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3巻

3-3

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「これも神が与えたる修行ですぞ。これを食すことによってあごが強くなります。それに、これを食すことによって、他の食べ物が美味おいしく感じることでしょう」

 俺の様子を見た神父は、シスターに聞こえない声量でボソボソと語りかけてきた。

「あ、やはり神父様も、これについて思うところがあるんですね」
「はい。しかし食材を豊富に使えるほど裕福ではなく、それどころかいたみかけの野菜を安く買ったり、無償でもらってきたりしていますから、贅沢ぜいたくは言えませんな」
「なるほど。ということは、きちんとした食材があれば、美味おいしい料理が食べられるというわけですね?」
「もちろんです。ですが、そんな新鮮な食材を買えるだけのお金があれば、ここに使うより先に、街でえている子供たちのためにき出しをします。先程ミーツさんがくださった多額のお気持ちも、大切に使わせていただきますよ」
「それなら、ここにいる子たちと街にいる子たち、どちらにも食べてもらえるように、売る予定のない魔物を提供しますね。えーとシスター、ちょっと魔物を出しても大丈夫な広い場所に案内してもらっていいですか?」

 俺はシスターに声をかけた。ここには、神父と変わらないくらいの年齢である老婆のシスターと、まだ二十歳にも満たないであろう若いシスターの二人しかいないようだ。
 老婆のシスターが立ち上がると、若い方も遅れて立ち上がって、老婆の後をついていく。俺もそんな彼女らについていった。そして、教会の内庭に案内された。
 内庭はさほど広くはないが、牛魔を一体出しても大丈夫なスペースはある。しかも、庭の中央あたりには井戸もあった。

「ここなら外からは見えないですし、何を出されても大丈夫ですよ」

 老婆はほほみながら、俺が何の魔物を出すのか分かっているかのような口ぶりで言った。
 俺が牛魔をアイテムボックスから出し、牛魔の上にオークを重ねて出すと、いつの間にか俺の後ろについてきていた子供たちがどよめく。そして、牛魔を見て泣き出す子と、肉を食えることに素直に喜ぶ子とで分かれた。

「あらあら、本当にたくさんのお肉ですね。神父様、明日にでもき出しをおこないましょう。私はこれを解体しますので、着替えて参りますね」

 老婆のシスターはそう言うと、この場を離れた。

「そうですね。ミーツさん、ありがとうございます。せめてこの魔物の皮や爪は、換金してお返しします」

 神父がそんな提案をしてきたが、それを断り、それらのお金は教会や孤児院のために使ってくださいと答えると、彼は涙目になって、俺の手を握り何度もありがとうと言った。

「ほらね、神父様。師匠は大きな人だから、きっと孤児院のために力になってくれるって言ったでしょ」

 いつここに来たのか、ポケがいつの間にか子供たちの背後に立っていて、握手をしている俺たちに声をかけてきた。
 子供らもポケになついているようで、彼が現れた途端、ポケ兄ちゃんと呼びながら、わちゃわちゃと群がった。

「実は、夕方からポケが来てくれていたんですよ。食事の前に席を外したとき、ポケから、食事の後に現れてミーツさんを驚かすから黙っていてほしいと頼まれましてな。黙っていて申し訳ないです」

 神父がそう教えてくれた。

「あ、いえ、狙い通り驚きましたよ。ポケは頻繁ひんぱんにこちらに来ているんですか?」
「うん、来てますよ。ここには僕の弟分や妹分の子たちがいますから。それに、兄ちゃんや僕がもっと小さいときに、神父様にたくさん助けてもらいましたから」

 俺は神父にたずねたつもりだったが、神父が答える前にポケが答えた。ポケは、モブとビビがいてこそではあるが、冒険者として食っていけるようになったので、恩返しをしているのだろう。

「ミーツさん、今日はもう遅いですし、ポケとともにここに泊まられてはいかがですかな?」
「いや、今日は宿にいる同郷の子らに伝えなければならないことがあるので、帰ります」
「えー、師匠泊まらないんですか? だったら僕も、今日はやめておくかな」

