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1巻
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第十話
しかし、シオンにそんな過去があったのか。
「シオンちゃん、あたしの胸で泣いてもいいのよ」
ダンク姐さんがいきなり凄い冗談をぶち込んできた。
「ちょっとダンク姐さん、ここでそんな冗談ぶっ込んじゃダメだ」
「えっ? 冗談じゃないけど? さあ、おいで。シオンちゃん」
ダンク姐さんは両手を広げてシオンを招き入れる動作をしだした。
「冗談じゃないって余計悪いよ。落ち込んでいるときに、そんな分厚い胸板に飛び込みたくないって、普通」
「あら、ミーツちゃん、あたしに喧嘩売ってるのかしら?」
「えっ、いや、あのですね。そうじゃなくて、えーと」
「プッ、ククク、アーッハッハッハッ、お前ら、俺が真面目な話をしていたのに笑かすなよ」
なんか知らないが、急にシオンが笑い出して復活した。
「あたしの胸に飛び込まなくても元気になったわね。良かったわ」
「俺がお前の胸に飛び込むことがあれば、俺はよほど重症だと思うぜ」
「良かった。シオンが元気になって、しかも正気で」
「ミーツちゃん、後でギルドの地下で訓練しましょうね~」
「マズイ! ダンク姐さんも怒らせた。ごめんなさい」
なんだか黒い笑顔になっているダンク姐さんに土下座をして謝った。
「別に怒ってないわよ。でも、本当に訓練が必要よ、ミーツちゃんはね。ついでにシオンちゃんもよ。先程のステータスだと、手練の暗殺者なら殺されちゃうわ」
「ダンク姐さん、悪気があって言ったわけじゃないからね」
そう言い訳をしながら、先程魔法で出した水を差し出した。
「あら、美味しいわね、このお水。シオンちゃんにも、飲ませてあげたいわ。もう一つ出してもらえる?」
「ああ、いいよ」
先程と同じように身体中に魔力を巡らせて想像した。すると、同じように残りのコップに水が入っている。あれ? さっきより疲れてない。なんでだろうと不思議に思った。
「できたよ、ダンク姐さん」
「さあ、シオンちゃんも飲んでみて?」
「確かに、美味いな。俺の知ってる水魔法を使うやつのより断然こっちの方が美味い」
「でも、ミーツちゃんの魔力って、1よね? 魔力が上がったらどうなるのかしら?」
「確かにな。魔力1でこれだけの魔法ができるなら、鍛えて魔力が上がったらどうなるんだろうな」
「なあ、シオン、魔力って鍛えるとどうなるんだ? 上がれば上がるほどどうなるんだ?」
「魔力は威力の微調整ができるようになる。例えば小さな火しか扱えなかったやつが、魔力を鍛えることによって、一人の人間を丸呑みできるくらいの炎を出すことができたりな。逆にそんな炎を、人差し指の先に灯すくらい小さな火に落とすこともできるようになる」
「そもそも魔力って、どうやって鍛えるんだ?」
「魔法を使えば使うだけ魔力が鍛えられる。他にはレベルを上げるとガッツリ上がるぞ。レベルを上げると、まずMPがガッツリ上がる。MPが上がればそれだけたくさん魔法を放つことができる、結果魔力も上がるってことだ。レベルは魔物や人を殺さないと上がらないぞ」
なるほど、超有名な某ゲームみたいだ。
ん? 人? 今シオン、人って言ったか?
人も経験値になるのか?
「なあ、シオン。人も殺すと経験値になってレベルが上がるのか?」
「ああ、そうだ。人間は魔物なんかにはない様々な経験を多々積んでいる。戦ったことのないやつでも濃い人生歩んでたら、それだけ経験値がデカイ、むしろその辺の魔物を狩るより人間を狩った方が経験値になる。まあ、そこまでいけばただの外道だがな。俺がなぜそんなことを知ってるかと言えば、戦争を経験してるからだ。戦争に勝てれば、それだけ人を殺してレベルアップする。その分、死のリスクもあるがな。ただ、他の国では知らんが、普通戦争なんてそう易々ないけどな」
確かに、シオンの言う通りだ。
人は様々な人生を送っている。全く同じ人生を送ってる者はいない。似たような人生を送る者はいても、全く同じってのはいないな。
なお、レベルの低い子供や若い人は経験値が少ないかと言われれば、答えはYESだ。やっぱり人は経験がものをいう。
「だから、お前が俺を殺せば一気に世界最強になれるんじゃねぇか?」
「恩人にそんなことするかよ! なあ、シオン。シオンさえ良ければ一緒にレイン様の国に行かないか?」
「そもそも、お前がなんでレイン様のこと、知ってるんだよ」
「え、だからさっき話しただろ?」
「そうだが、レイン様は、レイン・ラインハットって、名乗ってなかったか?」
「シオン、レイン様のこと知ってるのか? 俺はレイン様って言っただけで、ラインハットとは言ってないよ」
「貴族でレイン様のことを知らないやつがいれば、そいつは貴族になりたてか貴族じゃないやつだ」
ん? どういうことだろうか。レインってそんなに有名人だったのか?
