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1.不機嫌なわたしとご機嫌な先輩
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放課後、部室に向かって渡り廊下を歩いていると、向かいから二人組の女子生徒が勢いよく迫ってきた。
距離が詰まるにつれて自分に用があるのだと察したが、急に踵を返すわけにもいかない。
正面から緋山さんですよね!?と強めに声をかけられた。
「あの、よく蒼井先輩のインスタでみてます!!」
「え?」
初対面の人間に興奮気味に話しかけられたことで、とっさに身構えてしまった。
「あー……そうですか」
それはどうも、とその場を離れようとすれば、そのまま詰め寄られる。
「えーやば!」
「まじじゃん、まじ存在してるじゃん!」
「この間も紫陽花の前の写真、あがってましたよね!」
こんなことは初めてで、グイグイ距離を詰める苦手なタイプの人達だなと心のシャッターを下ろしにかかるも、閉じかけのシャターに滑り込んでくる。
RPGで『にげる』の選択肢を選んでも、『にげられない!』と表示される状態に酷似している。
「うわー顔ちっちゃ!足長いし!」
「本物まじ無理かっこいい、無理みが強いんだけど」
(まじでどうしよう。こちらこそ無理みが強いっす)
こんな知らない人間に急に喋りかけられるものか?一般人相手になんでこんなに興奮してる?どんな行動が正解?と若干パニック気味な中、ふと一つの考えに至った。
「蒼井先輩のファンの方ですか?」
先輩のインスタをみて、珍しく撮り続けている人間モチーフにたまたま会ったから声をかけたのならなるほどだ。
ふと一瞬不思議な空気が流れ、かしまし女子達はカラリと笑って手を横に振った。
「いやうちらどっちかって言えば緋山さんのファン」
「……は?なんでっ、ていうか私の名前…」
「えー?わりと有名人だよ緋山さん。蒼井先輩のインスタでファンになった人結構いるし」
「エモい感じで、スタイルいいし中性的だから好きな女子多いの知らないです?」
他人の口から聞く自分の話が、全く知らない人間の話に聞こえる。
私は日陰で暮らし世の中を斜めに見がちな陰キャでしかない。
頭が追いつかないが、どうやら二人は私に好意を持ってくれているらしい。
彼女らの、音声として認識する程度の話に意識を飛ばしながら考えを巡らす。
確かに蒼井先輩以外の人間に自分がほぼ興味を持たず、全く目にも耳にも入ってこない自覚はある。
他人に興味関心無し人間の自覚はあるが……自分を好意的に見てくれている女子がいつの間にか存在していたなど、そんなことあるか?
熟考の末に意識を飛ばしかけていたところ、かしまし女子の一人が脈絡ない話を急に振ってきた。
「てか聞きたかったんだけど、やっぱり蒼井先輩と付き合ってるんです?」
「はあ!?」
「だって緋山さんくらいだし、蒼井先輩が人間撮るの」
「だからって何でそんな話に…」
「え?違うんですか!?」
最近この付近で、会話に脈絡無く爆弾を落とす行為が横行している気がする。
先輩のカリスマ性と神秘性を汚してはいけないと全力で否定する。
「付き合ってないですし、まずありません。だいたい私みたいな人間をそういう対象にみるわけないですし、そもそも、蒼井先輩はそういう俗っぽい感じしないっていうか、神聖な雰囲気あるから恋愛とか―」
「何してんの」
目の前の女子たちが驚いた顔をしている。
そしてそれはおそらく、私の話を遮った人物の登場のせいだ。
そのまま振り向けば、やはり蒼井先輩がいた。
「お話中申し訳ないけど緋山借りるよ」
「えっ」
どうしたんですか、と口に出す前に腕を引かれ連れ去られる。
振り向き様に見えた先輩の顔は、珍しく不機嫌なようだった。
放課後、部室に向かって渡り廊下を歩いていると、向かいから二人組の女子生徒が勢いよく迫ってきた。
距離が詰まるにつれて自分に用があるのだと察したが、急に踵を返すわけにもいかない。
正面から緋山さんですよね!?と強めに声をかけられた。
「あの、よく蒼井先輩のインスタでみてます!!」
「え?」
初対面の人間に興奮気味に話しかけられたことで、とっさに身構えてしまった。
「あー……そうですか」
それはどうも、とその場を離れようとすれば、そのまま詰め寄られる。
「えーやば!」
「まじじゃん、まじ存在してるじゃん!」
「この間も紫陽花の前の写真、あがってましたよね!」
こんなことは初めてで、グイグイ距離を詰める苦手なタイプの人達だなと心のシャッターを下ろしにかかるも、閉じかけのシャターに滑り込んでくる。
RPGで『にげる』の選択肢を選んでも、『にげられない!』と表示される状態に酷似している。
「うわー顔ちっちゃ!足長いし!」
「本物まじ無理かっこいい、無理みが強いんだけど」
(まじでどうしよう。こちらこそ無理みが強いっす)
こんな知らない人間に急に喋りかけられるものか?一般人相手になんでこんなに興奮してる?どんな行動が正解?と若干パニック気味な中、ふと一つの考えに至った。
「蒼井先輩のファンの方ですか?」
先輩のインスタをみて、珍しく撮り続けている人間モチーフにたまたま会ったから声をかけたのならなるほどだ。
ふと一瞬不思議な空気が流れ、かしまし女子達はカラリと笑って手を横に振った。
「いやうちらどっちかって言えば緋山さんのファン」
「……は?なんでっ、ていうか私の名前…」
「えー?わりと有名人だよ緋山さん。蒼井先輩のインスタでファンになった人結構いるし」
「エモい感じで、スタイルいいし中性的だから好きな女子多いの知らないです?」
他人の口から聞く自分の話が、全く知らない人間の話に聞こえる。
私は日陰で暮らし世の中を斜めに見がちな陰キャでしかない。
頭が追いつかないが、どうやら二人は私に好意を持ってくれているらしい。
彼女らの、音声として認識する程度の話に意識を飛ばしながら考えを巡らす。
確かに蒼井先輩以外の人間に自分がほぼ興味を持たず、全く目にも耳にも入ってこない自覚はある。
他人に興味関心無し人間の自覚はあるが……自分を好意的に見てくれている女子がいつの間にか存在していたなど、そんなことあるか?
熟考の末に意識を飛ばしかけていたところ、かしまし女子の一人が脈絡ない話を急に振ってきた。
「てか聞きたかったんだけど、やっぱり蒼井先輩と付き合ってるんです?」
「はあ!?」
「だって緋山さんくらいだし、蒼井先輩が人間撮るの」
「だからって何でそんな話に…」
「え?違うんですか!?」
最近この付近で、会話に脈絡無く爆弾を落とす行為が横行している気がする。
先輩のカリスマ性と神秘性を汚してはいけないと全力で否定する。
「付き合ってないですし、まずありません。だいたい私みたいな人間をそういう対象にみるわけないですし、そもそも、蒼井先輩はそういう俗っぽい感じしないっていうか、神聖な雰囲気あるから恋愛とか―」
「何してんの」
目の前の女子たちが驚いた顔をしている。
そしてそれはおそらく、私の話を遮った人物の登場のせいだ。
そのまま振り向けば、やはり蒼井先輩がいた。
「お話中申し訳ないけど緋山借りるよ」
「えっ」
どうしたんですか、と口に出す前に腕を引かれ連れ去られる。
振り向き様に見えた先輩の顔は、珍しく不機嫌なようだった。
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