水底の記憶

ユウ6109

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第6章 水の民の遺言

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水の記憶殿で記憶を取り戻したアレンは、静かに湖のほとりに立っていた。セラはその隣で、彼の横顔を見つめていた。瞳に宿る光は、かつての彼とは違っていた。迷いは消え、代わりに深い決意が宿っていた。
「これから、どうするの?」とセラが尋ねた。
「世界に伝える。水の民が守ってきた記憶を。過去を知ることで、未来を選べるように」とアレンは答えた。
だがその道は、平坦ではなかった。水の民の記憶には、世界の支配者たちが隠してきた真実が含まれていた。もしそれを明かせば、混乱が生まれる可能性もある。リュカはその危険を知っていた。
「君が選ぶなら、僕は止めない。でも、覚えていて。記憶は力であり、同時に責任でもある」と彼は言った。
アレンは頷いた。水晶は砕け、記憶は彼の中に完全に戻っていた。だが、それをどう扱うかは、彼自身の選択に委ねられていた。
ふたりは、かつて水の民が暮らしていた「アクレアの遺跡」へ向かった。そこには、記憶を刻むための祭壇が残されているという。世界に記憶を伝えるには、そこに記録を刻む必要があった。
遺跡は、静かだった。水路は干上がり、建物は崩れ、かつての栄華の痕跡だけが残っていた。だが、中央の祭壇だけは、今も淡く光っていた。
アレンが祭壇に手を触れると、水が湧き上がり、空間が震えた。記憶が水に溶け、世界へと広がっていく。
——戦争の記録、裏切りの歴史、滅びの予言、そして水の民の祈り。
「私たちは、記憶を守る者。忘却は安らぎではなく、責任の放棄。過去を知り、未来を選ぶ者こそが、真の民である」
その言葉が、祭壇に刻まれた。
セラは静かに涙を流していた。
「こんなにも多くの痛みが、記憶の中にあったんだね」
「でも、それを知ったからこそ、僕たちは選べる。繰り返すか、変えるか」
そのとき、空が揺れ、湖が光った。世界が、記憶を受け入れたのだった。
アレンはリュカのもとへ戻った。彼は静かに言った。
「君は、僕を守った。だから今度は、僕が君を守る。記憶を背負って、未来へ進む」
リュカは微笑んだ。
「ならば、僕も君と共に行こう。水の民はもういない。でも、僕たちがその意志を継げば、記憶は生き続ける」
セラもまた、ふたりの手を握った。
「私も、あなたたちと共に。記憶を知った者として、未来を選ぶ者として」
こうして、三人は新たな旅へと踏み出した。記憶を伝える者として、世界を変える者として。
湖は静かに揺れていた。水の底には、もう何も眠っていなかった。すべては、彼らの中に生きていた。
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