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1章 異世界転移編
22話 家族というもの
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ナッツが去った後、ショウトは何も伝えることが出来なかった自分の不甲斐なさと、やり場のない気持ちを抱えたまま宿に戻った。
「ただいま……」
部屋ではサイクルが待っていた。サイクルはショウトを見るなり宙に浮くとゆっくりと近付く。
「おかえりショウト。どうだった? ……って、その顔みれば聞くまでもないか」
「うるせーよ……」
ショウトは浮遊するサイクルを横目に通りすぎるとベッドに倒れこんだ。その様子を見たサイクルは慰めるように声を掛けた。
「大丈夫だよ。ナッツだって今は気持ちの整理がつかないだけで、きっと立ち直るよ」
サイクルの言うことも一理ある。でも親が死んで、七歳の子供がそう簡単に心の整理がつくのだろうか。いや、それは難しいかもしれない。なにせ十八歳のショウトでさえ親に暴言を吐いたまま家を出たことを後悔しているのだから。
ショウトは、ベッドに顔を付けたままサイクルに問いかける。
「なぁ、サイクル。お前、親の事覚えているか?」
「親? さぁ……。僕は君と会う前の事は本当に覚えていないから分からないな……。でも……」
サイクルの声が止まる。ショウトはどうしたんだよと言わんばかりに顔を上げると、ベットに座り直した。
「でもなんだよ」
「うん、でもね。僕はいま満足しているよ。過去の記憶がなくたって、種族が違ったって、血の繋がりがなくたって、いまの僕には家族がいるから」
「家族?」
「そうさ。弱虫で、泣き虫で、そんでもって意地っ張りで逃げ腰で、言葉遣いが悪い奴なんだけど……」
サイクルはそう話ながらショウトを見つめる。サイクルの話し方、表情でそれは自分なのだとショウトは気付いた。
「おい、おい。それは酷い言われようだな」
ショウトの言葉にサイクルは首を左右に横に振ると微笑んだ。
「でも、本当は人一倍頑張り屋で、頼まれたら断ることの出来ない。そんな優しい心の持ち主な奴さ。だから僕は、たとえ親を覚えていなくても寂しくない。きっとナッツだって、そんな人に出会えれば……、いや、ナッツにも村長さんや村の人たちがいる。それにショウト、君もその一人だと僕は思うな」
サイクルの言葉を聞いたショウトは、胸が熱くなった。そうだ。みんな一人じゃない。この世界に来てから、オレも色んな人に助けられた。だから、少しでもその恩を返さなくてはいけない。ショウトはそう決心し立ち上がる。
「そうだな! オレ、もう一回ナッツに会ってくるよ!」
「うん! 頑張ってね! 相棒」
サイクルに見送られ、ショウトは勢い良く部屋を飛び出した。
しかし、その行勢いは見事に止められた。部屋を出た瞬間、ショウトの体に何かがぶつかったのだ。同時に廊下に女性の声が響いた。
「――きゃっ」
ショウトは声のする方に視線を移した。そこには、一人の少女が尻餅を付いて座り込んでいた。
「痛たたた……」
「すいません! オレ急いでて……。立てる?」
お尻付近をさすりながら、表情を歪める少女。そんな少女にショウトは手を差し出す。
「はい。こちらこそ申し訳ありません。」
少女がショウトの手を取ろうとしたその時、ショウトの目に想像もしない光景が飛び込んだ。
「――っえ?」
なんとショウトの目に映ったのは、真っ白な女性用の下着だった。
ショウトは差し出したはずの手を急いで引っ込め、そっぽを向き座り込む少女に言った。
「ごめん! オレ、そんなつもりなくって……」
ショウトの仕草に気付いた少女は、自分の露になった下着に気付き慌てて姿勢を正して立ち上がる。
「今……見ました?」
ショウトはゆっくりと振り向き、少女を見て正直に言った。
「……はい、少しだけ……。でも! 見たと言ってもほんの一瞬だから!」
すると少女は頬を赤らめながらも、何もなかったかのように言った。
「……まぁ、良いでしょう。今のは私も悪かったですし。あなたも悪気があった訳じゃないようですしね」
突然の事で、ショウトは気付いていなかったが、話した少女はとても綺麗だった。
