどこにそんな権利があるというんです?』
「平和な町や村を蹂躙し、罪もない人々を殺す、その闇の軍勢を率いている奴を悪と言い、それを成敗するのに権利は必要ない」
『私は穢れを浄化し――』
「黙れ! これ以上話す必要はない。行くぞ!」
魔王との会話を打ち切り、戦闘を開始する為に踏み出そうとした時だった。
『降りかかる火の粉は払います』
奴はそう一言告げると、片手の人差し指をスッと立て、だらりと下げていた片腕をこちらに向けた。
その瞬間。
ピィィィン!
という高い音が耳元で聞こえ、顔の横を熱風が通り過ぎたのと同時に、ビリッという感触が全身に走り、俺の体は硬直した。
まずい! 奴の術か!? 手足が動かない!!!
みんな!? 無事か!?
声を出そうとしたが、声にならない。
そのまま後ろに倒れ込み、動かない体で仲間の方に目をやった。
4人の先頭に立ち、紫色に光る1本の細い糸のようなものを剣で受け止め、それを左右に切り分けるゲイルの姿が見える。
あんなレーザーみたいな魔法俺は知らない……。
俺はあれをくらったのか……全く見えなかった……。
すごいなゲイルは、馬鹿じゃなかったらとっくに俺を超えてた。
糸の威力に押し負けそうなゲイルを、後ろでニアが支えているのが見える。切り分けられた糸は激しくうねり、俺達がさっき通った扉やその横に続く石壁を瞬時に切り裂いて、みるみるうちに瓦礫に変えていった。
ニアの後ろで小さくうずくまるミコットの姿が見える。
まずい! ミコットがやられた!
ミコットの片腕が切断され、傷口を押さえる手の間からボタボタと血が噴き出していた。
何やってんだ先生! 早くミコットの治療を!
そう思って先生の方を見ると、先生がこちらを向き、目を見開いて固まっていた。
仲間達に目をやり、状況を確認するにつれて俺の中で膨らんでいった漠然とした不安。
後ろの瓦礫、ミコットの腕、こちらを見る先生の表情、それらの情報が俺に何が起きたかを理解させた。
術で手足が動かないんじゃない……。
切られたんだ……。
俺は右のわき腹から左の肩にかけて胴体を切断されていた。
こんな部屋で三日月形の寝椅子に横たわり、優雅に本を読んでいる人物など、城の主以外に考えられないからだ。
その人物はオーロラのような捉えどころのない色の服をふわりと揺らし、ゆっくり立ち上がると、読んでいた本をパタリと閉じた。
まるで日常の一幕のような動作に一瞬毒気を抜かれたが、奥歯にグッと力を込め、気を引き締め直した。
「お前が魔王だな!」
『そういうあなたは勇者マサトさんですね』
頭の中に直接響く声に一瞬ギョッとしたが、顔には出なかったと思う。
俺は動揺を隠す為に語気を強めた。
「質問に答えろ」
突き出した剣を握る手にじわりと汗がにじむ。
『確かに最近、私のことを“魔王”と呼ぶ方は増えました。私自身でそう名乗ったことは一度もないのですが』
「そんなことはどうでもいい。“魔王”がお前のことを指すなら、それで十分だ。お前を殺す。その為に来た」
『人の家に無断で侵入し、家人達を殺し、あまつさえ家の主まで手にかけるというのですね? あなた方のどこにそんな権利があるというんです?』
「平和な町や村を蹂躙し、罪もない人々を殺す、その闇の軍勢を率いている奴を悪と言い、それを成敗するのに権利は必要ない」
『私は穢れを浄化し――』
「黙れ! これ以上話す必要はない。行くぞ!」
魔王との会話を打ち切り、戦闘を開始する為に踏み出そうとした時だった。
『降りかかる火の粉は払います』
奴はそう一言告げると、片手の人差し指をスッと立て、だらりと下げていた片腕をこちらに向けた。
その瞬間。
ピィィィン!
という高い音が耳元で聞こえ、顔の横を熱風が通り過ぎたのと同時に、ビリッという感触が全身に走り、俺の体は硬直した。
まずい! 奴の術か!? 手足が動かない!!!
みんな!? 無事か!?
声を出そうとしたが、声にならない。
そのまま後ろに倒れ込み、動かない体で仲間の方に目をやった。
4人の先頭に立ち、紫色に光る1本の細い糸のようなものを剣で受け止め、それを左右に切り分けるゲイルの姿が見える。
あんなレーザーみたいな魔法俺は知らない……。
俺はあれをくらったのか……全く見えなかった……。
すごいなゲイルは、馬鹿じゃなかったらとっくに俺を超えてた。
糸の威力に押し負けそうなゲイルを、後ろでニアが支えているのが見える。切り分けられた糸は激しくうねり、俺達がさっき通った扉やその横に続く石壁を瞬時に切り裂いて、みるみるうちに瓦礫に変えていった。
ニアの後ろで小さくうずくまるミコットの姿が見える。
まずい! ミコットがやられた!
ミコットの片腕が切断され、傷口を押さえる手の間からボタボタと血が噴き出していた。
何やってんだ先生! 早くミコットの治療を!
そう思って先生の方を見ると、先生がこちらを向き、目を見開いて固まっていた。
仲間達に目をやり、状況を確認するにつれて俺の中で膨らんでいった漠然とした不安。
後ろの瓦礫、ミコットの腕、こちらを見る先生の表情、それらの情報が俺に何が起きたかを理解させた。
術で手足が動かないんじゃない……。
切られたんだ……。
俺は右のわき腹から左の肩にかけて胴体を切断されていた。
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