星に命を託す令嬢【完】

午前3時の雨音

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第5話 変わらないもの、変わっていくもの

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あれから、3年の歳月が流れた。

セファール公爵家の令嬢としての日々は、変わらず静かに過ぎている。けれど、私の中では確かに、いくつかの“変化”があった。

占いの力は、今も確かにある。ただ、もう怖さはない。
その代わりに、私の手の甲に浮かぶ数字を、以前よりも意識するようになった。

今、そこにあるのは「472」。

減った分は、私が“視る”ことを選んだ結果だ。

「エリス、明日の夜会には同行してもらうわ。公爵家の令嬢として、そろそろ顔を広げておくべき時期でしょう」

母の言葉に、私は頷く。

表情には出さないが、母はこの3年で私に対する態度を少しずつ変えていた。
あの人にとって、私は“役立つ娘”になりつつあるのだろう。

(それでいい)

私はこの力を使う。望まれる限り、人の未来を視る。
たとえ、それが“何かを代償にしている”という感覚を、心の奥に残すとしても。

けれど、それは“誰のために使うべきか”を選ぶ力でもあると、私は思っている。

「お嬢様、次の予定は午後からです。少しお休みになられますか?」

侍女のセリナが声をかけてくる。彼女は、占いのことは知らない。ただ、私の体調の波には敏感で、最近は“無理をしないでください”とよく言うようになった。

「大丈夫。少し書庫に行ってくるわ」

私は立ち上がると、屋敷の奥にある書庫へと足を運ぶ。静かで、誰にも邪魔されない場所。
今はもう、王子のことを考える時間もほとんどなくなった。あれ以来、一度も会っていない。

(けれど、きっと――)

書架に手を伸ばしながら、ふと思う。

(また、会う気がする)

それがいつかもわからないし、どんな理由かも予測はできない。けれど、心のどこかが、そう囁く。

私の数字は、確実に減っている。
でも、まだ終わりではない。

私はまだ、この力の意味を探している途中なのだから。
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