 ポケがそう言い出した途端、彼の周りに集まっていた子供たちが一斉にブーイングを始める。

「あらあら、何を騒いでいるの」

 そこへ、老婆のシスターが農作業にでも出かけるのかといった服装で現れた。全身茶色のつぎはぎだらけの服で、これでクワでも持っていたら、本当に農家の人にしか見えないだろう。
 ただ、今回シスターが持っているのはクワではなく、よく切れそうなナタと斧である。
 神父から事情を聞いたシスターはおだやかな表情のまま、「我儘わがままを言わないの!」と子供たちを諭す。子供たちは黙ってうつむいた。

「では、さっさと解体してしまいますね」

 シスターは折れ曲がった腰を伸ばすと、ナタと斧を器用に動かしながら牛魔を解体していく。その様子は手慣れたもので、動きはゆっくりなのに無駄がなかった。
 ずっと見ていたい気持ちがあったが、神父に肩をたたかれて促されたので、室内に戻った。その後、神父にどうしても泊まっていってほしいと懇願され、仕方なくそうすることにした。
 それによりポケも泊まることが決定し、子供たちが嬉しさで再度騒ぎ出すが、内庭で解体作業をしているシスターのうるさいという一言でピタッと口をつぐむ。しかし、よほどポケが泊まるのが嬉しいのか、声を潜めてヒソヒソ喜んでいる姿に、ポケはこの子らに普段からとてもしたわれているのだと分かった。

「師匠、師匠が同郷の人に何か伝えたいことがあるなら、僕が行ってきますよ。裏道とか、大人が通れない道とか知ってるから、僕が行けばあっという間です」

 若者たちへの伝言は、朝早くにここを出れば大丈夫だろうと思っていたのだが、ポケに頼むことにした。
 だが頼むにしても、どう伝えたらいいものか。少し考えて、紙に書いて宿の女将おかみに渡してもらうのが一番かと思い、コートの内側に手を入れて取り出すふりをしながら、想像魔法で数枚の紙と鉛筆を取り出した。
 神父に、誰にも見られずに手紙が書ける場所はないかとたずねると、隠れスキルを見た教会内のざんしつを使うといいと教えてくれた。そして、今にも消えそうなローソクが載った燭台しょくだいを借りてざんしつに入り、まずは何も考えずにスラスラと、明日勇者が街をパレードすると書いたところで、手が止まった。
 固定スキルに文字変換があるが、たった今書いたこれは、この世界の人にも読める文字なのではないかと思ったのだ。そこで別の紙に、日本語を意識して同じ文章を書いてみた。二枚の紙を、最初の一文だけ見えるように折り曲げて神父に見せると、最初に書いた方の文字は難なく読めて、日本語を意識して書いた方は読めないとのことだった。俺の予想した通りだった。
 最初に書いた紙は二度と取り出せない異空間に捨てて、神父が読めなかった方を丁寧にたたみ、ポケに預けた。

「じゃあ師匠、さっさと行って、帰ってきます。前に兄ちゃんが掴みかかった人たちがいれば、直接渡していいんですよね? で、いなかったら女将おかみさんに渡せばいいんですね」

 俺がポケにうなずき、よろしく頼むと言うや否や、彼は孤児院の勝手口から出ていった。
 残された俺はこれからどうしたらいいものかと思ったが、それはすぐに解決した。
 ポケに何か言われていたのか、子供らが俺の手を引っ張って食堂に連れていく。そして俺は長椅子に座らされ、子供たちから代わる代わる肩をたたかれたりまれたりと、小さな手によるマッサージのもてなしを受けた。


