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32 告白
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微笑む端正な顔。
一瞬で、頭の血が凍りつく感覚を覚えた。
「どういうこと……?
手を下した誰かがいるってこと?」
瞳孔が開き、興奮している第二王女。
ダークチョコレートの瞳が、いつもより大きく見えた。
偽王子は、第二王女に片手で胸ぐらを掴まれたまま揺らされる。
王子は、微かに笑みをこぼしていた。
「そんなに心配?
きみを殺そうとした人間だけど」
「まだ……そうと決まったわけじゃないでしょ…」
少しうつむいて言っている。
第二王女の発言に、ぼくは言葉を失った。
バカなのか?
そう言いたいが、口をつぐむ。
…そんなに仲がいいのか?
それとも姉に洗脳されてるのか…
確かに次期女王が、妹の第二王女を案じてる可能性もゼロではない。
危険因子の妹だ。
もっと早くに殺していても不思議ではない。
なのに……ぼくに会うまで生きていた。
「確かに次期女王は…きみを想っている可能性もある。
だけどそれは何%だ?
今までのことを考えると…それはとてつもなく低い」
詰め寄られる。
わたしは下唇を噛んだ。
わかってる
こんな男に言われなくても、わかってるつもりだった。
「…わたしを大国へ送り返して」
キッと涙目で睨む。
少しだけ動揺する偽王子の表情…
「姉の動向を知っときたい」
「ぼくから聞けば……」
「ほんとうのことは教えてくれない。
いいや、重要なこと…」
顔を振り言う。
「あなたが言ってもいいと判断した情報しか教えてくれない。
姉は、わたしの家族よ?」
心に訴えてしまう。
この男に通用しないと分かりつつも……どうしても感情的になってしまった。
偽王子は、思考を整理する。
このままだと,第二王女は必ず抜け出そうとする…と。
こういう場合、厳重に閉じ込めればいい。
だが…………
ふぅと息を吐く。
そんな簡単なことが,どうしてもできない。
そんなことをしたら,本気で第二王女に嫌われてしまうから。
「…王女、次期女王なら無事です。
死亡の情報も来てない」
「ほんと…?」
心の底から嬉しそうな声。
よかった…と胸をなで落としている。
「それと…………」
目をつぶる。
偽王子は、意を決したように口を開く。
「ぼくは……きみが好きで」
「え?」
「外交に使えるからとかじゃなく、ほんとうに…」
「ま、待って」
手のひらを見せ、止める素振りをした。
誘惑するように笑い、その手を握られる。
「好きだと…本音を言ったら,自分の意思でぼくのそばに居てくれる?」
「好きじゃない。だけどおとなしく居させるために,嘘をつくってことね?」
「本音って言いましたよ?」
切なく笑った。
作り笑顔と、本心が混ざってそうで、わたしは首を傾けたまま、王子をくまなく観察した。
そして、無表情でいながらも、王子の表情を見て、いくらか胸が締め付けられた。
一瞬で、頭の血が凍りつく感覚を覚えた。
「どういうこと……?
手を下した誰かがいるってこと?」
瞳孔が開き、興奮している第二王女。
ダークチョコレートの瞳が、いつもより大きく見えた。
偽王子は、第二王女に片手で胸ぐらを掴まれたまま揺らされる。
王子は、微かに笑みをこぼしていた。
「そんなに心配?
きみを殺そうとした人間だけど」
「まだ……そうと決まったわけじゃないでしょ…」
少しうつむいて言っている。
第二王女の発言に、ぼくは言葉を失った。
バカなのか?
そう言いたいが、口をつぐむ。
…そんなに仲がいいのか?
それとも姉に洗脳されてるのか…
確かに次期女王が、妹の第二王女を案じてる可能性もゼロではない。
危険因子の妹だ。
もっと早くに殺していても不思議ではない。
なのに……ぼくに会うまで生きていた。
「確かに次期女王は…きみを想っている可能性もある。
だけどそれは何%だ?
今までのことを考えると…それはとてつもなく低い」
詰め寄られる。
わたしは下唇を噛んだ。
わかってる
こんな男に言われなくても、わかってるつもりだった。
「…わたしを大国へ送り返して」
キッと涙目で睨む。
少しだけ動揺する偽王子の表情…
「姉の動向を知っときたい」
「ぼくから聞けば……」
「ほんとうのことは教えてくれない。
いいや、重要なこと…」
顔を振り言う。
「あなたが言ってもいいと判断した情報しか教えてくれない。
姉は、わたしの家族よ?」
心に訴えてしまう。
この男に通用しないと分かりつつも……どうしても感情的になってしまった。
偽王子は、思考を整理する。
このままだと,第二王女は必ず抜け出そうとする…と。
こういう場合、厳重に閉じ込めればいい。
だが…………
ふぅと息を吐く。
そんな簡単なことが,どうしてもできない。
そんなことをしたら,本気で第二王女に嫌われてしまうから。
「…王女、次期女王なら無事です。
死亡の情報も来てない」
「ほんと…?」
心の底から嬉しそうな声。
よかった…と胸をなで落としている。
「それと…………」
目をつぶる。
偽王子は、意を決したように口を開く。
「ぼくは……きみが好きで」
「え?」
「外交に使えるからとかじゃなく、ほんとうに…」
「ま、待って」
手のひらを見せ、止める素振りをした。
誘惑するように笑い、その手を握られる。
「好きだと…本音を言ったら,自分の意思でぼくのそばに居てくれる?」
「好きじゃない。だけどおとなしく居させるために,嘘をつくってことね?」
「本音って言いましたよ?」
切なく笑った。
作り笑顔と、本心が混ざってそうで、わたしは首を傾けたまま、王子をくまなく観察した。
そして、無表情でいながらも、王子の表情を見て、いくらか胸が締め付けられた。
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