ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第3章 武術大会編

8 団長と副団長

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 手当室の扉を開けて、アルフレッドたちは中に入った。
 
「あなた!」「お父様!」

 グレース夫人とエレナが、男爵のもとへ駆け寄る。
 アルフレッドが扉を開けたとき、一瞬ジュリエットが男爵に口づけをしているように見えたので、

「ジュリエット様、何をなされて、おられたのですか?」
「男爵を間近で観察していたのだ。少しでも容態が悪化したら、お前たちに知らせようと思ってな」
「左様でしたか。ところで子爵様が去っていく姿を目撃したのですが」

 ジュリエットは剣を手に取ると、軽く振り回しながら、

「うむ。妾に手を出そうとしたので追い払った。もう戻っては来ないだろうから、安心してよいぞ」
「なるほど……それなら私は、テオドール様のもとへ向かいます」
「頼んだぞ。テオは王族への礼儀を知らぬ。礼を欠いて国王の怒りを買わぬよう、しっかりサポートして欲しい」
「承りました。ジュリエット様」

 アルフレッドは一礼して、手当室を後にした。


 テオドールたちが闘技場に戻ると、副団長・ベオウルフが待っていた。
 人払いがされて観客は誰もいない。
 ベオウルフは身の丈2m、体重120kgの大男で、怪力と体術で右に出る者はいない。
 試合内容は、まずベオウルフと体術で、次にレオンハルトと剣術で戦うというもの。
 男爵が心配なテオドールは、試合を早く終わらせて、手当室に戻りたいと考えていた。
 
 国王が観覧席から見守るなか、レオンハルトが試合開始を告げた。
 するとテオドールは、一気にベオウルフの懐に飛び込み、ボディーブローを食らわせた。
 一般的な鋼の鎧ならへこんでいたが、ミスリルで造られた近衛騎士団の鎧は、傷一つ付かない。
 ミスリルは軽量なのに最も硬い金属である。
 すかさずベオウルフが拳を放って反撃するが、テオドールは後ろに飛びのいて回避した。
 ベオウルフが突進しながら攻め立てるが、テオドールはすべてを躱しながら、右の拳を叩き込む。
 それをベオウルフが左手で受け止めると、すかさずテオドールは左の拳を放ったが、それも右手で受け止められてしまう。
 テオドールの両手を掴んだベオウルフは、ニヤリとして力比べを仕掛けた。
 体格的に不利なテオドールは、上から押さえつけられて仰け反るも、徐々に巻き返して今度は、ベオウルフが膝をつきそうになる。

「おい、マジかよ」

 そう漏らしてベオウルフは、勢いよく後ろに倒れながら、テオドールを巴投げで投げ飛ばした。
 仰向けのベオウルフは、素早く跳ね起きると、地上に着地したテオドール目掛けて突進する。
 両社の猛攻が続き、それぞれの攻撃力が増していく。
 するとベオウルフの鎧が、テオドールの攻撃を受けて、少しずつへこみだした。
 
「そこまで」
 
 そこでレオンハルトは、試合終了を告げた。
 
 少し休みを挟んで、テオドールとレオンハルトの手合わせが行われた。
 
 レオンハルトは、身の丈が182cmと、テオドールよりやや高い。
 銀髪で切れ長の目をした、世の女性をうっとりさせる端正な容姿をしている。
 彼の剣技は神の域にあり、剣神という二つ名をもたらした。
 
 対峙した二人が木剣を構えて、ベオウルフが試合開始を告げると、テオドールがレオンハルトに斬りかかる。
 テオドールの激しい連撃を、レオンハルトはすべて見切り受け流した。
 僅かな隙をついてレオンハルトが、神速の剣捌きで反撃するが、テオドールは驚異的な身体能力で躱す。
 両者一歩も譲らぬ攻防がひとしきり続いたあと、レオンハルトは自ら終わりを告げた。
 あっけなく終わらせたレオンハルトにベオウルフは、

「なんだよ、もう終わりか?」
「ああ。彼の力量は、わかったからな。私は陛下に報告があるので、先に行かせてもらう。後は任せたぞ。ベオウルフ」

 そう言い残して、レオンハルトは国王観覧室へ向かった。
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