悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

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偽王子との再会 背中が空いた黒のトレーンドレス

この男は,わたしが姉からの愛情を求めていることを知っている。

だから余計に腹が立った。

昔,姉のために奔走ほんそうするわたしを見られている。
その綺麗なモーヴグレーの瞳で。
……

「食事の準備が整いました。
皇太子妃さま」

20代後半くらいのメイド、ズラリと並ぶ。
グレーのシンプルなメイド服で、髪も団子ひとつ下で結んでいた。
わたしは立ち上がり、その者たちについて行く。
床に付いた,黒のドレスのトレーンを引き摺って。

「…………」

なんだろう…この苦しみ。

ぽっかり穴が空いたような空虚感。
それを覚えながら、長い廊下を重い足取りで歩いた。
大きな間に出ると、楕円のテーブルの端に皇太子らしき人。その端に、わたしは座った。

遠い

遠かった。
よく見ないと、見えないほどに。
皇太子の近くには、おそらく愛人が座っている。
とても細く華奢な、猫のような愛人。
わたしは視線を逸らし、テーブルの上に向けた。

コトッと、テーブルの上にフレンチトーストが置かれる。
メイプルシロップ、イチゴやバナナ、ブルーベリーが盛りだくさんだ。
食欲が湧き、フォークを手に取る。
刺して、口に運んだ。

甘い。おいしい……

噛むとじゅわ~とメイプルシロップがしみ出る。
わたしの好みだった。
次々に頬張る。

「お口にあいましたか?」

優しく甘い声。
第二王女は凍りつく。

食べようとする手が,止まった。

「だけど皇太子さまよりも先に食べてはだめですよ」
「そんなこともしらないのか?」

遠くから投げつけてくる言葉。
いつものわたしなら、イラッとするだろう。
だけどわたしは今,それどころじゃなかった。

「すみません。
私の教育不行き届きで」

使用人に扮した偽王子は謝る。

「…ああ」

皇太子は,うめき声のような不満そうな声を,口の端から漏らす。
そのあと遠くから聞こえる,皇太子と愛人の,楽しそうな会話。
それは,今のわたしの頭には入らなかった。

「私が作ったんです。おいしいですか?」

微笑み言う偽王子。
わたしは戦々恐々とし顔を上げた。

なん、で……
………

似合っていた、とても。

使用人の格好は。

ロングヘアを,一つで束ねているウィッグ。
黒と白を基調とした、シンプルな使用人服。

とてもかっこいいと。

そう思った。

だが頭と身体は反比例する。

今思ったことは事実だが、これは一種の現実逃避なのかもしれない。

「どこに行くんですか?」

パッと細い腕を掴まれた。

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