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五話
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「待ってよ。まだ話は終わってない。」
その声をわたしは振り切った。
…
声にならない
走り去っていたわたしの真横で、民家やらが、カタンッ…カタンッとぜんまい仕掛けのように、建っていく。
ミチは息切れしながら、あたりを見回した。
「………ありえない。」
はっきりと言う。
わたしは目がおかしくなったんじゃないかと、疑った。
片手で両目を覆う。
だけどなにも変わりはしない。
どうしてこんなとこに来てしまったのか?
…
「はぁ…ほんと、危ないよ?」
優しそうな声。
気づいた瞬間、ビクッ!と身体が跳ねる。
……驚いた。
さっき出会ったカルロだった。
「な…んで」
放心状態のわたしは、なんとか声を出す。
「本当に危ないよ?世間知らずかな?」
にこやかに言っているが、若干苛ついているのがわかる。
わたしはそれに気付いていないふりして、あたりを見回した。
だが、ふと気になることを言われた。
なにが危ないのか。
…根掘り葉掘り聞きたい気分だった。
「でもねぇ…困るんだよね。きみが逃げちゃ。お互いの国にとっても。」
余裕が戻ってきたのか、ほほえむカルロ。
わたしはまた振り出しに戻った気分だった。
げんなりした顔で見つめる。
ニコッと笑うカルロの顔は変わらず、まるで張り付いているようだった。
綺麗な顔はしゃべり始める。
「逃げてどうしたいの?どうせすぐ見つかるのに。」
カルロは、幼い子どもに教えるように言っている。
「…?あなたに見つかるの?」
真剣に問いかけるミチ。
カルロはキョトンとした。
そして「ふ」と笑う。
「本当になにもわかってないんだね。」
やわらかく言うその顔は、少し気持ちを落ち着かせる効果があった。
さっきまで微塵も動かなかった心臓が、少しだけ動いた。
貼り付けたような笑みよりずっといい。
わたしは、今のカルロとやらとはまだ話が出来るんじゃないかと、淡い期待を抱いてしまっていた。
その声をわたしは振り切った。
…
声にならない
走り去っていたわたしの真横で、民家やらが、カタンッ…カタンッとぜんまい仕掛けのように、建っていく。
ミチは息切れしながら、あたりを見回した。
「………ありえない。」
はっきりと言う。
わたしは目がおかしくなったんじゃないかと、疑った。
片手で両目を覆う。
だけどなにも変わりはしない。
どうしてこんなとこに来てしまったのか?
…
「はぁ…ほんと、危ないよ?」
優しそうな声。
気づいた瞬間、ビクッ!と身体が跳ねる。
……驚いた。
さっき出会ったカルロだった。
「な…んで」
放心状態のわたしは、なんとか声を出す。
「本当に危ないよ?世間知らずかな?」
にこやかに言っているが、若干苛ついているのがわかる。
わたしはそれに気付いていないふりして、あたりを見回した。
だが、ふと気になることを言われた。
なにが危ないのか。
…根掘り葉掘り聞きたい気分だった。
「でもねぇ…困るんだよね。きみが逃げちゃ。お互いの国にとっても。」
余裕が戻ってきたのか、ほほえむカルロ。
わたしはまた振り出しに戻った気分だった。
げんなりした顔で見つめる。
ニコッと笑うカルロの顔は変わらず、まるで張り付いているようだった。
綺麗な顔はしゃべり始める。
「逃げてどうしたいの?どうせすぐ見つかるのに。」
カルロは、幼い子どもに教えるように言っている。
「…?あなたに見つかるの?」
真剣に問いかけるミチ。
カルロはキョトンとした。
そして「ふ」と笑う。
「本当になにもわかってないんだね。」
やわらかく言うその顔は、少し気持ちを落ち着かせる効果があった。
さっきまで微塵も動かなかった心臓が、少しだけ動いた。
貼り付けたような笑みよりずっといい。
わたしは、今のカルロとやらとはまだ話が出来るんじゃないかと、淡い期待を抱いてしまっていた。
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