「知らないようだから教えてやるが、レイン・ラインハット、本当の名前はレイン・キング・ラインハット。俺たちがいる国より大きい皇国の王子で、しかも第一継承者だ」
「あー、なるほど。そういうことか。だからあの貴族は俺の返答にハラハラして肝が冷えたとか言っていたのか。じゃあレイン様が命を落としていたらどうなっていたんだろうな。やっぱり戦争か?」
「そんなの戦争にもならんわ! 一方的に殺戮されて滅ぼされるだけだ」
「冒険者になったら行きますって社交辞令のつもりで言ったけど、そんな大国だったら行かないわけにはいかないよなあ。ハッキリ無理! って断っとけばよかったな」
「この馬鹿野郎! レイン様と知り合いになれること自体奇跡なのに、そんなことを言ったら、お前の首が飛んでたぞ、絶対」
「いやいやいや、それはないな。レイン様はそんなことをするような感じの人に見えなかったもん。あの従者ならありえるけど、そのときはレイン様がきっと助けてくれるよ。じゃあ、結局シオンは行かないのか?」
「いや、行きたいのは山々だが、俺にはケインの問題があるからな」
「一度この国を出て、外から見てみるのもアリだと俺は思うんだけど、手掛かりがないままズルズルとこの国にいるよりかはいいんじゃないか?」
「確かにそれもそうだな、行く前にお前を冒険者にしなきゃいけないけどな。ところで、お前はすぐ冒険者になるのか?」
「いや、すぐにはならない。もう少しここの裏ギルドで依頼を受けつつ、想像魔法の可能性を考えていくよ。裏ギルドの依頼も気になるのあるし」
実際のところ、よくある魔法より、想像魔法の方が相当使える気がする。考え方によっては最強な魔法になるのではないだろうか。
「ところでシオン、今日もあの寝ぐらで寝るのか?」
「実はな、あのときはまだお前のことを怪しんでいたんだ。だから冒険者で失敗したと嘘をついて、嘘の寝ぐらを教えていた」
そうか、シオンは弟に命を狙われてるって言ってたな。それで俺が城から追放されたばかりとか言うもんだから警戒してたのか。ん? じゃあ、あの残飯食べたのはどっちだ? ワザとか? それとも本当に食事の場所として教えたのか?
「なあ、シオン? 最初にメシの場所を教えてくれたのはワザとか? それとも本当に食事の場所として教えたのか?」
「ワザとだ。あんな残飯、俺が本気で食べていると思ったか? でも、スラムの住人の中には実際に食べているやつがいるからいいじゃねえか」
マジか、今思えば仕方ないことだが、勇気を出してプライドも捨てて食べたのに、実際はシオンは食べてなかったって酷いな。
「ワザとだったが、あのときはありがたかったろ? 残飯とはいえ、全くメシの場所も分からず、水が飲めるところも分からず、俺がいなかったら、お前死んでたんじゃねぇか?」
「確かにそうだ。シオンがいなかったら死んでいた可能性が高い。裏ギルドもシオンが紹介してくれたし、ダンク姐さんとの出会いもシオンだ。シオンがいなかったら貴族の依頼も受けられなかったに違いないし、レイン様とも出会えなかった。もうシオンに足を向けて寝れないな」
「その点で言えば、良かったよな。貴族の依頼受けたのがお前でな。お前じゃなかったら、今頃貴族連中は大荷物を持って国外に逃げていただろうな」
あ、そう言えば、レイン様にもらったレリーフをシオンに見せたらどういう反応をするんだろう。宿に置いてきてしまったけど、後で見せてみよう。
「ところで、シオンはどこに泊まってんだ?」
「俺か? 俺は大通りにある一晩メシ付きで鉄貨三枚と銅貨五枚のところに泊まってるぞ。ただ、普通はその代金だが、俺は以前あそこの子供を助けたことがあってな、それで好きなだけ泊まっていいって言われて、代金は銅貨五枚分だけ払ってる状態だ。俺が、お前も泊まらせてもらうように交渉してやろうか?」
「いや、いい。多分俺もそこに泊まってるから。といってもまだ泊まってないんだが、とりあえず三泊する予定で、代金だけ渡して、荷物を置いてコッチに来たからな」
「なんか、あたしずっと空気になってるわ。あたしの部屋なのに」
「「あ」」
俺たちが話していたのはダンク姐さんの部屋なのに、ダンク姐さんがいるのをすっかり忘れていた。
「悪い悪い、スマンな」
「ごめん、ダンク姐さん。まだ昼前だけど、ダンク姐さんに訓練に付き合ってもらおうかな~」
「ふう、しょうがないな~。ミーツちゃんのお願いだもんね、聞かなきゃいけないわね。シオンちゃんも付き合いなさいよね。あたしを空気扱いしたんだから。それに、シオンちゃんも身体なまってるでしょ?」
「ああ、それくらいだったら付き合うぜ。デートはごめんだがな」
しまった! シオンにデートについての事情を話すのを忘れていた。ステータスと、俺の魔法と、シオンの過去と、依頼の話で、完全に忘れていた。
まあ、宿が一緒なんだ、後ででも言うか。
「ダンク姐さん、今から行くのかい?」
「そうねえ、行く前に着替えなきゃね。防音の魔道具も切らなきゃいけないし」
そういえば、入ったときから気になっていた。
ダンク姐さんの格好が、フリフリをふんだんに使った、ピンクのネグリジェだったからだ。色々なことがあって突っ込むタイミングを失っていた。
「じゃあ、俺たちは防音の魔道具を受付に渡して、先にギルド前に行っているから、ゆっくり準備していいからね」
「あら、ミーツちゃん、気がきくじゃない。乙女は時間かかるの、ちゃんと心得てるのね」
「誰が乙女じゃー! ミーツもいい加減、こいつを乙女とか女扱いするな!」
「シオンちゃん? あとで覚えておきなさいよ? 訓練が一番必要なのはシオンちゃんみたいだから。シオンちゃんが終わったら、次はミーツちゃんね」
「了解いたしました」
「いや、言葉の綾と――」
「言い訳は聞きません! 後でゆっくり訓練所でデートしましょうね」
ダンク姐さんがシオンの言い訳に言葉を被せて、問答無用で訓練デートをすることが決まった。俺はシオンとダンク姐さんの言い争いに巻き込まれる前に、そそくさと防音の魔道具を持って部屋を出て、受付に挨拶をしたあと、先にギルドの方向に向かった。
第十一話
ギルド前で待っていると、シオンが怒ったような形相で、ダンッダンッとわざと大きな足音をさせて俺のところに近付いてきた。
「お前、なんで逃げるんだよ! 大変だったんだぞ。ダンクを鎮めるの」
「そんなの知らんよ。シオンがダンク姐さんを怒らせることを言うからだろ?」
「クッ、言い返せないのが悔しいぜ。お前に言い負かされるとは思わなかったぞ」
あ、ダンク姐さんにスマホを返してもらうのとお金を預けるの忘れていた。ま、いっか。もうすぐギルドに来るしと、シオンと雑談しながら考えごとをして待っていると、ダンク姐さんが来た。
「お待たせ~、どう? 今日のあたしは? 美しいでしょ?」
「さっき会ったばっかりだろ? 何言ってんだ? 頭わいてんのか?」
「シオン、お前もう少し乙女心を学べよ。ダンク姐さん、さっきぶりだけど、筋肉がキラキラ輝いてるね」
「そうでしょう! さすがミーツちゃんねえ。シオンちゃんもミーツちゃんを見習ってちょうだい。着替える前に少しパンプアップしたのよねえ。さあ、早速ギルドに入りましょうか」
本当に普段の服装と違っていた。普段のダンク姐さんは、ギルド職員の決まった服装なのか白の長袖シャツに黒のズボンなのだが、今日はピッチピチの半袖の白シャツに黒のハーフパンツ姿だった。筋肉もテッカテカに輝いている。
「でも、俺とかシオンのような服装のやつが入ったら、追い出されるんじゃないの?」
「あたしが一緒にいるから大丈夫よぅ。それに、ミーツちゃんのその服だったら、全然入っても問題ないわ。顔がバレてるシオンちゃんはちょっとダメだと思うけど、あたしが持ってきたマントで顔と身体を隠せば、シオンちゃんだって誰も思わないから、暗殺の依頼を受けた子がいても分からないと思うわ」
初めて表のギルドに入るから、年甲斐もなくちょっとドキドキした。
だが……いざ入ってみると、役所っぽくてガッカリ感が半端ない。
でも、入って右通路の奥に、飲食のできる酒場のようなところがあるみたいだ。
厳つい人や、細いけど鎧を着込んだ人や、ローブを着た魔法使い風の人など、様々な人がそっちに流れている。
ダンク姐さんの説明では、左通路の奥に地下におりる階段があるらしい。
ダンク姐さんについて地下までおり切ると、そこは普通の学校のグラウンドと変わらないくらいの広さがあった。
冒険者や冒険者見習いが剣の稽古や魔法の試し打ちなど、好きに使っていい場所らしく、俺たちが来たときもいくつかのグループが訓練をしていた。
先にダンク姐さんとシオンが、訓練という名のダンク姐さんによるシオンへのお仕置きを始めた。
俺はというと、少し暇だったので、先程二回使った魔法でMPがどのくらい減ったか、確認のためにMPだけステータスオープンしてみる。するとMP50/50だったのが、50/70になっていた。
たった二回飲み水を出しただけなんだが、最大MPが増えていて、しかも使った分のMPが回復している。最初にどのくらい消費したか分からないが、「?」が頭にいっぱい浮かんだ。
とりあえず訓練と確認のため、想像魔法でターボライターの火を想像し、人差し指の先に灯す。想像が少し過激すぎたか、シュゴーッと改造ライターみたいな火が飛び出した。びっくりしたが、すぐ消してあたりを見回す。誰も見ていなかったようで安心した。
早速、今の魔法でどのくらい減ってどのくらいで回復するか見てみると、MP50/70がMP30/75になっていた。んん? MPの最大値が、たったあれだけで5も上がってる。
ただ、さっきの水魔法で20も上がったから、今度はもう少し上がると思っていたので、そんなものかと少し落胆した。
試しにもう一度、ターボライターの火の魔法を使う。今度は微調整ができて理想通りの火が出た。それでまたMPを見る。
MP25と少し減り、最大値も増えていた。最大値を含めて見ると、MP25/80になっている。
やはり5だけ上がっていた。
MPの様子を見ながら、十分くらい経っただろうか? MPが回復し出した。1ずつだが、確実に回復している。もし俺がMP回復の想像魔法を考えたらどうなるんだろう。
モノは試しだと言わんばかりにやってみる。
途端に身体が怠くなる。失敗したか。MPか魔力が足りなかったかのいずれかだろう。そう思いながら現在のMPを見て気を失った。
MP0/100
■
ミーツが想像魔法による魔法を使って気を失っているとき、ダンクとシオンはチラチラとミーツを見ながら組み手をしていた。
「ハアハアハア、なあダンク、気が付いてるか? あいつ、今魔法使ってるぜ。火の魔法だったと思うが、あいつの指先から勢いよく火が飛び出してたぜ」
「もちろんよ。ミーツちゃんのことも、ちゃんと見てるわよっと! そこ! 脇が甘いわよ」
「ぐあっ! くそっ、あーもう! 俺は降参だ」
「ふっふーん♪ これで懲りたら、もう少し乙女心を学んでちょうだいね」
「クッソー! あ! おい、ダンク、マズイぞ。あいつ魔力切れを起こしてるぞ」
「え? 嘘?」
「行くぞ。ダンク」
二人は倒れているミーツのそばに行き、様子を確認した。
「良かった。寝てるだけみたいね」
「ああ、どのくらいのをイメージして使ったかにもよるが、寝てるだけなら問題ない。下手したら死ぬからな。これだから異世界人は常識がなくて困るぜ」
「シオンちゃん、それは言っちゃだめよ。ミーツちゃんはこちらの常識を何も教えてもらえないまま、お城を追い出されたらしいんだから」
「そうか、そうだったな。悪かった」
「魔法が使えるシオンちゃんから見て、ミーツちゃんはどのくらいで起きると思う?」
「なんとも言えんが、起きるのなら、おそらくそんなに時間もかからないと思う。ただ実際のところは、待ってみないと分からんな」
「そうね。ただ待ってるだけじゃつまらないから、また訓練しない?」
「魔法使っていいならやるぜ」
「ブウ、魔法を使われたらあたしが手を出せないじゃない。シオンちゃんの意地悪! じゃあ、あたしも手加減なしの本気で行くから魔法使っていいわよ」
「相変わらずキモイな。多分普通の女なら可愛いと思えるはずなんだが。お前が本気? 俺、今日無事に宿に帰れるんだろうか」
■
なにやら頭がぼーっとしている。頭がフワフワしていて気持ちがいい。やっぱり魔法を使いすぎたら気絶するのか。
そのあたりもテンプレってやつだな。次から気をつけないと。
だんだん覚醒してきたので、瞼をうっすらと開けてMPを見てみると、5/100になっていた。
やっぱりMPの上がり方が異常だ。
俺が特殊なのか、それともこのくらい上がるのが普通なのか全く分からない。
まだ身体は横になったままだったが、顔を横に向けると、相変わらず二人は言い争いをしていて、シオンが叩こうとするダンク姐さんから逃げている。
しかし、シオンにそんな過去があったのか。
「シオンちゃん、あたしの胸で泣いてもいいのよ」
ダンク姐さんがいきなり凄い冗談をぶち込んできた。
「ちょっとダンク姐さん、ここでそんな冗談ぶっ込んじゃダメだ」
「えっ? 冗談じゃないけど? さあ、おいで。シオンちゃん」
ダンク姐さんは両手を広げてシオンを招き入れる動作をしだした。
「冗談じゃないって余計悪いよ。落ち込んでいるときに、そんな分厚い胸板に飛び込みたくないって、普通」
「あら、ミーツちゃん、あたしに喧嘩売ってるのかしら?」
「えっ、いや、あのですね。そうじゃなくて、えーと」
「プッ、ククク、アーッハッハッハッ、お前ら、俺が真面目な話をしていたのに笑かすなよ」
なんか知らないが、急にシオンが笑い出して復活した。
「あたしの胸に飛び込まなくても元気になったわね。良かったわ」
「俺がお前の胸に飛び込むことがあれば、俺はよほど重症だと思うぜ」
「良かった。シオンが元気になって、しかも正気で」
「ミーツちゃん、後でギルドの地下で訓練しましょうね~」
「マズイ! ダンク姐さんも怒らせた。ごめんなさい」
なんだか黒い笑顔になっているダンク姐さんに土下座をして謝った。
「別に怒ってないわよ。でも、本当に訓練が必要よ、ミーツちゃんはね。ついでにシオンちゃんもよ。先程のステータスだと、手練の暗殺者なら殺されちゃうわ」
「ダンク姐さん、悪気があって言ったわけじゃないからね」
そう言い訳をしながら、先程魔法で出した水を差し出した。
「あら、美味しいわね、このお水。シオンちゃんにも、飲ませてあげたいわ。もう一つ出してもらえる?」
「ああ、いいよ」
先程と同じように身体中に魔力を巡らせて想像した。すると、同じように残りのコップに水が入っている。あれ? さっきより疲れてない。なんでだろうと不思議に思った。
「できたよ、ダンク姐さん」
「さあ、シオンちゃんも飲んでみて?」
「確かに、美味いな。俺の知ってる水魔法を使うやつのより断然こっちの方が美味い」
「でも、ミーツちゃんの魔力って、1よね? 魔力が上がったらどうなるのかしら?」
「確かにな。魔力1でこれだけの魔法ができるなら、鍛えて魔力が上がったらどうなるんだろうな」
「なあ、シオン、魔力って鍛えるとどうなるんだ? 上がれば上がるほどどうなるんだ?」
「魔力は威力の微調整ができるようになる。例えば小さな火しか扱えなかったやつが、魔力を鍛えることによって、一人の人間を丸呑みできるくらいの炎を出すことができたりな。逆にそんな炎を、人差し指の先に灯すくらい小さな火に落とすこともできるようになる」
「そもそも魔力って、どうやって鍛えるんだ?」
「魔法を使えば使うだけ魔力が鍛えられる。他にはレベルを上げるとガッツリ上がるぞ。レベルを上げると、まずMPがガッツリ上がる。MPが上がればそれだけたくさん魔法を放つことができる、結果魔力も上がるってことだ。レベルは魔物や人を殺さないと上がらないぞ」
なるほど、超有名な某ゲームみたいだ。
ん? 人? 今シオン、人って言ったか?
人も経験値になるのか?
「なあ、シオン。人も殺すと経験値になってレベルが上がるのか?」
「ああ、そうだ。人間は魔物なんかにはない様々な経験を多々積んでいる。戦ったことのないやつでも濃い人生歩んでたら、それだけ経験値がデカイ、むしろその辺の魔物を狩るより人間を狩った方が経験値になる。まあ、そこまでいけばただの外道だがな。俺がなぜそんなことを知ってるかと言えば、戦争を経験してるからだ。戦争に勝てれば、それだけ人を殺してレベルアップする。その分、死のリスクもあるがな。ただ、他の国では知らんが、普通戦争なんてそう易々ないけどな」
確かに、シオンの言う通りだ。
人は様々な人生を送っている。全く同じ人生を送ってる者はいない。似たような人生を送る者はいても、全く同じってのはいないな。
なお、レベルの低い子供や若い人は経験値が少ないかと言われれば、答えはYESだ。やっぱり人は経験がものをいう。
「だから、お前が俺を殺せば一気に世界最強になれるんじゃねぇか?」
「恩人にそんなことするかよ! なあ、シオン。シオンさえ良ければ一緒にレイン様の国に行かないか?」
「そもそも、お前がなんでレイン様のこと、知ってるんだよ」
「え、だからさっき話しただろ?」
「そうだが、レイン様は、レイン・ラインハットって、名乗ってなかったか?」
「シオン、レイン様のこと知ってるのか? 俺はレイン様って言っただけで、ラインハットとは言ってないよ」
「貴族でレイン様のことを知らないやつがいれば、そいつは貴族になりたてか貴族じゃないやつだ」
ん? どういうことだろうか。レインってそんなに有名人だったのか?
「知らないようだから教えてやるが、レイン・ラインハット、本当の名前はレイン・キング・ラインハット。俺たちがいる国より大きい皇国の王子で、しかも第一継承者だ」
「あー、なるほど。そういうことか。だからあの貴族は俺の返答にハラハラして肝が冷えたとか言っていたのか。じゃあレイン様が命を落としていたらどうなっていたんだろうな。やっぱり戦争か?」
「そんなの戦争にもならんわ! 一方的に殺戮されて滅ぼされるだけだ」
「冒険者になったら行きますって社交辞令のつもりで言ったけど、そんな大国だったら行かないわけにはいかないよなあ。ハッキリ無理! って断っとけばよかったな」
「この馬鹿野郎! レイン様と知り合いになれること自体奇跡なのに、そんなことを言ったら、お前の首が飛んでたぞ、絶対」
「いやいやいや、それはないな。レイン様はそんなことをするような感じの人に見えなかったもん。あの従者ならありえるけど、そのときはレイン様がきっと助けてくれるよ。じゃあ、結局シオンは行かないのか?」
「いや、行きたいのは山々だが、俺にはケインの問題があるからな」
「一度この国を出て、外から見てみるのもアリだと俺は思うんだけど、手掛かりがないままズルズルとこの国にいるよりかはいいんじゃないか?」
「確かにそれもそうだな、行く前にお前を冒険者にしなきゃいけないけどな。ところで、お前はすぐ冒険者になるのか?」
「いや、すぐにはならない。もう少しここの裏ギルドで依頼を受けつつ、想像魔法の可能性を考えていくよ。裏ギルドの依頼も気になるのあるし」
実際のところ、よくある魔法より、想像魔法の方が相当使える気がする。考え方によっては最強な魔法になるのではないだろうか。
「ところでシオン、今日もあの寝ぐらで寝るのか?」
「実はな、あのときはまだお前のことを怪しんでいたんだ。だから冒険者で失敗したと嘘をついて、嘘の寝ぐらを教えていた」
そうか、シオンは弟に命を狙われてるって言ってたな。それで俺が城から追放されたばかりとか言うもんだから警戒してたのか。ん? じゃあ、あの残飯食べたのはどっちだ? ワザとか? それとも本当に食事の場所として教えたのか?
「なあ、シオン? 最初にメシの場所を教えてくれたのはワザとか? それとも本当に食事の場所として教えたのか?」
「ワザとだ。あんな残飯、俺が本気で食べていると思ったか? でも、スラムの住人の中には実際に食べているやつがいるからいいじゃねえか」
マジか、今思えば仕方ないことだが、勇気を出してプライドも捨てて食べたのに、実際はシオンは食べてなかったって酷いな。
「ワザとだったが、あのときはありがたかったろ? 残飯とはいえ、全くメシの場所も分からず、水が飲めるところも分からず、俺がいなかったら、お前死んでたんじゃねぇか?」
「確かにそうだ。シオンがいなかったら死んでいた可能性が高い。裏ギルドもシオンが紹介してくれたし、ダンク姐さんとの出会いもシオンだ。シオンがいなかったら貴族の依頼も受けられなかったに違いないし、レイン様とも出会えなかった。もうシオンに足を向けて寝れないな」
「その点で言えば、良かったよな。貴族の依頼受けたのがお前でな。お前じゃなかったら、今頃貴族連中は大荷物を持って国外に逃げていただろうな」
あ、そう言えば、レイン様にもらったレリーフをシオンに見せたらどういう反応をするんだろう。宿に置いてきてしまったけど、後で見せてみよう。
「ところで、シオンはどこに泊まってんだ?」
「俺か? 俺は大通りにある一晩メシ付きで鉄貨三枚と銅貨五枚のところに泊まってるぞ。ただ、普通はその代金だが、俺は以前あそこの子供を助けたことがあってな、それで好きなだけ泊まっていいって言われて、代金は銅貨五枚分だけ払ってる状態だ。俺が、お前も泊まらせてもらうように交渉してやろうか?」
「いや、いい。多分俺もそこに泊まってるから。といってもまだ泊まってないんだが、とりあえず三泊する予定で、代金だけ渡して、荷物を置いてコッチに来たからな」
「なんか、あたしずっと空気になってるわ。あたしの部屋なのに」
「「あ」」
俺たちが話していたのはダンク姐さんの部屋なのに、ダンク姐さんがいるのをすっかり忘れていた。
「悪い悪い、スマンな」
「ごめん、ダンク姐さん。まだ昼前だけど、ダンク姐さんに訓練に付き合ってもらおうかな~」