 小さな手による肩みやいい力加減の肩たたきが心地よくて、思わずあーっとうなりながらマッサージを受けていると、ポケが帰ってきた。

「あ、みんな師匠にマッサージしてるね。偉い偉い」

 ポケは小さな弟分妹分たちの頭をでていく。そんなポケをほほましく眺めていたら、先程食事のときに俺の膝に座った女の子が、俺の指を握って見上げてきた。
 何を言わんとしているか分かった俺は、女の子の頭をでてやる。すると、それを見た他の子たちが女の子の後ろに並びはじめた。ポケにでられていた子らも並び、三十人はいるのではないだろうかという行列ができた。
 その中にはポケがいて、さらに最後尾にはなぜか若い方のシスターもいることに気づき、首をかしげて見つめていたら、シスターは恥ずかしそうにうつむいてしまった。
 子供らに、マッサージが気持ちよかったとお礼を言いつつでていく。ポケの番になったところで、なんで並んでいるのかと聞いたら、師匠の伝言を宿の女将おかみに渡してきたからだと言われ、仕方なくでてやる。
 そしてシスターの番になったところで、彼女にも並ぶ理由をたずねてみると、がんった子は師匠に褒めてもらえるとポケに聞き、自分も料理をがんったから、とのことだった。
 確かに味はともかく、シスター二人だけで総勢三十人と俺の分の食事を作ってくれたのはがんっていると思う。俺が彼女の被っているきんに手を入れて頭をでてやれば、よほど嬉しいのか目を細めて喜んだ。
 そんな彼女の頭をで終わり、立ち上がろうとしたとき、彼女の後ろに再び子供らが並んでいた。もしやこの頭をでる会はエンドレスなのだろうか、と思っていたら、解体を終えた老婆のシスターが食堂に戻ってきて、手をパンパンとたたいた。

「はいはい、もう終わりよ。ミーツさんはお疲れなのだから、でてもらうのは一度だけにしておくの! あらあら、食べた食器がそのままじゃないの。みんなで片づけましょう! そうしたらまた寝る前にでもでてもらえるかもしれませんよ?」

 シスターの言葉で、子供らは一斉にテーブルの上の食器を手に取り、内庭に持っていった。
 内庭を見ると、れいに解体された皮と肉が隅に置いてある。子供たちは井戸の周りに集まり、ポケがんだ水を使って、みんなで笑いながら食器を洗っていた。その姿をまたもほほましく眺めていたら、俺の隣に神父が来た。

「あの子らの笑顔を久々に見ますな。ポケが来た日は笑顔が増えますが、それでもみんなではないですから。……ミーツさん、少々相談に乗ってもらえませんか?」

 神父がそう言うので、俺は彼とともにその場を離れようとする。すると老婆のシスターが声をかけてきた。

「あらあら神父様。ミーツさんにあのことを頼むおつもりですか? でしたら、私もご一緒した方がよろしいでしょうね」

 俺たちは一緒に食堂を退出して、神父の執務室に入った。
 小さめの机と椅子があるだけの執務室は木板がくさっているのか、床がきしんで足が少し沈んだ。神父がそんな床の上を慣れたように歩いて自身の机に手をつくと、彼を中心にそよ風が部屋中に吹き、床のきしみと沈みがなくなった。

「さて、この部屋には薄い結界を張りました。これで、扉の前で聞き耳を立てられることもなくなりましたので、相談に入らせていただきます」

 深刻な表情をした神父はそう言ったあと沈黙し、しばらくして重い口を開いた。



 第四話


「ミーツさん、この街にある孤児院の数は、少なすぎると思いませんか?」
「えと、少なすぎるというと? どのくらいあるのでしょうか?」
「……ああ、ミーツさんも孤児には関心がないタイプの方でしたか。でしたら、もう話すことはありません」

 神父は急にけわしい表情になり、き捨てるように言った。そして、扉に向かって歩き出す。

「シスター、ミーツさんに相談することは間違ってました。今日は食材とたくさんのお気持ちをありがとうございました。今夜泊まられたら早朝、子供たちが起きる前にでもお帰りください」
「あらあら神父様、いつもの悪いくせが出てしまいましたね。そう結論を出すのは早計ですよ。まずはミーツさんの質問に答えるべきではありませんか? ミーツさんは冒険者とのことですし、この国の方ではなく、最近他国から来たばかりなのかもしれませんし」

 部屋を出ようとする神父に、シスターがなだめるように言う。神父は少し考えた後、再び自身の机に戻って話し出した。

「そうですね。確かにあなたの言う通りです。失礼しました、ミーツさん。では、まず質問に答えるとしましょう。孤児院はこの街に、ここを入れて全部で三つあります。しかし、その三つとも満員以上の状態で、路上生活をしている孤児を受け入れたくても受け入れられません。他に孤児院を作ろうにも作るだけの資金と、それを維持するだけのお金もない。ですので、ミーツさんのできる限りのお気持ちでいいので、援助をお願いしたいのです」

