悪女”と呼ばれた妹は、失踪した聖女の姉の代わりに敵国王子を婿に迎える

冬田シロクマ 

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初キス

幼い顔のイケメンに,母性本能が働く。
激しい心拍数に,わたしは若干胸に痛みを感じた。

だけど冷静に見てみると………

また間違いを犯すのか?

そう言われているようにも感じ,わたしはゴクンと唾を飲み込む。
さっきのトキメキの痛みも持続する。
魅力的に,挑発的にほほえんでいる偽王子。
誤魔化すようにだが,釣られてわたしは目線を外し「ははっ」と情けない笑いをこぼした。

だから,なんでわたしをそうまでして守ろうとするのか………

頭が冷えてきた。
その答えが知りたいと思った。
好きと言われたこともあるが,イマイチ信用できない。
だが,今は聞ける状況じゃない。

顔をうつむき,わたしはサッと考える。

「抵抗して…いいよ?」

言っていて,なんか違うな,と思った。
案の定「は?」と言い笑われる。
苛つきが強く滲んでいるその声に,わたしはまずい…と激しく思う。
もがくように首を伸ばし,わたしは上を見る。
誰か助けてほしかった。

「そうじゃなくて……」

再び口を開いた。
挽回するために。
偽王子に,冷めたで見下ろされる。
わたしの視線は,泳ぎまくった。
自分でも,自分らしくないと思う。

「…抵抗してください」

どうぞ,抵抗してください。

そんな言葉しか浮かばなくて焦る。
わたしは明らかに,冷静さを欠いていた。

案の定,偽王子の黒い瞳は苛つきで爛々としていた。
……

「うわっ!?」

ボフンッ

持ち上げられ,雑にベッドに落とされる。
目を開け,後ろに下がる。
腕だけで上半身を起き上がらせるわたし。
上には,影になった偽王子。
ネクタイを取っていた。

「まっ…な,なに…」

言いながら,第二王女は後ろに下がり青ざめる。
逃げようと辺りを見回すも,ドアの向こうに逃げた方が危ないと考え直した。
従者たちにこの王子が命令し,大勢で捕らえられたら━━━━
その方が,とんでもなく恐ろしい。

わたしがそういうことで,頭を回してるのを知ってか知らずか,王子は近づく。
纏っているのは,優しい雰囲気だった。

「前に…好きだとお伝えしたはずです」

優しく言われる。

「そう…だわね」

視線は後ろを見,王子の方に集中してなかった。

「どこまでぼくをもてあそぶ気ですか?」
「もてあそんでなんか……」

近くに来る綺麗な顔。
ニッコリと笑う。
それが作り笑顔だとわかった。

これからなにをされるかが,なんとなく察することができ,わたしはとんでもなく怖かった。

「いや…いやだ」

涙目で首を振る。
黒い目で真っ直ぐ射抜くように王女を見る王子。
その目はくらく,獣のようで恐ろしい……
迷いからか,王子の口の横の筋肉に線が張る。
 
顔をうつむけている偽王子。
暗くて顔がよく見えない。
思考を回しているようだった。

「お,王子…?離…離れて……」

肩を押す。
急にニコッと顔が上がる。
わたしは,ビクウッ!と過剰反応した。

「愛してます」
「え?」
「だから愛してます。第二王女さまを」

顔がゆっくり近くに来,口唇の端に,口付けをされた。

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