悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

文字の大きさ
28 / 58

27 本性

空気を読んで、ぞろぞろいなくなる青年たち。
王子を見て、不思議そうな表情かおをしている使用人たち。

わたしは内心、怒られるんじゃないかと戦々恐々だった。
わたしが、呼んだんじゃないのに。

「また今度って言ってる人もいるけど。どういうこと?」

甘い声だった。
顔の前に落ちていた髪の毛を、耳にかけられる。
とてつもなく端正な顔立ちに冷たく見つめられ、心臓がバクバクする。
わたしは自分を落ち着かせるために、一拍置いた。
よくないことなのに、頭の中でさっきの青年たちと目の前の王子を比べてしまう。
この男を見てしまうと、さっきの青年たちは、メッキの上品さを持った凡顔ばかりに思えてしまう…

「…少し、誘惑されただけ。
わたしがカモに見えてるんでしょ」

王女は、そっぽを見、居心地が悪そうに腕をさする。
ぼくは納得しなかった。

「へぇ、きみなら知らない人間がベッドに来ただけでヒステリーを起こしそうだ」

ニコッと笑う。
凍りつく第二王女。

し、な、い、わよね…?

自信がなくなってくる。
そもそもなぜわたしは,この男がベッドの上に来ることを許しているのか。

「そういう風になるのは……お姉さまを殺すかもって聞いたから………」

顔も見ず,モゴモゴと言う。
なんとか矛先を変えられないか…と頭を回した。

「そんなことより……お姉さまの件,どうなったの?」

プレゼントからわたしを見た瞳に、攻撃性を感じ怯えるも、気にしてない風を装って話した。

「聞いたよね?どっちがいいか」

静かに答えながら、王子はベッドに置かれた貢物みつぎものを床に落としていく。

ゴトッ…ガトッ…ゴトッ…

静かな空間に響き、わたしはいたたまれなくなる。

「きみが死ぬか,第一王女が死ぬか」

話を、気にせず続ける王子。
わたしは胃が痛くなった。

「他の選択肢はないの…?」
「他の選択肢……」

ないことにはないが、言いたくなかった。
とくにこんなことがあったあとには。

「きみがずっとここに閉じ込められぼくに守られているか、それとも姉に無惨に殺されるか」

王子の表情に、わたしは息が止まりそうになった。
そう言い、ニッコリ笑った王子は、酷く魅力的に見えたからだ。
わたしは、怒った表情かおを崩さず言う。

「身分を隠して生きていくって方法もあるわ。
財産はたくさんある」

余裕そうに笑う第二王女。

あなたにおすすめの小説

無能と罵られた私だけど、どうやら聖女だったらしい。

冬吹せいら
恋愛
魔法学園に通っているケイト・ブロッサムは、最高学年になっても低級魔法しか使うことができず、いじめを受け、退学を決意した。 村に帰ったケイトは、両親の畑仕事を手伝うことになる。 幼いころから魔法学園の寮暮らしだったケイトは、これまで畑仕事をしたことがなく、畑に祈りを込め、豊作を願った経験もなかった。 人生で初めての祈り――。そこで彼女は、聖女として目覚めるのだった。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。

下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。 アルファポリス様で10話以上に肉付けしたものを読みたいとのリクエストいただき大変嬉しかったので調子に乗ってやってみました。 小説家になろう様でも投稿しています。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

それって冤罪ですよね? 名誉棄損で訴えさせていただきます!

恋愛
伯爵令嬢カトリーヌ・ベルテに呼び出された男爵令嬢アンヌ・コルネ。 手紙に書いてあった場所へ行くと、カトリーヌだけではなく、マリー・ダナ、イザベル・クレマンの3人に待ち受けられていた。 言われたことは……。 ※pixiv、小説家になろう、カクヨムにも同じものを投稿しております。

惨殺された聖女は、任命式前に巻き戻る

ツルカ
恋愛
惨殺された聖女が、聖女任命式前に時間が巻き戻り、元婚約者に再会する話。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。