ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

文字の大きさ
34 / 64
第4章 近衛騎士団編

10 裁断

しおりを挟む
 宮殿に着くとテオドールは、国王夫妻がいる部屋の前までセリーヌを運んだ。
 そこで降りたセリーヌは、扉を開けて中に入ると、迷子のごとく母親に駆け寄り、抱きついて号泣した。
 攫われたときセリーヌは、子爵から自身が辿る悲惨な末路を聞かされ、二度と生きて両親に会えないと絶望した。
 その為、安堵や甘えなどの複雑な感情が入り混じって爆発したのだ。

「セリーヌよ。何があったのだ!?」

 エドワード国王が尋ねるも王女は泣きじゃくって声にならないので、レオンハルトが経緯を報告した。

「――王女殿下を危険な目にあわせてしまい、大変申し訳ございません。すべては王女殿下から離れた私の責任です。いかなる処分をも受ける覚悟です」

 するとセリーヌは国王に縋りつき、

「父上。レオンハルト団長のせいではありません。他の護衛を断った私が、いけないのです――」

 レオンハルトを慕う娘が、我がままを通したのだと悟り、国王はため息をついた。

「今は、犯行に関与した者どもをすべて捕らえ、事件の真相を明らかにすることが先決である。レオンハルトの処分は、その後だ」

 レオンハルトを下がらせたあと、国王は娘を戒めるため椅子に座らせた。

「セリーヌよ。お前がちゃんと護衛をつけていれば、攫われることはなかったのだ。これからは、我がままを慎みなさい」

 国王は厳格な態度で、父親としての威厳を示した。

「あんまりですわ。父上への逆恨みで、私は攫われたのですよ。本当に恐ろしくて、堪らなかったんだから。それなのに、とばっちりを受けた私を責めるなんて、酷すぎます。もう父上とは、口も利きたくありません」

 セリーヌは怒りを露に、部屋を出て行こうとする。

「す、済まない。セリーヌの言う通りだ。我が悪かった。許して欲しい――」

 情けない顔で国王が平謝りすると、セリーヌは振り返り、

「では、お願いを聞いてくださったら、許してあげますわ」
「お願いとは、なんだ?」
「もう二度と同じ目にあいたくないので、近衛のテオドールを私専属の護衛にしてください」


     ◇◆◇◆◇


 国王一家が王城に戻ると、テオドールの功績を称える式典が、玉座の間で執り行われた。
 褒美に無関心なテオドールは辞退したが、団長らに説得されて出席した。
 儀式には、近衛の団員に加えジュリエットも参加している。
 テオドールは、国王から報奨金や領土、騎士の称号を与えられた。
 そして王女の専属護衛に任命されると、ジュリエットが手を上げて、

「その任命は断らせてもらうぞ」
「何なんですか、貴女は!? 不敬ですよ」

 セリーヌが柳眉を逆立てて言い放つと国王は、

「構わぬ。彼女はジュリエットといって、テオドールの姉だ。不敬は許しておる。ジュリエットよ、理由を聞かせてもらえるか」
「いづれテオは、オークハート領へ赴任することになっている。それが入団時の条件だからな。それを反故にするなら、近衛を退団させてもらう」

 オークハート領なら、緋竜山から通えるし、魔獣退治など男爵の領地経営に貢献できるからだ。
 今回の件で、テオドールの必要性を痛感した国王は、専属の任命を取り消し、セリーヌも引き下がった。


     ◇◆◇◆◇


 それから間もなく、事件に加担した者はすべて捕らえられた。
 レオンハルトが事件の真相を報告すると国王は、

「よくぞこの短期間で解決してくれた。だが、レオンハルトよ。王女を危険に晒したことは、重大な過ちで厳罰は免れないぞ」
「はい。心得ております」

 レオンハルトは片膝をついて顔を伏せたまま返した。

「しかし我にも非がある。ジェロームを野放しにしたことや、娘を甘やかして我がままに育てたことは、我の責任だ。それに貴殿ほど、我が国に尽くして貢献した者はおらぬ。ゆえに、お咎めはなしとする。貴殿の力が必要だ。これからも、この国と我を支え続けて欲しい」

 国王の慈悲深い裁断に、レオンハルトは心より感謝し、より一層の忠誠を誓った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...