水底の記憶

ユウ6109

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第2章 沈黙の都と記憶の泉

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アレンとセラは、霧深いミレアの村を後にし、最初の水の門があるとされる「沈黙の都・ネフィル」へ向かった。古文書によれば、ネフィルはかつて水の民が築いた都市であり、今は誰も住んでいないという。そこには音が存在せず、風も声も消え、ただ水の流れる音だけが響いていると語られていた。
旅は容易ではなかった。道はぬかるみ、霧は視界を奪い、時折聞こえる水音がふたりの不安を煽った。だがアレンの手にある水晶は、進むべき方角を淡く示し続けていた。セラはその光を頼りに、黙々と歩いた。
三日目の夕暮れ、ふたりはついにネフィルの外縁にたどり着いた。そこには巨大な石門があり、門の上には水を模した彫刻が刻まれていた。門をくぐった瞬間、世界が変わった。
風が止み、鳥の声も消えた。セラが何かを言おうとしたが、口を動かしても音が出なかった。アレンも同じだった。まるで、音そのものが封じられているかのようだった。
都市は廃墟だった。崩れた塔、苔むした広場、干からびた水路——だが、中心にある大きな泉だけは、澄んだ水を湛えていた。泉の周囲には、円形に並ぶ石柱があり、それぞれに異なる文字が刻まれていた。
アレンが泉に近づくと、水晶が強く光り始めた。水面が揺れ、泉の奥から淡い光が立ち上った。そして、ふたりの脳裏に直接語りかける声が響いた。
「記憶の守護者よ。ここは第一の門。過去を知るには、痛みを受け入れよ」
アレンは泉に手を伸ばした。水は冷たく、指先に触れた瞬間、彼の意識は深い水底へと引き込まれた。
——水の中で、彼は誰かを守ろうとしていた。崩れ落ちる都市、叫ぶ声、そして水晶を託される場面。彼は水の民の記憶を守る役目を担っていた。だが、何者かによってその記憶は封じられ、彼自身も湖へと沈められたのだった。
目を覚ましたアレンは、泉の前に立っていた。セラが心配そうに見つめていたが、彼は静かに頷いた。
「少しだけ……思い出した。僕は、記憶の守護者だった」
セラは驚きながらも、どこか納得したように微笑んだ。
「じゃあ、これからも記憶を取り戻していくのね。次の水の門は、どこにあるの?」
アレンは水晶を見た。それは、北の方角を示していた。そこには「涙を集める塔」があると古文書に記されていた。
ふたりは再び旅立つ準備を始めた。沈黙の都は、何も語らず、ただ静かに彼らを見送っていた。
泉の水面には、ふたりの姿が映っていた。まるで、記憶が彼らを見守っているかのように——
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