 なるほど。神父は俺の寄付した金額や提供した魔物を見て、俺なら援助する余裕があるだろうと考えたようだ。
 俺も孤児を助けたいし、神父の切実な願いにこたえたいと思うが、はたして金銭を援助しただけでこの問題を解決できるのだろうか。

「援助は喜んでしたいのですが、お金だけを渡したところで、焼け石に水ではないですか?」

 俺の言葉に、神父とシスターともに首をかしげる。

「焼け石に水、とは?」

 そうか、これは元の世界のことわざだった。
 俺が、焼けた石に少しばかりの水をかけてもすぐ蒸発じょうはつしてしまうことから、少しの援助ではなんの役にも立たないことのたとえだと説明する。すると、シスターが、このあたりの言葉でいえばゴブリンに香水ですね、と答えた。
 ゴブリンに多少の香水をかけても臭いままだというたとえだとか……
 若干違うと思ったものの、伝えたかったことはどうにか伝わり、神父とシスターは頭を抱えて悩み出した。そこで俺はある提案をしてみる。

「いっそのこと、神父様たちが王都中の孤児を連れて外に出て、畑を作り、自給自足をしてみてはどうですか? もしくは、孤児院にいる子供たちをギルドに登録させて、ある程度大きくなったら働いてもらうとか」

 しかし、神父は難しい顔をして首を横に振った。

「ゾロゾロと孤児らを連れて移動したら、すぐに魔物のじきになってしまいます。それに、へいのある安全な場所でないと魔物に襲われますから、生活していくのも無理です。孤児院である程度育った子は既にギルドに登録させて働いてもらっているのですが、それでも稼ぎは日々の質素な食事代で消えてしまう程度です。多く稼ごうと外に魔物を倒しに行った子らのほとんどは、そのまま帰ってこないか、帰ってきても深い傷を負っていて数日で亡くなります」

 確かに、まだ弱い子供たちが生活をするには、ある程度安全な場所じゃないといけない。当たり前のことだが、食料が手に入るだけではダメなんだな。
 振り出しに戻ってしまい、神父と俺が黙り込むと、突然シスターが声を上げた。

「神父様! 私、子供たちを連れていく場所に心当たりがあります。へいのある場所という神父様の言葉とミーツさんを見て、思い出しました。私が育った村なんですが、おそらくまだあると思います。ミーツさん、その手首に巻かれている布はいつ頃、どうして巻くことになったのか、差しつかえなければ教えていただけませんか?」

 特に隠すことでもないので、最近、裏ギルドの受付にいるパンチという男性に巻いてもらったことを伝えた。

「最近ですか。その男性はおいくつくらいでしょうか?」

 パンチの正確な年齢は知らないけれど、風貌を覚えている限り教えたら、そうですかと一言返ってきたあと、シスターはしばらく考えるような様子を見せ、再び口を開いた。

「その方は、今の時間も裏ギルドにいらっしゃるのでしょうか?」
「今日は休みでどこにいるか分かりません。どこにも外出してなければ、ギルドの寮にいると思いますよ?」
「では、裏ギルドに行っても会えないのですね。このようなことは、早めに行動したいと思っていますのに」

 彼女は明らかに肩を落とした。シスターは一体何が言いたいのだろう?

「あの~、シスターの育った村とパンチは、どのような関係があるんですか?」

 俺は彼女がなんでそこまでパンチが気になるかを聞いてみたら、俺の手首に巻かれた布切れが理由だった。
 彼女の育った村では、家族や大切な人の手首に、自分の布を巻きつけることによって、安全祈願をするという。それで、パンチがシスターの育った村の出身かもしれないと思い、だとしたらいつ頃村を離れたのか、離れたときの村の状況などを聞きたかったそうだ。