金色の長い髪を後ろで三つ編みにして肩から前に垂らし、身に纏う純白のワンピースから覗かせる透き通った肌。澄んだ青い大きな瞳。黄金比ともいえるその整った顔立ちに思わず見とれてしまうほどだ。歳はおそらく十六くらいだろうか。
「ちょっと、聞いているのですか?」
ショウトはあまりの可愛さに返事をするのも忘れてしまうくらい釘付けになっていた。
慌てて返事を返すショウト。
「――えっ、あ、うん! 聞いてる、聞いてる! 聞いてます!」
そんな調子のショウトを見て、少女は溜め息を漏らすと言った。
「はぁ……。それはそうと、良いのですか? かなり急いでいたようにお見受けしたのですが……」
ショウトはその言葉で我に返った。
とてつもなく可愛い少女のラッキースケベを目の当たりにして、本来の目的を見失ってしまっていた。
ショウトは自分の頬っぺたを強く叩くと少女に、「本当にゴメン! また機会があったら会いましょう! それじゃ!」そう言ってその場を後した。
◇
ナッツの家に着く頃には日は傾き村を赤く染めていた。
「村長さん。オレ、ナッツに話したい事があるんだ。中に入れて貰えないかな?」
家のドアが開く。出てきたのは村長だった。村長は疲れているのか、前に見た時よりも老けて見えた。
「おぉ、ショウト君か。さっき孫がすまなかったね。家の中まで声が聴こえておったよ」
「いえ。オレの方こそ、ナッツに何も言えなくて……」
「そんな事はない。君が来るまでナッツわしらにさえ口を開いてくれんかった。でも君には……。こんな言葉を村の恩人に言うのは間違っておるとは思うが、例えそれが適切でない言葉であったとしても、わしらは嬉しかった」
村長の表情から本気でナッツを心配しているのが伝わってくる。そんな村長さんたちの為にも、やはりナッツをこのままにしてはおけないとショウトは思った。さらに村長の言葉は続いた。
「もうこれ以上、君に迷惑をかけるたくないのじゃが……、この老いぼれの頼み聞いてはくれんか?」
「はい」
「孫を、ナッツを救ってくれんかのぉ……」
村長は震える声でそう言うと、曲がった腰をゆっくり上げ深々と頭を下げた。その姿にショウトは力強く答えた。
「はい! 任せてください!」
「ただいま……」
部屋ではサイクルが待っていた。サイクルはショウトを見るなり宙に浮くとゆっくりと近付く。
「おかえりショウト。どうだった? ……って、その顔みれば聞くまでもないか」
「うるせーよ……」
ショウトは浮遊するサイクルを横目に通りすぎるとベッドに倒れこんだ。その様子を見たサイクルは慰めるように声を掛けた。
「大丈夫だよ。ナッツだって今は気持ちの整理がつかないだけで、きっと立ち直るよ」
サイクルの言うことも一理ある。でも親が死んで、七歳の子供がそう簡単に心の整理がつくのだろうか。いや、それは難しいかもしれない。なにせ十八歳のショウトでさえ親に暴言を吐いたまま家を出たことを後悔しているのだから。
ショウトは、ベッドに顔を付けたままサイクルに問いかける。
「なぁ、サイクル。お前、親の事覚えているか?」
「親? さぁ……。僕は君と会う前の事は本当に覚えていないから分からないな……。でも……」
サイクルの声が止まる。ショウトはどうしたんだよと言わんばかりに顔を上げると、ベットに座り直した。
「でもなんだよ」
「うん、でもね。僕はいま満足しているよ。過去の記憶がなくたって、種族が違ったって、血の繋がりがなくたって、いまの僕には家族がいるから」
「家族?」
「そうさ。弱虫で、泣き虫で、そんでもって意地っ張りで逃げ腰で、言葉遣いが悪い奴なんだけど……」
サイクルはそう話ながらショウトを見つめる。サイクルの話し方、表情でそれは自分なのだとショウトは気付いた。
「おい、おい。それは酷い言われようだな」
ショウトの言葉にサイクルは首を左右に横に振ると微笑んだ。
「でも、本当は人一倍頑張り屋で、頼まれたら断ることの出来ない。そんな優しい心の持ち主な奴さ。だから僕は、たとえ親を覚えていなくても寂しくない。きっとナッツだって、そんな人に出会えれば……、いや、ナッツにも村長さんや村の人たちがいる。それにショウト、君もその一人だと僕は思うな」
