リーティアの領地経営

優義

文字の大きさ
21 / 40
第2章 荒れ果てた故郷

第17話 配給隊(後編)

しおりを挟む
 部隊出立から20日ほど経った、私は日課の書類仕事を進めていた。

早速、財務部門から報告が上がっていた。アレクサンドラ商会の商会員も仕事を覚え使えるようにはなったという。目玉だったポーションは然るべき所に権利を返したので武器になりそうな商品は今の所無い。
しかし商品になりそうなのには心当たりはあるため冬までに用意出来れば私個人のお財布も潤うだろ_____

「おじょ__リーティア様!正門の見張りから配給隊が帰還したとの報告が!!!」

 ジャックが慌てて入ってきた。やっとか!これほど遅いと何か予想外のアクシデントが起こったと感じる。

「っ!!様子はどう?」

「死者はおりませんが怪我人が多数と報告が」
 
 アレクサンドラ領の森にも魔物はそれなりにいる。が、どれも弱い。だからそこまでの魔物対策は必要なく、そのせいか魔物退治の専門家である冒険者たちもあまり寄らない。寄ってくるとしたら旅の途中でポーションを調達する程度だろう。
 だが魔物はたまにずる賢いヤツがいる、そういう手合いが現れたと気を揉んだがどうも違うようだ。

「盗賊【黒い牙】に襲撃されたようです」

「【黒い牙】?ここらで有名な盗賊か?」

 しまった、調べるの後回しにしてた。てか、誰か進言するなり忠言するなりしてくれや。

「【黒い牙】は..........アレクサンドラ領に潜伏している私掠盗賊です」

 私掠盗賊ね、つまり国家とかと契約して敵国とかから金品奪うって訳か..........王国辺りの刺客か?

「何処と契約を結んでる」

 まぁ、十中八九王国なんだろうけど........

「前領主でございました」

 何やってるんだ、そしておかしいだろ!!なんで私掠盗賊がこっち襲ったよ?!配給隊の帆にはアレクサンドラ家の紋章が掲げられている、それを襲うとか馬鹿なのか???そして帝国で私掠契約は犯罪の筈だろ!!

 ジャックの話によると【黒い牙】は2つ名持ちの高額賞金首からなる50名以上の盗賊団らしい。
棟梁がずる賢く、強いため方々で手を焼かされていたらしい。それを聞いた前領主クソ野郎が勝手に私掠盗賊の契約を結んだという。

 後で前領主クソ野郎の犯罪歴全部目を通そう。不安の目は取り除かなければ。

 ジャックが私の心を(多分)無視して話を続ける。

「その件で冒険者ギルドのマスターたちが会議を開きたいと」

 対策会議か、私もしたかった所だ。

「分かった、ギルドマスターたちを会議室へ案内しろ」

「畏まりました」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「恐らく切羽詰まっての犯行でしょう」

 冒険者ギルドのマスター曰く、【黒い牙】は帝国の手が入ってからは姿を現さなかったようだ。被害報告も無いらしい。
 マジで王国の息が掛かってるかも。

「問題は今後どうするか、ですね」

「【黒い牙】には棟梁の他にも高額の賞金首が大勢いますし、半端な連中送り込んでは返り討ちでしょうな」

 冒険者は盗賊を討伐する仕事も確かにあるが、基本的には護衛仕事中の流れである。賞金首討伐は相手の実力にもよるがBランク以上の冒険者パーティーが行う。

 難しいのだが、各ギルドマスター達はすっごい討伐したがってる気がする。まぁ、相当煮え湯飲まされたんだろうなぁ。私としても連中をほっとく訳にはいかない。

「合同で討伐隊を結成するというのは?」

 各自は難しいだろうし、こんな案しかないのだが。

「領主様、私兵にも限度がありますよ?」

「えぇ、だからそれぞれが出来ることをしましょう。
冒険者ギルドには極秘で連中の本拠地の偵察を、商業ギルドは資材調達を、職人ギルドは武具の製造と修繕を、残りは食料の調達なり資金提供なりを頼みます」

 これは敵が勘づくまでが勝負だ、討伐がバレればバラバラに逃げる可能性がある。そうなったら余計な手間が増える。そんな手間を掛けるなら他に頭を下げて協力を仰ぐ。

「領主様たちは?」

「私が治安維持部隊と騎士団、集めた戦力を引き連れて討伐隊を指揮しましょう」

「領主様!勝手なことを!!」

 家臣たちが騒ぎ始める。まぁ、何あったらマズいけどな。

「いいえ、ここは私も出るのが必定でしょう。それにその高額賞金首の件が少し気になりますし」

 私も元はとはいえ冒険者の端くれ。盗賊団討伐は沢山やってきた。それに最近体が鈍った気がする。

「まぁ、【炎滅騎士】ならいけなくもないか.......大丈夫ですか?相手も炎使いですが」

 へぇ、ソイツも炎属性の魔術使うのかぁ。聞いたら鉄鞭に炎を纏わせたりするらしい。リハビリには良いかもしれない。

「上 等 で す 。あと治安維持部隊長!」

「は、はい!」

「貴方の部隊と騎士団に連絡を、私自ら指導し訓練を行います。地獄でしょうが乗りきるように」

「えっ」

 すまんな、治安維持部隊と騎士団の皆。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...