ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第4章 近衛騎士団編

7 近衛騎士団の危機

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 王城につくとジュリエットは、特別な紋章の入った証票を門番に提示した。
 それは、国王が認めた特別な者であることを示す証である。
 そのためジュリエットが、フレアを妹だと説明しただけで、二人は中に入れた。
 
 ジュリエットは、フレアを住居に案内した。

「二人は此処で暮らしているのね」
「うむ。テオは近衛の務めが終われば戻ってくる」

 しばらく室内でお喋りをしていると、フレアは耳がピクリとして、外に飛び出した。
 そして数名の団員と一緒に戻ってきたテオドールにフレアは抱きついた。

「テオ。心配したんだからね」
「フレア?」
「おい、テオドール。その可愛い子は?」

 団員が興味深々に尋ねると、フレアは一歩さがり、
 
「私はテオの双子の妹で、フレアと言います。いつも兄がお世話になっています」

 と、お辞儀した。
 団員の一人がフレアの前に出て、

「俺はジェフリーです。テオドールは、俺が面倒を見るので、任せてください」
「よろしくお願いしますね」

 フレアはジェフリーの手を両手で握り締め、ニコリと微笑んだ。
 ジェフリーは耳まで赤くして、精悍な顔つきがデレデレになる。
 いつの間にか、ジェフリーの後ろに団員の列ができていて、アイドルの握手会のようになっていた。
 
 その夜、近衛騎士団はかつてない危機に直面していた。
 随一の精鋭部隊である近衛の団員は、団結力を徹底的に叩き込まれている。
 その団結力にヒビが入れば、君主を守るという重要な任務を、遂行できなくなってしまう。

「お前たち、軽薄すぎるぞ。近衛の団員として、恥ずかしくないのか」
「お前だって列に並んで、フレアちゃんと握手していたじゃないか」
「それは、ジュリエットの妹だから挨拶したのであって、フレアに乗り換えたわけじゃない」

 団結力に亀裂が生じた原因は、昨日までジュリエットを推していた団員の多くが、フレアに推し変したという、しょうもない理由だった。
 

     ◇◆◇◆◇


 ある日、アルフレッドがテオドールへの書状を持って、王城を訪れた。
 お務め中のテオドールに代わり、ジュリエットが対応した。

「アルフレッド。どうしたのだ?」
「お久しぶりです。ジュリエット様。旦那様の御家族が、どうしてもテオドール様にお会いしたいとのことです」
「何かあったのか?」
「実は、エレナお嬢様が病を患っておりまして、テオドール様に会いたがっているのです。お嬢様は食事が喉を通らず、眠れぬ夜が続いております。ああ、なんて可哀そうなお嬢様――」

 アルフレッドは目頭をハンカチで押さえた。
 ピンときたジュリエットは、
 
「つまり、恋煩いってやつか」
「はい。そうとも申します」

 アルフレッドは、面会の約束を取り付けると、さっさと帰っていった。

 約束の日、テオドールが城門で待っていると、男爵一家の馬車がやってきた。
 馬車から降りたエレナは、テオドールに駆け寄り、嬉しそうに抱きつく。

「エレナ、元気そう。良かった」

 エレナが何の病か知らないテオドールは、安堵の表情を浮かべる。
 テオドールは男爵一家を、ジュリエットたちが待つ住居に案内した。
 建物に入るとテオドールは、フレアを双子の妹だと、男爵一家に紹介した。
 するとエレナは、ジュリエットを外に連れ出して、

「どういうことですか? 双子の妹って」
「フレアは妾と同じ火竜で、テオの幼馴染だ。テオを心配して追いかけてきたのだが、しばらく此処で一緒に暮らすことになった。それには双子の妹にした方が都合がいいのでな」
「追いかけてきたって、二人はどういう関係なんですか?」
「そうだのう。まだ・・恋仲ではないが、お互い特別な存在なのは間違いないだろう。幼いころから二人は仲が良くて、テオがいじめられると、いつもフレアが庇っていたな。フレアは、テオに分け隔てなく接してくれた、とても優しくていい子だ」
まだ・・って……ジュリエット様は、二人が結ばれることを望んでいるの?」
「うむ。そうなればいいと思っておる」

 テオドールの母親が、フレアをとても気に入っていると知り、エレナは泣きそうになる。
 ジュリエットは俯いたエレナの頭を撫でて、
 
「だがテオが幸せになるのなら、相手が誰であろうとも、妾は歓迎するぞ」
「ありがとう。ジュリエット様。大好き」

 エレナはジュリエットに抱きつき、頬にキスをした。

「言っておくが妾は、どちらかに肩入れするつもりはないからな」
「だったら私も此処に住むわ。フレアさんだけが同居なんて不公平だもの」
「それはそうだが……そんなことエレナの両親が許すわけなかろう」
「お父様とお母様の許可が得られたらいいのね」

 二人は建物内に戻ると、エレナは両親を外に連れ出して事情を説明した。
 娘がテオドールと結ばれることを望んでいる両親は、二つ返事で此処に留まることを了承した。

「エレナ。絶対にテオドール君をものにするのだよ」
「わたしたちは応援しているからね。エレナ」
「うん。お父様、お母様。私頑張るわ」

 テオドールが実の息子と知らずに、応援する男爵夫妻。
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