アースバラッド【異世界って何?でも楽しそうだから友達皆で奮闘します!】

皐月雨

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第二章

新しい自分(3)

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「では、纏めていきましょう。」

翔を中心にノートに書いていく事にした。後で読み返す事も出来るし、修正したり、質問事項を纏めたりする為だ。

先程の説明の内容は以下の通りだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・6家族全員が別次元にある地球、名称は【天球】から来た人間である事。

・別次元の天球は地球と全く同じ大陸を形成している事。

・そこは科学ではなく魔術学(魔法)を中心に発達した世界である事。

・天球では勢力が2分し、15年前の2大勢力が衝突し、それにより蓮の両親が亡くなった事。

・蓮の本当の父はこちらでいう日本国【陽源国】(ようげんこく)を取り纏める当主であった事。

・蓮以外の5人の両親が下臣であり各地域を収める重役であった事。

・当主夫妻が亡くなった事で陽源国の未来、また先の天球の未来を見据え、当主、下臣の子供たちと共に異次元の地球へ身を隠す事にした事。

・6家族それぞれが、万が一の為に名字を偽っていた事。【鬼城→木城】、【火雷→家来】、【水土→水戸】、【天音→雨音】、【風樹→加関】、【闇空→美空】

・陽源国では名字の文字が顕す事柄の属性が強く家系に受け継がれている事。

・天球では15歳で各自の持つ能力が解放され、それより先はそれぞれに合った職業へと付き、更なる研鑽により各々を高めていく事。

・子供たちの能力の解放まで、魔力を封印し地球人と同様の生活をし、天球人に気付かれないようにしていた事。

・大会の襲来者は天球の反勢力の監視者であり、偶々解放し始めた6人の魔力を察知し排除に動いていた事。

・翔の父は海外出張ではなく、天球にて情勢の確認や6家族が天球へ戻る為の周辺準備を行っていた事。

・6人が中学卒業後に天球へ戻り、6人への修行と天球人としての教育予定であった事。

・今日の説明は封印が解け始めた事、また偶々それを発見した天球人により襲撃があった事により、元々は各々説明するつもりであったが、いい機会であると考え急遽執り行った説明である事。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

以上をノートに書き連ね翔が皆に意見を問う。

「これが先程の説明を受け、皆で纏めた内容です。何か追加やこの後の質問事項はありませんか?」

翔は、全員を見回すが皆首を捻ったり、う~ん?と考え込むばかりで意見を言い出す者はいなかった。

翔は現状の打破の為に、もう一度全員に問う。

「では、全部の事柄ではなく一つずつ確認していきましょう…。」

皆が翔へ顔を向ける。

「まずは、別次元の天球から俺たちは来た…と説明され、また天球はこの地球と同様の形状だと伺いました…。これについて何か質問や意見はありますか?」

勇が翔へ泣きそうな顔をし、意見を返す。

「いや…。意見というか…、もう………ムリだ。さっきまでの説明を受けただけでも一杯一杯なのに…、これ以上はもう頭が追いつかねーよ…。」

勇は頭から湯気(?)を出しながらもしっかりと自分の現状を語った。それは理解出来ないながらも、自分なりにちゃんと受け止めようと必死で頑張っていた証拠だ。また、これで限界だと話す事で自分だけ置いていかれないようにする事が、皆へのお願いとともに皆と一緒に理解していきたいという気持ちの現れでもあった。

「翔くん~?私もぉ~正直に言えば頭の中がフワフワしちゃってるの~。みんなそれぞれ持ち帰ってぇ、一度整理しませんか~?」

光や楓もそれに同意し、蓮も頷く。

「テニスの試合以上に疲れちゃったね?分からない事ばかりだし…。お腹も一杯だけど、頭はもっと一杯だよ。翔?、父さん、母さんに話をしてまた今度にして貰おう?」

翔もふぅ、と溜息を一つ吐き、これまで凛としていた表情を和らげそれに答えた。

「そうですね…!俺も今までになく気を張り詰めていた事に今気付きましたよ…。流石に疲れましたね…。では、そのようにしましょう。光もよろしいですね?」

光へ視線を移し、同意を求めた。

「うん!私は蓮くんや皆に合わせるわ!それに…私も頭がパンクしそうよ…。また次に機会を設けて貰えるなら、頭も整理できるし助かるわ?」

光も同意を示し、自分も皆と同様の状況であった事も吐露した。

「分かりました。では蓮、親たちの所へ行きましょう!」

翔が蓮へ促したところで、道場の出入口付近から声がかかった。

「その必要はないよ。私達も聞いていたからね!」

蓮達6人が一斉に出入口へ振り向く。

「父さん達、いたの?」

「ああ。まぁついさっきからだけどね?蓮達の様子を確認に来たんだ。それと、6人共、申し訳ない。少々急かし過ぎたようだ…。中学の卒業まではまだ半年ある…。少しずつ、理解していけば良い」

そこで、蓮の母も話を続ける。

「それとね?私達も話し合っていたんだけど、この夏休みを使って【天球】へ皆で行かないかって。勿論宿題も終わらせなければならないからず~っとって訳には行かないわ?2週間くらいかしら…。卒業後にいきなり【天球】へって不安でしょう?だから体験ツアーみたいな感じで皆で行かないかなってねー?」

蓮の母から思いもよらない提案が入った。6人共驚き、顔を見合わせていたが次第に誰もが決心した表情へと変わっていった。

「いいわね!蓮くん、皆んな、行きましょうよ!」

「そうですね…。百聞は一見にしかずとも言いますし、これからの事を考えると一度経験しておくのもいいかもしれませんね!」

「私もぉ、賛成です~。」

「私も構わないぞ!勇も勿論賛成だよな?」

楓が勇へ振る。多少青褪め震える勇が決心した顔へと表情を変え答えた。

「おっおう!当たり前だろう…?(オバケさえいなきゃ)オレは大丈夫だぞ…?(オバケさえ出なきゃ)賛成だ…!」

最後に蓮が声を発する。それはもうワクワクした顔で…。

「それじゃあ皆んなで【天球】へ行こう!!楽しみだね?」

「決まりだな!それでは皆も準備もあるだろうから、5日後の8月7日、朝9時にまたこの道場で集合しよう。それまでに宿題も出来るだけしておくように!それと服は持って来なくていい。地球と天球では全く文化が違うからな。後は各自親と相談して準備してくれ!分かったな?」

「「「「「「ハイ!」」」」」」

6人が揃って、大きく返事をする。一部青褪めていた者もいるが、どちらかといえば楽しみな部分が上回っているようだ。

その後一同は解散し、各々の家へと帰路に着く。そこで蓮はふとある事に気がついた。

「あれ?そういえばテニスの試合は…?これが最期の夏なんだけど…?」

そこで蓮の父は苦笑いし、天に目を泳がせながら答えた。

「あ~~、それな…。今日あんな事もあったもんだからもう迷惑は掛けられないと思ってな…。…消した。」

「…消したって何、を?」

「その、…記憶を」

「エッ?」

「だから、部活に関わった人間や大会に参加していた人達のお前達の記憶を全て消したんだっ!」

「………エエエエェェェェェェェェェェェェェッ!!?」

6人が新たに決意を固めたその日、静まり返った住宅街に3km程離れた犬が反応し、遠吠えを始めるほどの声が響き渡った…。


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