悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

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意図

「それで…?どうするの?」

このときの女王は,落ち着いて見えた。
島の交渉に,ぼくがほんとうは喉から手が出るほど欲しいと思ってるんだろう。

「言いましたよね?
取り引きは不成立です」

王子は,自分の臣下が出した紅茶を飲む。
鋭い目つきで見た。

「ぼくは…第二王女をあなたに引き渡す気はありません」

開けていた上着のボタンを閉めながら言う。
帰り支度をしてるのだろう。
ほほえみ顔を貼り付けている。
イケメンでも,笑ったお面を付けているようで,不気味だった。

「ぼくは,第二王女さまが好きなんです」

サラッと言った。
驚いた表情かおで固まっている現女王。
水色のが大きくなる。
ぼくはゆっくり話し続ける。

「だから…第二王女を手放すとかありえません。
たとえ多くの島と交換だとしてもね」

有無を言わさなないほほえみ。
現女王はカップを置く。
また考えるような表情になる。
迷ったように…イチゴベーグルを持ち,置く。

「妹は……」

なにか言いかけ飲み込む。

「まだ元気?」
……

「お姉さまは?どうだった?なにかしてないわよね?」

矢継ぎ早にくる質問。
だが,さっきまで寝ていたのだろう。
パジャマ姿で駆け寄ってきた。

「なにもしてない。きみとの,唯一の約束だからね」

嫌味ったらしい言葉で,顔を近づけほほえまれる。
そして上着を脱ぎ、「顔を見て,第一にそれか」とイラッとした顔で,簡易防具を脱ぎながら言われた。

だが,わたしは今,それを気にしている余裕はなかった。
ここには,姉の情報は一切入ってこない。
わたしは姉の情報に飢えていた。

「ほんとに?」
「うん。ほんと」

興味を失ったように言う。

「それを破ってしまうと,きみは二度とぼくに心を開かなくなる。
それは困るから。
もし殺さなきゃいけないときがきたら,きみに相談してからにするよ」

次は教えるように優しく言った。
王女は固まり茫然とした。

王子は,上着を椅子の上に掛ける。
黒いネクタイを取り,白シャツと黒ズボンだけの服装になった。
固まっている第二王女を,チラッと横目で見る。

「…姉を殺すのはきみのためでもあるんだよ?」

優しい瞳だった。
でも……暗い。
なにを聞いてきたんだろう?

急に不安が襲う。

「そんなの…頼んでない」

わたしは怯えながら言う。

「うん。わかってる。
ぼくがしたいだけ」

優しく言っている。
諦めにも似ている。

少し苛つきを滲ませていたのを,このとき気づかなかった。
あとから考えると…偽王子の部屋にまで行って,すぐ姉のことを聞いたのが気に食わないんだろう。
なんてプライドが高いんだ,とあとになって思う。

だけど…このとき少し王子に対し,恐怖を感じていた。

なんで…なんでもないことのように,そんなことが言えるんだ。
今言った,っていうのは,ってことだよね?と自分に確認して震える。

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