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「きみの本来の姿にも出会いたいし、それに…」

ニコッとほほえむ明るい金髪の美青年。
ブランシェは、口をいちの字に結び、無表情で見つめ返す。
 
「気になったらすべて知りたいたちなんだ」

微笑を浮かべるコイツに、昔の賢そうな幼いリチャードの顔と重なった。
自分の瞼がストレスで、ピクピクと動く。

『きみが危ないよ』『大丈夫?』

耳鳴りがする。
過去の記憶と交差した。
アイツの優しい声が聞こえる。

ブランシェは眉間を抑え、振り払うかのように首を振る。

バカげてる

強く心に刻み、皮肉ったように自分の口元の口角が上がった。
……

不可思議な反応だった。
ずっとこの子ども、あるいは女の反応が変だ。
気が狂ったようにも見える。

「マルチーノ•ブランシェ?」

私の動きはピタッと止まる。
私は目元を片手で覆うように隠した。
ストレスで、ピクピクと勝手に動く瞼を感じた。

なにが本音だ。
なにを隠してる。
なにに私を利用するつもりだ?

その考えが浮かぶ。
過去のトラウマ。
信じていた友だちに裏切られた。

コイツと話していると変になる。
全てが表面上で、コイツにとって言葉は意思を伝えるためじゃなく、巧みに人を動かすためのものだから。

「………フッ」
「なに……」
「大魔女を、探してどうするの?」

顔を上げる。

わかるか…本音を…

「きみに関係ある?」

笑うリチャード。
私はもうどうしていいかわからなかった。

私を見つけ出すためじゃないよね?
また利用しようとするのか…

不安と動悸。
しかもなぜコイツが直々に捕虜と話すのか。

「さっきから魔法をかけてるんだ。」
「魔法?」

突飛な言葉だった。

「なんの魔法を…」
「その容姿ののろいを解くために。」
「………」

絶句した。
解けてしまったらどうなるか。
拷問され、吐き出させるだろう。
祖母の居場所を。
私はなんにも知らないというのに。

「………それで?」

若干引き攣った顔で言う。
だがフィーピーは気付いてないようで、魔法を掛けている自分の手を見ていた。 

「僕の魔力はこの国随一だ。」

笑顔で言う。
嫌な予感が頭を駆け巡った。

「なのにまったく解けないなんて、お前なんか隠してるだろ」

最後は疑問系ではなかった。
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