侘助。

ラムネ

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P.3

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「弁当忘れんなよ」
「イシイのミートボール入れた?」
「入れた入れた」
「わーい♡」

 若者はイシイのミートボールが好きだ。残り物のおかずと玉子焼き、あとはレンチンのミートボールがあるかないかで昼休憩の満足度が違うらしい。
 俺も高校や専門の頃はタッパーに詰めたご飯とミートボールさえあれば幸せだったから理解は出来るが、近頃はあの濃い匂いだけで胸が一杯で食べようとは思わない。いやそもそも平日に昼メシは食べんが。

「晩ご飯なにー?」
「たった今朝メシ食って、弁当片手に言う台詞か」
「オムライスかカレーがいいなー」
「…………」

 胃のあたりが『ゲンナリ』と発している気がするが、スーツ姿の若者は大好物なので気を取り直す。少し曲がったネクタイを整えてやると髪や額にキスが降ってくる。

「行ってきます」
「ハイハイ」
「ハイは一回! あと、若い男がお客で来てもニヤニヤしない! わかった!?」
「……ハイ」

 名残惜しそうに唇に落としたキスで半日お別れ。湊は仕事が終わると真っ直ぐに俺の家ここに帰って来る。この一ヶ月、ずっとそうだ。

 解せない。


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