「ふう、しょうがないな~。ミーツちゃんのお願いだもんね、聞かなきゃいけないわね。シオンちゃんも付き合いなさいよね。あたしを空気扱いしたんだから。それに、シオンちゃんも身体なまってるでしょ?」
「ああ、それくらいだったら付き合うぜ。デートはごめんだがな」
しまった! シオンにデートについての事情を話すのを忘れていた。ステータスと、俺の魔法と、シオンの過去と、依頼の話で、完全に忘れていた。
まあ、宿が一緒なんだ、後ででも言うか。
「ダンク姐さん、今から行くのかい?」
「そうねえ、行く前に着替えなきゃね。防音の魔道具も切らなきゃいけないし」
そういえば、入ったときから気になっていた。
ダンク姐さんの格好が、フリフリをふんだんに使った、ピンクのネグリジェだったからだ。色々なことがあって突っ込むタイミングを失っていた。
「じゃあ、俺たちは防音の魔道具を受付に渡して、先にギルド前に行っているから、ゆっくり準備していいからね」
「あら、ミーツちゃん、気がきくじゃない。乙女は時間かかるの、ちゃんと心得てるのね」
「誰が乙女じゃー! ミーツもいい加減、こいつを乙女とか女扱いするな!」
「シオンちゃん? あとで覚えておきなさいよ? 訓練が一番必要なのはシオンちゃんみたいだから。シオンちゃんが終わったら、次はミーツちゃんね」
「了解いたしました」
「いや、言葉の綾と――」
「言い訳は聞きません! 後でゆっくり訓練所でデートしましょうね」
ダンク姐さんがシオンの言い訳に言葉を被せて、問答無用で訓練デートをすることが決まった。俺はシオンとダンク姐さんの言い争いに巻き込まれる前に、そそくさと防音の魔道具を持って部屋を出て、受付に挨拶をしたあと、先にギルドの方向に向かった。
第十一話
ギルド前で待っていると、シオンが怒ったような形相で、ダンッダンッとわざと大きな足音をさせて俺のところに近付いてきた。
「お前、なんで逃げるんだよ! 大変だったんだぞ。ダンクを鎮めるの」
「そんなの知らんよ。シオンがダンク姐さんを怒らせることを言うからだろ?」
「クッ、言い返せないのが悔しいぜ。お前に言い負かされるとは思わなかったぞ」
あ、ダンク姐さんにスマホを返してもらうのとお金を預けるの忘れていた。ま、いっか。もうすぐギルドに来るしと、シオンと雑談しながら考えごとをして待っていると、ダンク姐さんが来た。
「お待たせ~、どう? 今日のあたしは? 美しいでしょ?」
「さっき会ったばっかりだろ? 何言ってんだ? 頭わいてんのか?」
「シオン、お前もう少し乙女心を学べよ。ダンク姐さん、さっきぶりだけど、筋肉がキラキラ輝いてるね」
「そうでしょう! さすがミーツちゃんねえ。シオンちゃんもミーツちゃんを見習ってちょうだい。着替える前に少しパンプアップしたのよねえ。さあ、早速ギルドに入りましょうか」
本当に普段の服装と違っていた。普段のダンク姐さんは、ギルド職員の決まった服装なのか白の長袖シャツに黒のズボンなのだが、今日はピッチピチの半袖の白シャツに黒のハーフパンツ姿だった。筋肉もテッカテカに輝いている。
「でも、俺とかシオンのような服装のやつが入ったら、追い出されるんじゃないの?」
「あたしが一緒にいるから大丈夫よぅ。それに、ミーツちゃんのその服だったら、全然入っても問題ないわ。顔がバレてるシオンちゃんはちょっとダメだと思うけど、あたしが持ってきたマントで顔と身体を隠せば、シオンちゃんだって誰も思わないから、暗殺の依頼を受けた子がいても分からないと思うわ」
初めて表のギルドに入るから、年甲斐もなくちょっとドキドキした。
だが……いざ入ってみると、役所っぽくてガッカリ感が半端ない。
でも、入って右通路の奥に、飲食のできる酒場のようなところがあるみたいだ。
厳つい人や、細いけど鎧を着込んだ人や、ローブを着た魔法使い風の人など、様々な人がそっちに流れている。
ダンク姐さんの説明では、左通路の奥に地下におりる階段があるらしい。
ダンク姐さんについて地下までおり切ると、そこは普通の学校のグラウンドと変わらないくらいの広さがあった。
冒険者や冒険者見習いが剣の稽古や魔法の試し打ちなど、好きに使っていい場所らしく、俺たちが来たときもいくつかのグループが訓練をしていた。
