悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

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姉への愛情の続々々 悪女?

白状する。

わたしは顔布を取られる前、あの偽王子だったらと期待した。
あの偽王子だったなら、押し倒され、なんで逃げたのかいかった小一時間こいちじかん問い詰められる。

それはそれは甘美で━━━━━━

「…」

落胆せざるを得なかった。
眩しく目を細め、丸窓からの光に手を当てる。

「眩しい」

わたしはつぶやく。
すぐに目元に影が覆った。
覆ってくれる、がいた。

「眩しいですか」

声に聞き覚えがあった。
そこには、モーヴグレーの瞳のあの青年が立っていた。
………

わたしは急に力が抜ける。
無意識に、座っているベッドのシーツを握った。

「お姉さまに……連れてこられたの?」
「あっ、はい。そうみたいです」

素早い返答が返ってきた。
ニコリとした美しい男娼。
顔馴染みのその人を、わたしは放心状態で見つめている。

「第二王女さまのお姉さまに、側近として行くよう命令されました」
「……なるほど」

静かに頷く。
わたしは頭がクラクラした。

これはいいのか?と頭に文字が浮かび上がる。
男娼と一緒に嫁入りなんて……

「わたしの、」

言いたくなくて言葉にまった。
だが言った。

「結婚相手は?」
「…愛人とお楽しみです」

表情ひとつ変えずに言う男娼。
だが言い方に、少しの配慮が感じられる。

「なるほど、初夜に……」

色々と飲み込めた。

隣国の王女との初夜をすっぽかすなんて、よほどその王子が未熟なのか、その愛人がよほど嫉妬深いとかなのだろう。

前者なら、わたしにとっては都合がいい。

「王女さま?」

ホッとして、ボッ~としていた。
空の光を浴びて。
男娼の方を見る。
立って居心地が悪そうにしていた。
椅子に促す。

「なにか…お話しましょうか。
小国に行って、大変な思いもされたでしょう。
僕ふと、第二王女さまのことを考えてしまったりしていました」
「…そう」

いつもの営業嘘を聞き流す。

大変な思い……

その言葉が、頭の中で引っかかる。

「あなたは?」

ポツリと出る。

好きな人と、もう会えないとしたらどうする?

いたくなった。
聞きたくなった。
この男を、り所にしようとしているわたし………



まっすぐ見つめてくるモーヴグレーの瞳。
一見純粋そうに見えるその瞳は、今主人であるわたしでさえ見えていない。

「他にも聞きたいわ。
お姉さまから、なにか他に伝言はない?」

重要なことが、他にあるかもしれないと思い聞いたんだ。

「健康を祈っていると」

男の顔を見る。
嘘だと、なんとなくわかった。
それに、そんなのわたしは期待していなかった。

頭に沸騰するのを感じる━━━━

相手がわたしに逆らえないと知っているからか、思い切り物を投げつけたくなった。

大国にいた頃と同じように

「……ついてもいい嘘だと思ったのね。
わたしが喜ぶと━━━━」

当たるのを我慢する。
だが言葉につく棘を隠せない。

「そんなこと。
ほんとうにそう思ってますよ」

表面上だけのペラペラな優しさ。
それが今は特に鬱陶しかった。

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