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無題
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「…?」
夜中、背中に熱を感じた。
ベッドが、心なしか狭い感じもする。
ぼくはゆっくり目を開く。
木目の二段ベッド。
ぼやけた視界は、暗く、よく見えなかった。
「ううん…」
「誰だよ」
心底うんざりしながら口を開いた。
ぼくの両腕を抑えるようにして、後ろから強く抱きつかれている。
上の段の奴が、いないと思って下に来たのか。
「…おい」
英語で言う。
「上行け」
ガッチリ掴まれた身体。
身動きできず、ただそのまま。
抱きつかれている腕を見る。
太めの筋肉質な腕だった。
もっとヒョロヒョロだった気が━━━
「ああ…」
頭をかかえる。
そうだ。
夜のことを思い出す。
絶望感に浸った顔をするぼく。
「………おい」
急な声に心臓が飛び出るぐらいに驚いた。
引き寄せられ、もつと強く抱きしめられる。
背中にもっと熱く熱を帯びた。
「動かないで」
状況整理をしようと垣間見る。
この男の寝息しか聞こえない。
ベッドの上の階の奴、他のベッドの人たちは、遊びに出掛けて今ここにいないのかもしれない。
2人っきり……………
静かな沈黙。
無理矢理起こしたらどうなるか。
夜、連れ去られそうになって、嫌だ行きたくないと必死に抵抗して今に至るんだ。
倒れている間、なにかされたみたいじゃないけど…………
だけど………ねむい
そこまで考えそう思った。
明日は8時から、授業だ。
瞼が落ちる。
朝になったら人が集まる。
金目のものは、厳重に隠してある。
盗むのも、一苦労だろう。
そこまで思考が達したとき、ぼくはすぐに睡魔に囚われた。
……
「一緒に寝よ」
昔の友人のように,馴れ馴れしく肩を組まれる。
その男はニコニコ笑っていた。
「他を当たれ」
腕を離させようとするも,肩を掴まれる。
離す気はないみたいだ。
「その顔で女でもたぶらかせばいいだろ」
吐き捨てるように言う。
その瞳には軽蔑が滲んでいた。
……
おれはその日本人の横髪を軽く触った。
おれの方を強く見ていて、それに気付いていないようだった。
憎しみ含んだその目で。
「…つらいことでもあったんだね」
そう口が、つきそうになる。
だけどこのタイプに、そんなことを言ったら、逆効果だろう。
なぜだかこの人間を、無性に手に入れたくなった。
……
前開きにしている水色のシャツの袖で、目こするように涙を拭いていた。
たぶん、人に弱みを見せられないタイプだろう。
こういう人間が、1番落ちたらチョロいんだよなぁ
一瞬淀んだ瞳が、ゆら…と動く。
ニコッと微笑まれた。
ぼくは肩からビクッと驚く。
真っ暗な夜の外。
治安の悪そうな狂った叫び声。
ぼくは生温かい空気に包まれているというのに肌が泡立った。
「だからぁ」
太い腕にガッチリ掴まれる。
一見華奢に見えたが、近づいてみると意外とガッシリしていた。
幼い子どものようにニコニコ笑っている。
「寝床提供して。
慰めてやろうって言ってんの」
優しい笑顔と裏腹に,好戦的な声が響いた。
夜中、背中に熱を感じた。
ベッドが、心なしか狭い感じもする。
ぼくはゆっくり目を開く。
木目の二段ベッド。
ぼやけた視界は、暗く、よく見えなかった。
「ううん…」
「誰だよ」
心底うんざりしながら口を開いた。
ぼくの両腕を抑えるようにして、後ろから強く抱きつかれている。
上の段の奴が、いないと思って下に来たのか。
「…おい」
英語で言う。
「上行け」
ガッチリ掴まれた身体。
身動きできず、ただそのまま。
抱きつかれている腕を見る。
太めの筋肉質な腕だった。
もっとヒョロヒョロだった気が━━━
「ああ…」
頭をかかえる。
そうだ。
夜のことを思い出す。
絶望感に浸った顔をするぼく。
「………おい」
急な声に心臓が飛び出るぐらいに驚いた。
引き寄せられ、もつと強く抱きしめられる。
背中にもっと熱く熱を帯びた。
「動かないで」
状況整理をしようと垣間見る。
この男の寝息しか聞こえない。
ベッドの上の階の奴、他のベッドの人たちは、遊びに出掛けて今ここにいないのかもしれない。
2人っきり……………
静かな沈黙。
無理矢理起こしたらどうなるか。
夜、連れ去られそうになって、嫌だ行きたくないと必死に抵抗して今に至るんだ。
倒れている間、なにかされたみたいじゃないけど…………
だけど………ねむい
そこまで考えそう思った。
明日は8時から、授業だ。
瞼が落ちる。
朝になったら人が集まる。
金目のものは、厳重に隠してある。
盗むのも、一苦労だろう。
そこまで思考が達したとき、ぼくはすぐに睡魔に囚われた。
……
「一緒に寝よ」
昔の友人のように,馴れ馴れしく肩を組まれる。
その男はニコニコ笑っていた。
「他を当たれ」
腕を離させようとするも,肩を掴まれる。
離す気はないみたいだ。
「その顔で女でもたぶらかせばいいだろ」
吐き捨てるように言う。
その瞳には軽蔑が滲んでいた。
……
おれはその日本人の横髪を軽く触った。
おれの方を強く見ていて、それに気付いていないようだった。
憎しみ含んだその目で。
「…つらいことでもあったんだね」
そう口が、つきそうになる。
だけどこのタイプに、そんなことを言ったら、逆効果だろう。
なぜだかこの人間を、無性に手に入れたくなった。
……
前開きにしている水色のシャツの袖で、目こするように涙を拭いていた。
たぶん、人に弱みを見せられないタイプだろう。
こういう人間が、1番落ちたらチョロいんだよなぁ
一瞬淀んだ瞳が、ゆら…と動く。
ニコッと微笑まれた。
ぼくは肩からビクッと驚く。
真っ暗な夜の外。
治安の悪そうな狂った叫び声。
ぼくは生温かい空気に包まれているというのに肌が泡立った。
「だからぁ」
太い腕にガッチリ掴まれる。
一見華奢に見えたが、近づいてみると意外とガッシリしていた。
幼い子どものようにニコニコ笑っている。
「寝床提供して。
慰めてやろうって言ってんの」
優しい笑顔と裏腹に,好戦的な声が響いた。
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