サイクルの言葉を聞いたショウトは、胸が熱くなった。そうだ。みんな一人じゃない。この世界に来てから、オレも色んな人に助けられた。だから、少しでもその恩を返さなくてはいけない。ショウトはそう決心し立ち上がる。
「そうだな! オレ、もう一回ナッツに会ってくるよ!」
「うん! 頑張ってね! 相棒」
サイクルに見送られ、ショウトは勢い良く部屋を飛び出した。
しかし、その行勢いは見事に止められた。部屋を出た瞬間、ショウトの体に何かがぶつかったのだ。同時に廊下に女性の声が響いた。
「――きゃっ」
ショウトは声のする方に視線を移した。そこには、一人の少女が尻餅を付いて座り込んでいた。
「痛たたた……」
「すいません! オレ急いでて……。立てる?」
お尻付近をさすりながら、表情を歪める少女。そんな少女にショウトは手を差し出す。
「はい。こちらこそ申し訳ありません。」
少女がショウトの手を取ろうとしたその時、ショウトの目に想像もしない光景が飛び込んだ。
「――っえ?」
なんとショウトの目に映ったのは、真っ白な女性用の下着だった。
ショウトは差し出したはずの手を急いで引っ込め、そっぽを向き座り込む少女に言った。
「ごめん! オレ、そんなつもりなくって……」
ショウトの仕草に気付いた少女は、自分の露になった下着に気付き慌てて姿勢を正して立ち上がる。
「今……見ました?」
ショウトはゆっくりと振り向き、少女を見て正直に言った。
「……はい、少しだけ……。でも! 見たと言ってもほんの一瞬だから!」
すると少女は頬を赤らめながらも、何もなかったかのように言った。
「……まぁ、良いでしょう。今のは私も悪かったですし。あなたも悪気があった訳じゃないようですしね」
突然の事で、ショウトは気付いていなかったが、話した少女はとても綺麗だった。
金色の長い髪を後ろで三つ編みにして肩から前に垂らし、身に纏う純白のワンピースから覗かせる透き通った肌。澄んだ青い大きな瞳。黄金比ともいえるその整った顔立ちに思わず見とれてしまうほどだ。歳はおそらく十六くらいだろうか。
「ちょっと、聞いているのですか?」
ショウトはあまりの可愛さに返事をするのも忘れてしまうくらい釘付けになっていた。
慌てて返事を返すショウト。
「――えっ、あ、うん! 聞いてる、聞いてる! 聞いてます!」
そんな調子のショウトを見て、少女は溜め息を漏らすと言った。
「はぁ……。それはそうと、良いのですか? かなり急いでいたようにお見受けしたのですが……」
ショウトはその言葉で我に返った。
とてつもなく可愛い少女のラッキースケベを目の当たりにして、本来の目的を見失ってしまっていた。
ショウトは自分の頬っぺたを強く叩くと少女に、「本当にゴメン! また機会があったら会いましょう! それじゃ!」そう言ってその場を後した。
◇
ナッツの家に着く頃には日は傾き村を赤く染めていた。
「村長さん。オレ、ナッツに話したい事があるんだ。中に入れて貰えないかな?」
家のドアが開く。出てきたのは村長だった。村長は疲れているのか、前に見た時よりも老けて見えた。
「おぉ、ショウト君か。さっき孫がすまなかったね。家の中まで声が聴こえておったよ」
「いえ。オレの方こそ、ナッツに何も言えなくて……」
「そんな事はない。君が来るまでナッツわしらにさえ口を開いてくれんかった。でも君には……。こんな言葉を村の恩人に言うのは間違っておるとは思うが、例えそれが適切でない言葉であったとしても、わしらは嬉しかった」
村長の表情から本気でナッツを心配しているのが伝わってくる。そんな村長さんたちの為にも、やはりナッツをこのままにしてはおけないとショウトは思った。さらに村長の言葉は続いた。
「もうこれ以上、君に迷惑をかけるたくないのじゃが……、この老いぼれの頼み聞いてはくれんか?」
「はい」
「孫を、ナッツを救ってくれんかのぉ……」
村長は震える声でそう言うと、曲がった腰をゆっくり上げ深々と頭を下げた。その姿にショウトは力強く答えた。
「はい! 任せてください!」
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