悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

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他案 失言の続 偽王子に対しての恐怖心

無言の偽王子。
自分の唇をなぞる……
なにか、考えているようだった。

わたしはやってしまった…ということをすぐに自覚し、心臓が痛くなる。
偽王子は、ゆったりとした口調でこう言った。

「出てっても…?
ここはぼくの城なんだけど」

穏やかないつもの声。
それがますます、わたしの恐怖を扇動する。

「ええ、間違えた…っ」

光の速さで片腕を掴まれ、ベッドに押し倒される。
わたしは上を向いてポカンとした。
目の前に、暗い瞳で魅力的にほほえむ偽王子。
わたしは息を呑んだ。

「確かに…きみの城でもあるけどね」

そう言い、鎖骨のところにある髪の毛を一房取られた。
なでるような偽王子の手と表情。
ゾワッと鳥肌が立つ。

「お、王子…?」
「…言い慣れてるようだったね。
第二王女さまが、大国で男を呼んでいたときのことを思い出したのかな」

偽王子がしゃべれしゃべるほど、喉に物を詰まらされるような感覚におちいる。
このときわたしは、虐待されて食べられる、カモやガチョウの気持ちを思い浮かべていた。

「王子━━━━」
「間違えないで、ぼくはきみの夫だ。
楽師じゃない」

はぁとため息をつく偽王子。
嫌な予感が脳天を衝く。

「…あの約束を、反故ほごにできないかな」

甘い声に聞こえた。
全身の鳥肌が立った。
わたしはブンブンと首を振る。
それは、首が取れそうなほどだった。
ふ、とやわらかく吹き出す偽王子。
それにホッとした。

「まだだめ?じゃあ…また今度ね」

今度?いま、今度って言った??

疑問符がたくさん残る。
頭にハテナマークがたくさん飛び交ってる間、わたしは偽王子に優しく起こされる。
腕を持たれ座らされたあと、よくわからないまま口づけをされた。

「あ…」

目が合った、またされる。
魅力的な表情かおで。
とてもあまく、そのキスも優し過ぎて怖かった。
わたしはあまりに怖くて、偽王子からのキスをまったく拒まない。
偽王子の腕の服を掴む。
その甘い時間が終わるのを、わたしは大人しく待った。
……

去り際、後ろ髪をなでられる。
そのまま頭を掴まれ、顔を床に沈められるかと思った。
そのぐらいの恐怖が、この男にはあった。
だが偽王子のその手は、わたしの後ろ髪を、ただ優しくなでるだけだった。

「出てくね」

心臓がドッドッと跳ねる。
また上から伸びる手。
凍りついているわたし。
ニコ、とほほえみ、頬にかかった髪を耳にかけられた。
……

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