2 / 11
第2章 沈黙の都と記憶の泉
しおりを挟む
アレンとセラは、霧深いミレアの村を後にし、最初の水の門があるとされる「沈黙の都・ネフィル」へ向かった。古文書によれば、ネフィルはかつて水の民が築いた都市であり、今は誰も住んでいないという。そこには音が存在せず、風も声も消え、ただ水の流れる音だけが響いていると語られていた。
旅は容易ではなかった。道はぬかるみ、霧は視界を奪い、時折聞こえる水音がふたりの不安を煽った。だがアレンの手にある水晶は、進むべき方角を淡く示し続けていた。セラはその光を頼りに、黙々と歩いた。
三日目の夕暮れ、ふたりはついにネフィルの外縁にたどり着いた。そこには巨大な石門があり、門の上には水を模した彫刻が刻まれていた。門をくぐった瞬間、世界が変わった。
風が止み、鳥の声も消えた。セラが何かを言おうとしたが、口を動かしても音が出なかった。アレンも同じだった。まるで、音そのものが封じられているかのようだった。
都市は廃墟だった。崩れた塔、苔むした広場、干からびた水路——だが、中心にある大きな泉だけは、澄んだ水を湛えていた。泉の周囲には、円形に並ぶ石柱があり、それぞれに異なる文字が刻まれていた。
アレンが泉に近づくと、水晶が強く光り始めた。水面が揺れ、泉の奥から淡い光が立ち上った。そして、ふたりの脳裏に直接語りかける声が響いた。
「記憶の守護者よ。ここは第一の門。過去を知るには、痛みを受け入れよ」
アレンは泉に手を伸ばした。水は冷たく、指先に触れた瞬間、彼の意識は深い水底へと引き込まれた。
——水の中で、彼は誰かを守ろうとしていた。崩れ落ちる都市、叫ぶ声、そして水晶を託される場面。彼は水の民の記憶を守る役目を担っていた。だが、何者かによってその記憶は封じられ、彼自身も湖へと沈められたのだった。
目を覚ましたアレンは、泉の前に立っていた。セラが心配そうに見つめていたが、彼は静かに頷いた。
「少しだけ……思い出した。僕は、記憶の守護者だった」
セラは驚きながらも、どこか納得したように微笑んだ。
「じゃあ、これからも記憶を取り戻していくのね。次の水の門は、どこにあるの?」
アレンは水晶を見た。それは、北の方角を示していた。そこには「涙を集める塔」があると古文書に記されていた。
ふたりは再び旅立つ準備を始めた。沈黙の都は、何も語らず、ただ静かに彼らを見送っていた。
泉の水面には、ふたりの姿が映っていた。まるで、記憶が彼らを見守っているかのように——
旅は容易ではなかった。道はぬかるみ、霧は視界を奪い、時折聞こえる水音がふたりの不安を煽った。だがアレンの手にある水晶は、進むべき方角を淡く示し続けていた。セラはその光を頼りに、黙々と歩いた。
三日目の夕暮れ、ふたりはついにネフィルの外縁にたどり着いた。そこには巨大な石門があり、門の上には水を模した彫刻が刻まれていた。門をくぐった瞬間、世界が変わった。
風が止み、鳥の声も消えた。セラが何かを言おうとしたが、口を動かしても音が出なかった。アレンも同じだった。まるで、音そのものが封じられているかのようだった。
都市は廃墟だった。崩れた塔、苔むした広場、干からびた水路——だが、中心にある大きな泉だけは、澄んだ水を湛えていた。泉の周囲には、円形に並ぶ石柱があり、それぞれに異なる文字が刻まれていた。
アレンが泉に近づくと、水晶が強く光り始めた。水面が揺れ、泉の奥から淡い光が立ち上った。そして、ふたりの脳裏に直接語りかける声が響いた。
「記憶の守護者よ。ここは第一の門。過去を知るには、痛みを受け入れよ」
アレンは泉に手を伸ばした。水は冷たく、指先に触れた瞬間、彼の意識は深い水底へと引き込まれた。
——水の中で、彼は誰かを守ろうとしていた。崩れ落ちる都市、叫ぶ声、そして水晶を託される場面。彼は水の民の記憶を守る役目を担っていた。だが、何者かによってその記憶は封じられ、彼自身も湖へと沈められたのだった。
目を覚ましたアレンは、泉の前に立っていた。セラが心配そうに見つめていたが、彼は静かに頷いた。
「少しだけ……思い出した。僕は、記憶の守護者だった」
セラは驚きながらも、どこか納得したように微笑んだ。
「じゃあ、これからも記憶を取り戻していくのね。次の水の門は、どこにあるの?」
アレンは水晶を見た。それは、北の方角を示していた。そこには「涙を集める塔」があると古文書に記されていた。
ふたりは再び旅立つ準備を始めた。沈黙の都は、何も語らず、ただ静かに彼らを見送っていた。
泉の水面には、ふたりの姿が映っていた。まるで、記憶が彼らを見守っているかのように——
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる