亡くなった王太子妃

沙耶

文字の大きさ
6 / 21

6 牢の中






「何で、何で来ないのよアレックス様……」

空気の薄い、汚い牢屋。何で私がこんな所に居なきゃいけないの?

私が盛ったのは毒じゃないのに!

まさか死ぬなんて思わなかった!

「で、殿下!!」

「え?」

アレックス様!!アレックス様だわ!!
私は嬉しくてアレックス様に駆け寄るが、鉄格子に阻まれる。
邪魔だわ、これじゃ抱きしめられないじゃない。
 
「アレックス様、私をここから出して下さい!何かの間違いなんです!」

アレックスは監視役に指示を出し、シェリールと二人きりにしてもらう。監視役は躊躇したが、王太子の命令であるため断れなかった。シェリールはそれを見て、彼がここから出してくれるのだと喜んだ。

しかしアレックスはシェリールの体が震えるような威圧的な声で話し始めた。

「何の間違いだ」

「どうしたのですアレックス様…いつもと雰囲気が……」

「何の間違いだと聞いている」

「私が、姉を殺したことです!私が殺すわけないじゃないですか!」

「君の部屋から毒薬が見つかったらしいが?」

「それは!!」

グサリと痛いところを突かれたようなシェリールの表情に、アレックスは眉根を寄せた。

「……事実なんだな」

怒りをこらえるように震えるアレックスに、シェリールは狼狽し慌てふためく。

「違うわっ違うのっ!私が盛ったのは避妊薬よ!!姉様が妊娠すると私たちが結婚できないかもしれないでしょう?私が盛ったのは死ぬような薬じゃないわ!!」

「避妊薬、を?」

「そうよ!二度と妊娠できない薬よ!なのに毒を盛っただなんて酷いわ!!」

「君の家に、毒薬があったのは?」

「それは…何かに役立つと思って……」

シェリールは目を泳がす。様子を見てフィリアを殺す計画を立てていたのかもしれない。

「……何故、こんなことをしたっ!!」

怒りが爆発した。今まで憤りを抑えていたが、もう我慢できなかった。

シェリールに、フィリアを裏切ってしまった、自分自身に。

「仕方ないでしょう!私たちは愛し合ってるのに姉様が邪魔で結婚できないんだもの!!!でも私は殺してないわ!!毒は盛ってないもの!!」

「君は事の重大さが分かっていないようだな。王太子妃に避妊薬を盛っても、死刑だ」

「な、何でよ!!アレックス様が、助けてくれるでしょう……?」

潤んだ瞳で僕を見上げるピンクの瞳。結婚前なら抱きしめて慰めていたかもしれない。

そんなことを考えてしまう自分に腹が立つ。

「君とは結婚前に終わりにしようと言ったはずだ」

「何で?どうしてよ?私たち、愛し合っているでしょう?」

「俺が愛してるのはフィリアだけだった。君とは結婚するまでの、遊びのつもりだったんだ…君もそれを理解してくれていると思っていた……」

フィリアにバレないよう遊んでいた、僕のくだらない恋人ごっこだった……
姉を慕っていたシェリールは、立場をわきまえていると僕は勝手に思っていたんだ……

「僕の愚かさが招いたことだ。君がこんな行動をするなんて…フィリア、すまない……」

ボロッとまた涙が流れた。フィリアが亡くなってから、涙腺が弱くなってる。泣く資格なんかないのは自分が一番分かっているのに。

シェリールは信じられないというように目を見開き僕を見つめている。

フィリアを殺したのはシェリール。だがシェリールにここまでさせてしまったのは僕のせいだ。

フィリアが死んだのは僕の愚行が招いたことだった。

その事実に死にたくなるほど胸が苦しくて、堪らなかった。

















あなたにおすすめの小説

これは一周目です。二周目はありません。

基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。 もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。 そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

さようなら、もと婚約者さん~失踪したあなたと残された私達。私達のことを思うなら死んでくれる?~

うめまつ
恋愛
結婚して三年。今頃、六年前に失踪したもと婚約者が現れた。 ※完結です。 ※住む世界の価値観が違った男女の話。 ※夢を追うって聞こえはいいけど後始末ちゃんとしてってほしいと思う。スカッとな盛り上がりはなく後読感はが良しと言えないですね。でもネクラな空気感を味わいたい時には向いてる作品。 ※お気に入り、栞ありがとうございます(*´∀`*)

婚約破棄は嘘だった、ですか…?

基本二度寝
恋愛
「君とは婚約破棄をする!」 婚約者ははっきり宣言しました。 「…かしこまりました」 爵位の高い相手から望まれた婚約で、此方には拒否することはできませんでした。 そして、婚約の破棄も拒否はできませんでした。 ※エイプリルフール過ぎてあげるヤツ ※少しだけ続けました

婚約破棄した令嬢の帰還を望む

基本二度寝
恋愛
王太子が発案したとされる事業は、始まる前から暗礁に乗り上げている。 実際の発案者は、王太子の元婚約者。 見た目の美しい令嬢と婚約したいがために、婚約を破棄したが、彼女がいなくなり有能と言われた王太子は、無能に転落した。 彼女のサポートなしではなにもできない男だった。 どうにか彼女を再び取り戻すため、王太子は妙案を思いつく。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※「なろう」にも重複投稿しています。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」