「なるほど。シスター、その村は安全なんですか? 近くに魔物は出ないんですか?」
「魔物は出ますが、こちらから近づかなければ、それほど危険なものはおりません。他の魔物も、森の深いところにさえ入らなければ襲われることはないです。といっても、私の若い頃の話ですが」
「それでは、パンチが確実にいるかは分かりませんが、今からギルドの寮に行ってみますよ。それで、もし彼がシスターと同じ村の出身で、今もその村が安全だとしたら、どうされます?」
「そうですね。できれば、孤児の子たちを連れていきたいと思います」

 彼女はまっすぐ俺を見つめて、自身の考えを伝えてきた。それに神父も同意したものの、その村に行くまでの食料や護衛を考えたら実行は難しいと言って、また頭を抱えてしまう。

「神父様、俺の職業を忘れてはいないですか? 俺は冒険者です。俺が護衛をしますし、他にも冒険者をたくさん雇ったらいいんですよ。そのための資金は援助させていただきます」

 俺もできる限り協力したい。神父が希望が見えたような明るい表情になったので、俺はさらに提案をしてみた。

「どうせなら、この王都にいる全ての孤児と、孤児の世話をしてくれる人にも声をかけてみた方がいいですね。その中で移住を希望する人がいれば、一緒に行ってもらうことにしましょう。実はここだけの話ですが、明日、違う世界から召喚された勇者のお披露目ひろめパレードがあるらしいです。それで、いつ頃になるかは分かりませんが、国王は近々戦争を起こすそうです。これはギルドマスターに聞いたことなので、信憑性しんぴょうせいは高いと思います。そうなると、この街も危険になるでしょう。神父様とシスターを信用して話したことですから、くれぐれも他言しないようにしてください」

 俺の言葉に神父は目を見開いたまま、喉をゴクリと鳴らした。シスターも口に手を当てて驚いている。

「では、これからギルドの寮に行ってみますので、部屋の結界を解いてもらえますか? それと、早めに行動するなら金が必要になるでしょうから、ついでにギルドに行って金を引き出してきます。ああ、戦争になるにしても、明日明後日の話ではないと思いますから、まだ時間に余裕はあるはずです。だから、孤児院の子らはもちろんのこと、路上生活をしている子たちも連れていくつもりで、準備をしてもらえませんか? あの子たちも、いい子ばかりです。ただし、移住したら生活環境がガラリと変わりますから、一人ひとりに王都に残りたいか、移住を希望するかを、モブたちにも手伝ってもらって、聞いて回ったらどうだろうと思いました」

 神父は、ありがたい話ではあるが、なんでそこまでしてくれるのかと聞いてきた。

「実は子供が好きなんですよ」

 俺がそう言ったら、二人はクスクスと笑い出した。

「食事のとき、膝に乗ってきたあの子を下ろしていたので、てっきり子供が苦手だと思ってましたよ。それでは、ミーツさんに甘えます。護衛もミーツさんにお任せします。私たちは明日から、ミーツさんにいただいたお気持ちを使って、移動のための食料などを買います」
「いえ神父様、神父様たちは孤児の説得や、移住希望の住人の勧誘に専念してください。じゃあ俺は出ますので、詳しい話は明日以降ってことでお願いします」
「ギルドの寮に向かうのでしたら、私もついていった方がいいでしょうね。ミーツさんが先にギルドに寄られるのでしたら、その間、私はギルドにいる私のお師匠様に挨拶あいさつをしてきます」

 一人でさっさと行ってくるつもりだったが、断れなくて仕方なくシスターと一緒に行くことにする。神父の執務室を退出したら、子供たちとポケが扉の前に集まっていた。

「あ、師匠、中で何を話してたんですか? 全く聞こえなかったけど」
「ふふふ、本当にポケはミーツさんのことをしたっているのですね。中で何を話していたかは、近いうちに分かりますよ。私たちはこれから少し出かけますから、あなたたちは先に寝なさい」

 シスターにさあ行きましょうと言われるが、ポケと子供たちに、師匠も一緒に寝ようよと、悲しそうな顔で見つめられた。

「俺も泊まるは泊まるけど、みんなはシスターの言う通り先に寝てなよ。俺も帰ってきたら一緒に寝るからさ」

 そう言ってポケと子供たちの頭をでてやり、シスターとともにギルドに向かうべく外へ出た。


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