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5 王太子2
しおりを挟む「妃殿下はシェリール嬢の愛する人を奪ってしまったと、悩まれていたようです。愛していたのですか?シェリール嬢を」
ドクンと心臓がまた跳ねる。
騎士団長は確認しているだけだ。そして僕の動揺に疑問を持っているだけ。
しかしフィリアの手紙を見た後では、隠しきれなかった……
黙り込み震えながら俯く僕に、騎士団長は更に続ける。
「二人が愛し合っている姿を、妃殿下は見たのかもしれませんね……」
ヒュッと息を呑む。
いつ、いつだ?いつどこで……騎士団長は苦しそうに顔を歪ませた。
「私はシェリール嬢の愛する人が殿下だとは一言も言っていません。ですがその表情と態度は、オッターソン侯爵令嬢が話していたことに間違いはなさそうですね…」
間違いであってほしかった。と騎士団長は失望したように肩を落とす。
手紙を見ても?と聞かれたが、僕は小さく首を横に振る。
「まさかですが、シェリール嬢と共犯ではありませんよね」
「何を言う!!」
僕は激昂して立ち上がる。
「僕がどれだけフィリアを愛していたか!妃に迎えるのにどれだけ楽しみにしていたか!お前に何が分かる!フィリアを失って僕がどれだけ苦しいか!お前に、何が……」
ボロッと涙がこぼれた。
騎士団長は頭を振り、私には分かりません。と悲壮な目で見上げた。
「妃殿下が亡くなったのは私も辛いです。ですが、不貞をしておいてそう仰られても説得力がありません」
亡くなってから、後悔しても遅いのですよ。
そう言い残し、騎士団長たちは去っていった。
僕はズルズルと絨毯の上に座り込む。
ぽたぽたと溢れ落ちる涙が絨毯に落ちていく。この絨毯はフィリアと一緒に出かけた時に買った……僕の部屋にフィリアの選んだものを置いてほしくて…一緒に、選んで、このソファーも……
ボロッとまた涙がこぼれた。
「死んでも許しません」
フィリア……
最後に会ったフィリアは、どんな顔をしていただろうか。
話していた内容は覚えている。僕の胸の内を満たす言葉だったから。
「愛しています」
そう言ってくれた。でもその声は、僅かに震えていなかっただろうか……
僕も愛してるよ。と返したフィリアの表情は、哀しみに塗れていたんじゃないだろうか。
ボロッと涙が堰を切ったかのように次から次へと溢れてくる。
「うあっ……ああっ……うわあああああっ」
フィリア、フィリア……本当に愛していたんだ。心から愛していたのは君だけだった。
フィリア……
許されるなら、もう一度、君に会いたい。
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