7 / 21
7 本性
「君はフィリアを慕っていただろう?」
「私は姉様を憎んでいたわ」
ハッ、と馬鹿にしたようにシェリールは笑った。
「あなたの前で姉様が大好きと言ったのは嘘よ。私より美しく誰からも愛されて完璧な婚約者もいる。好きになれるわけないでしょう!?」
薄汚れた髪を振り乱し、歪んだ表情で話すシェリールに僕は苦い顔をする。
「君は随分と性格が違うようだ……」
「当たり前でしょ?あなたを落とすために演じていたんだから!姉様の前でもね。なーんにも知らない姉様の前であなたと会うとき、ゾクゾクしたなぁ…」
シェリールは高揚したようにクスクスと笑いながら僕を見る。
「あなたは私のことを好きって言ってたから信じてたのに…結婚式の前に二人きりで会うのはこれが最後だなんて、なんの冗談かと思ったわ。演技が上手なのは、あなたの方なんじゃない?」
僕は表情をくもらせて目を伏せた。
シェリールと会う時、秘密の恋人に僕は胸を躍らせていた。
誰にもバレてはいけない、内緒の恋人。シェリールは甘え上手で、フィリアに申し訳なさそうにしながらも、僕が好きだと言った。姉様と結婚するのは分かってる、だから今だけは…と、会う度僕に抱きついてきた。その熱のこもったピンクの瞳が可愛くて、僕も好きだよ。と言った。
雰囲気に流されただけの、上っ面の言葉と関係だった。
いつだって僕の心の中にいたのはフィリアだけだったのに……
「すまなかった、僕が愛していたのはずっとフィリアだけなんだ…」
涙ぐみながら唇を噛み締める僕に、シェリールは不愉快そうに苛立ち僕を睨みつける。
「別に殿下のことがなくても私は姉様に毒を盛っていたわよ」
「何故、だ?」
「大嫌いだからよ。あの澄ました美しい顔を歪ませて、血だらけにしてやろうと思っていたの。ふふ、あの死ぬ前の姉様の顔っ!最高だったわ……」
恍惚とした表情で語るシェリールは、狂っていた。僕は顔を歪ませ、自責の念に苛まれた。
「本当に、すまなかった……」
もうシェリールと話すことはないだろう…これで本当に最後だ。
シェリールはふんと鼻を鳴らし、憎しみのこもった目で僕を睨みつけていたが、僕はその視線を逸らし、踵を返す。
この後は父上に呼ばれている。きっとフィリアのことだろう……
薄暗い階段を登っていると、後ろでポツリとシェリールが何か呟いた声がしたが、僕は振り向きもしなかった。
フィリア……フィリア……
後悔しても、懺悔しても、遅い。もうフィリアは返ってこないのだから……。
僕もいっそ、一思いに処刑してくれたらいいのに……
フィリアの元へ行きたいと思い、また涙を流した。
あなたにおすすめの小説
さようなら、もと婚約者さん~失踪したあなたと残された私達。私達のことを思うなら死んでくれる?~
うめまつ
恋愛
結婚して三年。今頃、六年前に失踪したもと婚約者が現れた。
※完結です。
※住む世界の価値観が違った男女の話。
※夢を追うって聞こえはいいけど後始末ちゃんとしてってほしいと思う。スカッとな盛り上がりはなく後読感はが良しと言えないですね。でもネクラな空気感を味わいたい時には向いてる作品。
※お気に入り、栞ありがとうございます(*´∀`*)
伯爵令嬢は、愛する二人を引き裂く女は悪女だと叫ぶ
基本二度寝
恋愛
「フリージア様、あなたの婚約者のロマンセ様と侯爵令嬢ベルガモ様は愛し合っているのです。
わかりませんか?
貴女は二人を引き裂く悪女なのです!」
伯爵家の令嬢カリーナは、報われぬ恋に嘆く二人をどうにか添い遂げさせてやりたい気持ちで、公爵令嬢フリージアに訴えた。
彼らは互いに家のために結ばれた婚約者を持つ。
だが、気持ちは、心だけは、あなただけだと、周囲の目のある場所で互いの境遇を嘆いていた二人だった。
フリージアは、首を傾げてみせた。
「私にどうしろと」
「愛し合っている二人の為に、身を引いてください」
カリーナの言葉に、フリージアは黙り込み、やがて答えた。
「貴女はそれで構わないの?」
「ええ、結婚は愛し合うもの同士がすべきなのです!」
カリーナにも婚約者は居る。
想い合っている相手が。
だからこそ、悲恋に嘆く彼らに同情したのだった。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
これは一周目です。二周目はありません。
基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。
もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。
そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※「なろう」にも重複投稿しています。
過去に戻った筈の王
基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。
婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。
しかし、甘い恋人の時間は終わる。
子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。
彼女だったなら、こうはならなかった。
婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。
後悔の日々だった。
穏便に婚約解消する予定がざまぁすることになりました
よーこ
恋愛
ずっと好きだった婚約者が、他の人に恋していることに気付いたから、悲しくて辛いけれども婚約解消をすることを決意し、その提案を婚約者に伝えた。
そうしたら、婚約解消するつもりはないって言うんです。
わたくしとは政略結婚をして、恋する人は愛人にして囲うとか、悪びれることなく言うんです。
ちょっと酷くありません?
当然、ざまぁすることになりますわね!
断罪された薔薇の話
倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。
ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。
とても切ない物語です。
この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。