アースバラッド【異世界って何?でも楽しそうだから友達皆で奮闘します!】

皐月雨

文字の大きさ
6 / 12
第二章

新しい自分(2)

しおりを挟む
「さぁ皆、終わったぞ!大会もこの状況では中止だろう。一先ず家へ…、いや楓さんの家へ行こう!」

6人全員が驚き振り返る。いつの間にか蓮の父と母が2人で後ろへ立っていた。

「うわぁ!?ビックリした!!父さん、母さんもいつの間に後ろにいたの?」

「それに…、何で蓮君の家ではなくうちへ行くんですか?」

蓮はビクッ!!と驚きバクバク脈を打つ心臓を抑え反応し両親に尋ねるが、続けて楓が聞き返す。

「うちではこの人数では狭いと思ってね。それに君達にも関わる話しになる。君達全員のご両親にも声を掛けている。楓さんの家には道場があるだろう?そこで君達に話を聞いて貰いたいんだ。混乱しているとは思うが付いてきてくれ!」

6人は皆不安そうな顔をしながら、目配せする。蓮が黙って頷くと続けて全員が頷き合った。

「分かったよ、父さん!楓さんの家へ行こう!」

各々のが帰りの支度を整え、蓮の父、母に続き楓の家へと向かった。これから誰も予想も出来ない、また人生が180度変わってしまう話が待っているとも知らず。ただ、6人とも黙々と歩みを進めていった。






一向が楓の家付近まで近づくと、家の前には楓の両親が娘たちの帰宅を出迎えた。

「父上、母上、ただいま帰りました!」

楓が帰宅の挨拶をする。父上、母上呼びは実家が道場を営んでいた事もあり、幼少期に偶々観た武道モノのアニメに影響され呼ぶようになった。道場の娘のテンプレである。

「加関さん、本日は家をお借りし申し訳ございません。全員一緒の説明になるとは思っておらず思慮が足りておりませんでした。」

そこへ、楓の両親は全員へ和かに歓迎の言葉で迎えた。

「楓、お帰り。木城さんもそんな固い挨拶はいい。さぁ中へお上がり下さい。」

「さぁ皆んな疲れたでしょう?皆さんのご両親も中でお待ちよ!さぁ上がってちょうだい!」

蓮たち6人と蓮の両親は、楓の両親に促され本宅とは別の道場へと案内された。案内とは言っても蓮たち6人は時期は違えど、皆この道場の門下生であった。通う頻度もそれぞれ違うが、皆小学生の頃から通い最低限の護身術を学んでいた。

小さい頃からの、学校や習い事での付き合いもあり、この6人が何のわだかまりも無く付き合える要因ともなっている。

その通い慣れた道場へ足を運ぶと、それぞれの両親が出迎えてくれた。

「「光、お帰り」」
「「勇、お帰り」」
「「茜、お帰りなさい」」
「「翔、お帰りなさい」」

皆それぞれ、ただいま!や、ただいま帰りました!とそれぞれの両親へ挨拶を返しているが、ここで翔が空気を割る発言をした。

「ただいま帰りました。お母様、それとお父様も…。でもお母様?何故海外出張しているはずのお父様までここにおられるのですか…?」

「翔…、それもこれからお話するわ」

その場での解答を先延ばしにされたが、頭の良い翔はこれから説明を受ける内容と繋がっている事を瞬時に理解し頷きと共に了承の意を告げた。

「分かりました…。」

翔の父と母も黙って頷いた。そこで蓮の父が集まった一同に対して声を上げた。

「それじゃあ皆座ってくれ、座布団を用意してもらっている。各家族ごとに分かれ、其々の顔が見えるように円になって座ろうか!」

その合図に、楓の父、母から順に座布団を配られ、各親の間に収まるように子供達も座っていく。6組の親子計18人が道場の中で円となり座った。

子供たちは皆、キョロキョロと目を泳がせ、これから何が始まるのかとソワソワし緊張の色が伺えた。

「それでは始めましょうか?私から説明してもよろしいですか」

蓮の父から集まった親たちへ確認の声がかかる。

「構いません。当主である鬼城様から説明された方が良いでしょう!」

「分かりました。では私から説明していきます。6人共、直ぐに理解して欲しいとは言わない。ただ君達ににとって非常に重要であり、そしてこの先の人生に大きく関わる事だ。また今までの価値観も大きく変化するだろう。質問があれば言ってくれ。ただ長い説明となるから要所要所で君達に確認を取るからその時に質問して欲しい。」

6人が揃って大きく頷く。

「では、始めますね……。」

ここで蓮の父は一呼吸置き、説明に入った。


「まず始めに、君達6人はこの現代社会と呼ばれている世界の人間ではありません…!勿論、私達もね。」


そこから紡がれる説明は6人の子供たちにとって、衝撃という二文字ではいい現す事が出来ない内容であった。

それから3時間に登る説明が蓮の父親を中心に行われた。途中で専門的な分野になれば話す人がかわり12人の親達全員から皆に丁寧に説明された。





説明が一通り終わり、夕食の時間を挟み、現在は子供たち全員で一度聞いた内容を整理し、理解出来ていない点や質問を纏めて欲しいと告げられ、子供たちのみで道場に集まっていた。

「蓮くん…。さっきの話、信じられる?私…、何が何だか分からないわ…。」

いつも、前向きな明るい光でさえも信じられないと不安げな表情をしていた。蓮は光の目をみて答える。

「うん…。僕も正直言ってまだ全て信じられている訳じゃないよ…。でも…、信じるしかないよね?父さんや母さん、皆んなの両親まで嘘をいうはずがないし、本当の事じゃなければ今日の大会で起きた事の説明は出来ないと思う…。」

5人が驚きの眼で蓮を見る…。蓮はその驚きの表情を読み取り言葉を続けた。

「父さんと母さんが僕の本当の両親ではなくても、僕にとっては今までと何も変わらない…。本当の両親の記憶は無いし、今まで15年間一緒に暮らしてきたんだ…。それに叔父さんと叔母さんにあたるんだから、血も多少なり繋がっているしね…。だからこれからも父さんと母さんって呼ぶつもりだよ!」

そう、先程の説明の中で蓮の両親は蓮が産まれて間もなく他界していた事実を知った。その事実と共に、蓮の現在の両親は自分達が蓮の叔父、叔母にあたる説明もしていた。皆が驚愕していたのは、その説明があった上で何事もなかったかのように、父さん、母さんと呼んだ事によってだった。

「蓮の気持ちはしっかりと分かりました。蓮が正直、混乱して壊れてしまうかとも考えてましたが、安心しました。では、皆も混乱しているかとも思いますので一度整理していきましょう!」

「「「「「うん!」」」」」

蓮の状況に安堵した5人は、1番辛い蓮でさえ心の整理をつけているのであれば自分達も真剣に向き合う事を心に決め返事をした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...