先にダンク姐さんとシオンが、訓練という名のダンク姐さんによるシオンへのお仕置きを始めた。
俺はというと、少し暇だったので、先程二回使った魔法でMPがどのくらい減ったか、確認のためにMPだけステータスオープンしてみる。するとMP50/50だったのが、50/70になっていた。
たった二回飲み水を出しただけなんだが、最大MPが増えていて、しかも使った分のMPが回復している。最初にどのくらい消費したか分からないが、「?」が頭にいっぱい浮かんだ。
とりあえず訓練と確認のため、想像魔法でターボライターの火を想像し、人差し指の先に灯す。想像が少し過激すぎたか、シュゴーッと改造ライターみたいな火が飛び出した。びっくりしたが、すぐ消してあたりを見回す。誰も見ていなかったようで安心した。
早速、今の魔法でどのくらい減ってどのくらいで回復するか見てみると、MP50/70がMP30/75になっていた。んん? MPの最大値が、たったあれだけで5も上がってる。
ただ、さっきの水魔法で20も上がったから、今度はもう少し上がると思っていたので、そんなものかと少し落胆した。
試しにもう一度、ターボライターの火の魔法を使う。今度は微調整ができて理想通りの火が出た。それでまたMPを見る。
MP25と少し減り、最大値も増えていた。最大値を含めて見ると、MP25/80になっている。
やはり5だけ上がっていた。
MPの様子を見ながら、十分くらい経っただろうか? MPが回復し出した。1ずつだが、確実に回復している。もし俺がMP回復の想像魔法を考えたらどうなるんだろう。
モノは試しだと言わんばかりにやってみる。
途端に身体が怠くなる。失敗したか。MPか魔力が足りなかったかのいずれかだろう。そう思いながら現在のMPを見て気を失った。
MP0/100
■
ミーツが想像魔法による魔法を使って気を失っているとき、ダンクとシオンはチラチラとミーツを見ながら組み手をしていた。
「ハアハアハア、なあダンク、気が付いてるか? あいつ、今魔法使ってるぜ。火の魔法だったと思うが、あいつの指先から勢いよく火が飛び出してたぜ」
「もちろんよ。ミーツちゃんのことも、ちゃんと見てるわよっと! そこ! 脇が甘いわよ」
「ぐあっ! くそっ、あーもう! 俺は降参だ」
「ふっふーん♪ これで懲りたら、もう少し乙女心を学んでちょうだいね」
「クッソー! あ! おい、ダンク、マズイぞ。あいつ魔力切れを起こしてるぞ」
「え? 嘘?」
「行くぞ。ダンク」
二人は倒れているミーツのそばに行き、様子を確認した。
「良かった。寝てるだけみたいね」
「ああ、どのくらいのをイメージして使ったかにもよるが、寝てるだけなら問題ない。下手したら死ぬからな。これだから異世界人は常識がなくて困るぜ」
「シオンちゃん、それは言っちゃだめよ。ミーツちゃんはこちらの常識を何も教えてもらえないまま、お城を追い出されたらしいんだから」
「そうか、そうだったな。悪かった」
「魔法が使えるシオンちゃんから見て、ミーツちゃんはどのくらいで起きると思う?」
「なんとも言えんが、起きるのなら、おそらくそんなに時間もかからないと思う。ただ実際のところは、待ってみないと分からんな」
「そうね。ただ待ってるだけじゃつまらないから、また訓練しない?」
「魔法使っていいならやるぜ」
「ブウ、魔法を使われたらあたしが手を出せないじゃない。シオンちゃんの意地悪! じゃあ、あたしも手加減なしの本気で行くから魔法使っていいわよ」
「相変わらずキモイな。多分普通の女なら可愛いと思えるはずなんだが。お前が本気? 俺、今日無事に宿に帰れるんだろうか」
■
なにやら頭がぼーっとしている。頭がフワフワしていて気持ちがいい。やっぱり魔法を使いすぎたら気絶するのか。
そのあたりもテンプレってやつだな。次から気をつけないと。
だんだん覚醒してきたので、瞼をうっすらと開けてMPを見てみると、5/100になっていた。
やっぱりMPの上がり方が異常だ。
俺が特殊なのか、それともこのくらい上がるのが普通なのか全く分からない。
まだ身体は横になったままだったが、顔を横に向けると、相変わらず二人は言い争いをしていて、シオンが叩こうとするダンク姐さんから逃げている。
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