侘助。

ラムネ

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P.38

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 俺の追撃から逃れたアラタは「あ~~腰が怠い」とヨロヨロしながらリビングに行った。カラカラと掃き出し窓を開けた気配がする。
 ダウンのコートを持って追い掛けるとアラタはやっぱりベランダに居て、ガラス窓の向こうで特段躊躇う様子もなく煙草に火を着けた。
 背中からコートを掛けて抱き着くと、アラタは肘で俺をグイグイ押し遣る。

「寒いし臭いから中に入ってろー」
「禁煙するんじゃなかったのかよ」
「ん~~勿体無いからこの箱のは吸い切る。もう買わない」
「あと何本?」
「えーと……六本……」

 なん十分ベランダに居る気だ。
 ぐいっと手を取ってリビングに連行し、座らせたソファの隣で灰皿を手に待機する。

「吸いづらいわ」
「また何か考えてる?」
「ん~~……」
「全部話せ。吐け。腹の中を晒け出せ」

 煙は確かに苦手だけど、アラタが煙草を吸う仕草は好きだ。色っぽいなあって思う。でも健康の為に禁煙には大賛成なのだ。

「俺はいいけど……ミナトは誰に看取って貰うんだろって」
「そんなのアラタが考えなくていいんじゃ」
「いやでもやっぱり」
「俺ら世代はそのへん結構ドライに考えてるよ。おっちゃん世代と違って」

 それこそ血の繋がりがなくたって、ケアハウスでも老人ホームでも似た者同士でワイワイ見送り合えばいいって先輩も話していた。
 今や20代男女の4割が処女童貞って統計もあるくらいだし、恋愛や結婚に何の夢もないってのもフツーだし。俺も老後に向けた貯蓄だけは抜かりなくやって自分の時間を大切にする方がよっぽど有意義だって思う派だし。

 アラタと一緒にいる事は俺にとって最も有意義な時間の過ごし方。ゆえに何の不安も迷いもない。さとり世代ど真ん中を舐めんなよ。

「そ……そーゆーもんか……」
「そーゆーもん。それでも気になるならペットでも飼う? 癒し要員にはなるかも」
「ウチはペット不可物件だ」
「大家んちのことなんて誰も何も思わないよ」


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