アースバラッド【異世界って何?でも楽しそうだから友達皆で奮闘します!】

皐月雨

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第一章

始まりの日(2)

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「それでは、地区予選第一試合を開始します。選手の皆さんは指定のコートへ集合して下さい。」

 アナウンスが会場に流れ、出場選手が各コートへ向かって行く。そこへ友達や顧問、応援に来ている家族もぞろぞろと散っていった。

「試合開始!」

各コートから続々と開始の号令がかかる。周辺の木々が緑を揺らし、夏の太陽が燦々と降り注ぐ中試合開始が告げられた。

それぞれのコートから応援の声援や、ラケットが球を打つ音が響き渡った。

「それじゃあオレも、Aコートの次の試合だから準備して向かうわ。絶対勝ち上がるからオマエらも勝てよ!」

勇がそう告げると蓮も笑顔で答える。

「うん!僕も楽しんでくるよ!だから勇も楽しんでね?」

「ハァ…。勝つ、楽しむと両極端ですね…。まぁ俺も負けるつもりはありませんが…。早く勇と当たって叩きのめしたいですね!」

三者三様のコメントはそれぞれの性格や考え方を如実に表現していた。





 時は過ぎ昼休憩となり、3人は集まり食事をとっていた。

 3人共1回戦は問題無く勝ち上がり、午後の試合に向けしっかりと栄養を補給している。蓮は手軽に食べれて消化も早いサンドイッチ。翔はバランス良く詰められた母特製のお弁当。勇は大人の拳大より2回り程も大きい唐揚げ入りおにぎりを既に3つ平らげていた。何でも、ご飯と唐揚げを別々に食べるより、常に一緒に食べれるおにぎりが、早く多く、そして一番美味しいとの事で、小学校の運動会からいつも同じメニューだった。段々大きくなっているが…。

「意地汚い食べ方ですね…。栄養も偏っていますし」

翔が呆れながら勇を見てつぶやく。

「ふぁにひぃふぇんふぁっ?ひゃらふぇーふぉ!」
(何見てんだ?やらねーぞ!)

ふぁ行の多い、動きのうるさいつっこまないツッコミのあの芸人のような喋りで、勇が翔を牽制する。

「別にいりません!哀れんで見ていただけです!」

ムスッとした表情と哀れみの目を器用に合わせ受け答えた。

「でも皆無事に1回戦突破出来てよかったね!あぁ、後何回試合出来るかな?楽しみだねっ!」

「おう!」「そうですね」

 そんな会話を食事をしながら繰り広げていると、後ろから声をかけられた。

「みんな1回戦突破できたのね。おめでとう!」

幼馴染3人が一斉に後ろに振り向くと、そこには3人の同級生が並んでいた。

「雨音さん?それに加関さん、美空さんまで!どうしてここに?」

蓮が驚いて女子3人に問いかける。3人の真ん中にいる雨音が楽しそうに答えた。

「この近くでフリーマーケットのイベントがあるから3人で見て廻ってたの。一通り見終わってどうしようか相談してたら、前に蓮くん達が今日ここで試合だって話してたのを思い出して観にきてみたのよ。それと…蓮くん、いいかげん光って名前で呼んでって言ってるでしょ!?」

彼女は雨音光【あまね ひかり】。蓮の近所に住んでおり幼稚園からの付き合いで親同士の付き合いもあり最近は性別の意識も有り遊んだりはしていないが、小学生低学年までは良く一緒にいた。顔立ちは綺麗で目がクリッとしており睫毛も長く可愛らしさも備えている。学校では1.2位を争う人気だが本人には自覚は無い。髪は腰まであるストレートな黒髪だが、今日は暑さの為か後ろでポニーテールにし結び目に蝶の髪飾りを着けていた。

「エェェェッ!呼べないよっ!(恥ずかしくて!)」

「何をいまさら。蓮、光を名前で何故呼べないんだ?昔はひーちゃん、れんくんて呼び合ってたんだろう?」

向かって右側から声を掛けてきたのは、加関楓【かぜき かえで】。身長160程のスラリとした美人で運動神経が良い。目つきは多少キツめだが、かわいい物を見ると表情がダラシなくなるのが欠点だ。口調も強めだが、自分の部屋には数えきれない程のぬいぐるみに囲まれている。そこでは「かわいいでちゅねー!」「ぎゅーってしてねんねしましょうね!」など赤ちゃん言葉が横行しており、その姿は家族含め一部の者にしか知られていない。髪型はワンレンの黒髪で今日は片側のみ耳にかけそこにヘアピンでアクセントを入れていた。

「楓ちゃん。そんなにキツく言ったら蓮くんが可哀想ですよ~。ただ恥ずかしくて~、呼べないだけですよ~!」

語尾を伸ばし、ややゆっくりな口調で図星を付いたのは美空茜【みそら あかね】。軽くウェーブのかかった肩下迄の髪に、優しい表情の可愛らしい顔立ちが特徴だ。ゆっくりとした口調とは裏腹に行動はせっかちでやらなければいけない事は真っ先に済ませる。夏休みの宿題は日記や研究は抜かして3日で済ませる。遠足や修学旅行の準備は持ち物のプリントが配布された日に全て用意していた。ただ、調理実習等で食材を持ち込む際に一度腐らせていた事があり、教室を悪臭が蔓延し一部生徒が保健室に流れ込む事態に陥った事で反省し、食材に関しては前日に用意するようになった。

「何だ?応援に来てくれたのか?普段脳筋だ何だって言われてるが、今日はオレの舞台だ!オレの活躍を見て惚れるなよ?」

「誰が脳筋体力ゴリラの応援になんか来るか!近くにいたから偶々だ!それに光が蓮の試合が観たいって言うから来たんだ。お前の応援になんか誰が来るか!それにお前に惚れるヤツなんて野性のゴリラのメスくらいだろ!」

楓が翔バリに辛辣な言葉を放つ。

「誰がゴリラだっ!お前こそ、かわいい物見たらスグに赤ちゃん言葉で話し出すくせに!かわいいでちゅねーって。赤ん坊は家帰ってミルクでも飲んで寝てろ!」

「ッ………!!!」

楓が顔を真っ赤にして俯き、怒りでフルフルと震えながら拳を握り込む。それを一度引き込み一気に勇の顔面に向け全力で踏み込み放つ。

パシン!!

誰もが勇の顔面を拳が捉えたと思ったが、そこには翔の左手が楓の右拳を防いでいた。

「2人共いいかげんにして下さい!ダメですよ、ここはテニスの試合会場です。暴力沙汰にでもなれば出場出来ません。喧嘩をしたいのであれば楓の家の道場ででもやって下さい。解りましたね?」

「悪かった」

「私も、面目ない…。」

翔はふぅと安堵の溜め息を吐き、パンパンと両手を払った。

「みんな仲良くしなきゃダメでしょう?でも収まって良かった!蓮くん、翔くん、それに勇くんも2回戦ガンバってね!」

「うん!」

「おう!」

「当たり前です」

光から応援を受け、3人が応える。

午後の厳しい太陽からの紫外線を受けながら、次の試合に向けて3人が目を輝かせた。

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