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Chapter.1「母さんは俺に厳しかった。17時の門限の後も、好きなことをする時間はなかった。」
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とある小学校の放課後。
「この後さ、公園に行かねーか?」
一人の男子生徒が、周囲にいた男子生徒に向けてそういう。
「いいね。行こうぜ」
「何して遊ぶー?」
他の男子達が次々と賛同の意思を示した。
「…あ、ごめん。俺も行きたいけど、門限があるから…」
一人だけ、断らざるを得ないような態度を示す男子がいた。
「えー?貴之行かねーの?」
「いや、貴之は無理だよ。だって…」
彼の反応に不満を示したものを、隣のものがたしなめる。
「…ちぇ、そうか。じゃあ仕方ないか。それじゃあ、また明日な」
「…うん」
そう言って、その場にいた彼以外の男子は公園に向かって言った。
「…いいなぁ。みんな楽しそうで」
彼の名は蓮沼貴之で、彼には母、多恵子からの言いつけがあった。
それは、門限は17時で、それ以降の外出は禁止というものだった。
故に、放課後の友人からの誘いはいつも断っていた。
友人達は、それは多恵子が夜遅くまで外出することに恐れを抱いていたからだと思っていた。
だが、そうではなかった。
「ただいまー…」
「おかえり。畑のレモンの木がちょうどいい具合になってるから宿題が終わったらレモンの木のところに行ってね」
「はーい」
「返事を伸ばさない!」
貴之には、多恵子からの言いつけがもう一つあった。
それは、17時から畑の収穫の手伝いをすることだった。
というのは、貴之には、巷ではそこそこ名の知れた「蓮沼果樹園」を経営している父がいた。
蓮沼果樹園は、レモンや柚子といった、柑橘系を主流としており、一般の飲食店や食品店にも提供している。
多恵子は貴之に幼少期から父の名に恥じないような施しをしてきた。
門限後の手伝いは、その施しの一環だった。
「晩御飯ができたら呼びに行くからねー」
「…うん」
「声が小さいよ!」
「…っ。」
叱責を受けて、思わず肩をすくめる貴之。
「いい?これだけあなたに厳しくするのは、あなたを思ってのことなの。だから、もっと蓮沼果樹園の跡継ぎの自覚を持って行動して」
施しの目的は、貴之を蓮沼果樹園の跡継ぎにするためだった。
「…父さんの後継ぎになりたいなんて思ったことないのになぁ」
とはいえ、貴之はまだ小学生。
早い門限に、門限後も管理される生活に不満を抱くのは当然だった。
だが、多恵子は貴之にはそれが最良だと信じていた…。
「この後さ、公園に行かねーか?」
一人の男子生徒が、周囲にいた男子生徒に向けてそういう。
「いいね。行こうぜ」
「何して遊ぶー?」
他の男子達が次々と賛同の意思を示した。
「…あ、ごめん。俺も行きたいけど、門限があるから…」
一人だけ、断らざるを得ないような態度を示す男子がいた。
「えー?貴之行かねーの?」
「いや、貴之は無理だよ。だって…」
彼の反応に不満を示したものを、隣のものがたしなめる。
「…ちぇ、そうか。じゃあ仕方ないか。それじゃあ、また明日な」
「…うん」
そう言って、その場にいた彼以外の男子は公園に向かって言った。
「…いいなぁ。みんな楽しそうで」
彼の名は蓮沼貴之で、彼には母、多恵子からの言いつけがあった。
それは、門限は17時で、それ以降の外出は禁止というものだった。
故に、放課後の友人からの誘いはいつも断っていた。
友人達は、それは多恵子が夜遅くまで外出することに恐れを抱いていたからだと思っていた。
だが、そうではなかった。
「ただいまー…」
「おかえり。畑のレモンの木がちょうどいい具合になってるから宿題が終わったらレモンの木のところに行ってね」
「はーい」
「返事を伸ばさない!」
貴之には、多恵子からの言いつけがもう一つあった。
それは、17時から畑の収穫の手伝いをすることだった。
というのは、貴之には、巷ではそこそこ名の知れた「蓮沼果樹園」を経営している父がいた。
蓮沼果樹園は、レモンや柚子といった、柑橘系を主流としており、一般の飲食店や食品店にも提供している。
多恵子は貴之に幼少期から父の名に恥じないような施しをしてきた。
門限後の手伝いは、その施しの一環だった。
「晩御飯ができたら呼びに行くからねー」
「…うん」
「声が小さいよ!」
「…っ。」
叱責を受けて、思わず肩をすくめる貴之。
「いい?これだけあなたに厳しくするのは、あなたを思ってのことなの。だから、もっと蓮沼果樹園の跡継ぎの自覚を持って行動して」
施しの目的は、貴之を蓮沼果樹園の跡継ぎにするためだった。
「…父さんの後継ぎになりたいなんて思ったことないのになぁ」
とはいえ、貴之はまだ小学生。
早い門限に、門限後も管理される生活に不満を抱くのは当然だった。
だが、多恵子は貴之にはそれが最良だと信じていた…。
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