悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

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28 偽装

強気に出る第二王女に、どうしようかなぁと頭を回した。
その気になれば、財産没収。
隠し財産があるなら吐かせる。
そのぐらいのことなんでもできた。

でもなぁ…

目が合う。

「なに」

怯える第二王女。
ぼくから距離を取り、玄関の前まで行った。
手には、王子が壁に立て掛けた剣。
それを掴んでいる。

「使えますか?王女」

呆れたようにベッドから立ち上がり、一歩近づかれる。
見上げたまま、わたしは壁に背中が当たった。
剣を抜き、柄を持った。
抜くとき、シャキン!大きな音がして驚く。
そして、あまりにも重くて持ち上げられない。
地面に付いたままで、引きずるしかなかった。

「近づかないで?……偽王子」

挑発してるのか…

偽王子は、なにか考えているようだった。

冷静に言ってるように聞こえた。が、泣きそうになっている第二王女の
やっぱり姉と、全然違う。
気弱だなぁと感想が浮かんだ。

…じゃない。
ぼくは正真正銘の王子だ」

落ち着き払った声。
わたしは頭がおかしくなりそうだった。
わかりやすく狼狽する第二王女。

「王女…ここで守られているのも悪くないと思いません?
ここにいたら大概のものは手に入るし…
それにきみは、隠れて暮らすなんて苦労、絶対できない」

言い切る偽王子。
わたしはなにも言い返せなかった。
空間が歪み、立ってる地面から壊される感覚がする。

「………王子。取引しない?」
「取引?」

疲れ切っている第二王女。
反対に、偽王子の瞳は、面白がっているようだった。
椅子に座った王子。
目に見えてホッとする第二王女。

「わたしをこのまま逃がしてくれたら………隠し財産を半分渡す」
 
鋭いアーモンドアイひとみがわたしを刺す。
「へぇ」と言い笑った。

「悪い取引ではないんじゃない?」

平然を装って、必死なのが滲み出ている。
ぼくはどうしようかと考えた。

色々考えても、第二王女を逃すのは、デメリットしかない。

偽王子は、テーブルに置いてあったチェスの駒を持って眺める。
板に置いた。
 
トントンッ…と机を指が叩いている王子。
なにか思考を巡らせている……?

「ぼくも…ずっとしたかった取引があるんだ」

甘い声に警戒した。

ペラッ…と無言で渡される。
机の上に一枚の紙。
第二王女は「どういうこと?」と聞く。

「婚姻届書」
「………え、離婚届書じゃないの…?」
「ほんとうは偽装しようと思ってたんだ」

男の言い分に、もっとわけがわからなかった。

「ぼくの取引は、きみのしたい取引とは全然違う。
ぼくはきみの財産にまったく興味がない」

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