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第5章

第28話

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第28話

「ほんっっとに、ミーツくんって規格外だよね。
あれだけの暴食竜を一人で倒しちゃうんだから!
まあ、でもそれで助かっちゃったんだから、今回は素直にお礼を言うよ。でも次からは、み・ん・な・で倒す練習をするよ」

 焦熱剣との会話が一区切りして、倒した暴食竜をI.Bに収納しているときシロヤマが話しかけてきた。怒っているようだが、感謝もしている言葉になんだか可笑しくて笑ってしまう。


「もー!人の話し聴いてる?ここではもう暴食竜は居ないかもだけど、次の階層に行くためには、危険な所を通らなきゃいけないんだからね!」

 俺が笑ったことにより、彼女は怒ってしまい、危険な所を通らなきゃいけないと言ったものの、危険な道を通らなくても先を進むことができるならば、わざわざそんな危険な目に遭わなくてもいいのではないかと、彼女に質問したら、この階層から上のダンジョンボスまでの道のりは、危険な目に遭えば遭うほどボスが弱くなるそうで、一番弱いボスでゴブリンキングらしく、暴食竜や他の大型の肉食竜を倒すよりも随分と簡単らしい。
 逆に一番強いダンジョンボスはドラゴンやキマイラとからしく、倒した者はヤマトでも少ないらしい。

「これから先の道案内はボクの言うことは絶対だよ!死にたければ訊かなくてもいいけどね!
特にパーティリーダーのミーツくんは、絶対に言うこと聴いてよね!」

 彼女の話は話半分に聴いていたのだが、彼女は念を押すように俺を見上げて、普段はヘソの辺りが目線なのだろうか、ピンポイントにヘソを突ついてきた。

「分かった分かった。言うこと聴くからヘソを突つくなよ」
「ほんと~に分かった?この階層の上は凄く沢山の罠がある階層や、魅了や幻惑が得意とする魔物がいるんだから気を付けてよね」

 彼女はその一言を言うと、突ついていた指を奥まで突っ込んだあと、その指の臭いを嗅いで臭ぁと呟き、俺のヘソの臭いをメンバーたちそれぞれに嗅がせて、はしゃいでいるが、最後に嗅がせた人が悪かったみたいで、うわぁゲロが付いちゃったと、今度は手全体に付いモノをシーバスに擦り付けて拳骨を喰らっている。

「もう!ミーツくんの所為で散々だよ!
ミーツくんのヘソの奥は臭いし、臭いを嗅がせたアマは吐いちゃうしでさ!」
「それはお前の自業自得だ!
全く、うちのリーダーのミーツさんといい、お前といい問題のあるパーティだぜ」
「シーバス!それは聞き捨てならないよ!ミーツくんなら兎も角、ボクは何の問題もないじゃないか!」
「十分お前も問題あるぜ。ミーツさんは強い分、いざとなったら助けてくれるけど、性格に問題があるし、お前も豊富な魔法を使ってくれるけど、うちの妹たちより精神がガキだしよ」
「ミーツくん聴いた聴いた?ボクらはシーバスにとって問題あるってよ。ミーツくんは性格に問題があって、ボクはガキなんだってさ」


 彼女はシーバスに言われてショックを受けたようで、俺の元に来ては俺を味方に付けようとコソコソと耳元にシーバスとの話をしだした。


「まあ、俺の性格が問題あるのは自覚しているし、今更改善しようとも思わないからシーバスに何言われても特に何も思わないかな」
「げっ!唯一味方になりそうなミーツくんが味方にならなかった!それにミーツくんは、自分で性格に問題あるのは自覚してたんだね。ボクは恋人にガキって言われてショックだよ。この冒険が終わったら別れようか」
「いや、その済まない。お前がもう少し年齢に近いくらい、大人になってくれればと思ってだな」

 どう考えても彼女が悪いのに、惚れた弱みでシーバスが謝ってしまった。

「しょうがないなあ、じゃあ今回は許してやろうかな。でも次酷いこと言ったら、お仕置きだからね」
「う、うむ。分かった。なるべく気を付ける」
「話が纏まったみたいだから、さっさと次の階層に向かおうかね。という訳で案内よろしく」


 そもそも彼女はシーバスとは別れるつもりなどなかったみたいで、次酷いこと言ったら別れるではなく、お仕置きするとの言葉に笑ってしまった。 これには他のメンバーたちもクスクスと笑っており、当の本人たちも、なんで笑われているのか気付いていない様子だ。

「なに笑ってるのか分からないけど行くよ!
あと、近くに暴食竜ほどじゃないけど、大きめの奴がいるから気を付けてね」

 シロヤマはそう言ったあと、辺りを警戒しながら歩きだすと、彼女の言う通り、草食恐竜っぽい10メートルほどの恐竜が姿を現した。
 向こうも興奮している様子で、首をグルングルンと振り回しながら突っ込んできたことで、振り回して来る首を刈り取ろうとしたその時、突っ込んできた恐竜の後方から同じ種の恐竜の大群が現れて、刈り取るのを止めて仲間たちを見たら、撤退していたことで俺も一緒に撤退しながら、迫ってくる恐竜の前に想像魔法で大きな落とし穴を作って時間稼ぎをしながら走ると、逃げ切ることができた。

「ハァハァハァ、さ、流石のミーツさんもあれだけの魔物の相手はキツイか」

 なんとか逃げ切った森の中で、シーバスは息を切らしながらそう言ったものの、俺は一人でも多分、戦えたのだが、ここは何も言わずにいようとしたとき、シーバスが妹たちに拳骨をされた。

「兄ちゃんのバカ!おじさんは一人でも戦って勝てるんだよ?でも、あたしたちが逃げたから、戦わずに一緒に逃げてくれたんだ!」
「はわわ、兄様ご、ごめんなさい。でもミーツさんはあの沢山の暴食竜も一人で倒せるだけの実力があるんです!それなのに、仲間にそんなこと言われちゃいましたらミーツさんが可哀想です」
「そ、そうだな。ミーツさん、済まなかった。
妹たちがこんなに怒るようなこと言ったつもりじゃなかったんだが、悪かった」
「ふふん、アマもアミもやるね!二人が拳骨しなかったら、ボクがシーバスに罰を与えちゃってたね。アマとアミが言った通り、全部じゃないけど、ギガ暴食竜を倒しちゃったミーツくんでは、この階層で勝てる魔物はいないと思うよ。
 それが例え大群だったとしてもね。
 大体あの大群から無事逃げ切れたのは、どうやったかは分からないけど、ミーツくんが落とし穴を一瞬で作って時間稼ぎをしてくれたからなんだよ?それなのにシーバスがそんな言い方したら、流石のボクでも怒るよ」


 意外にも彼女たちが味方になってくれて驚いた。

「な~に~ミーツくん、なに驚いた顔してんの?」
「いや、シロヤマは意外と見てたんだなって思って、それにアマだけじゃなく、アミまでシーバスに拳骨をするのは珍しいと思って」
「あわわ、わ、私でもやる時はやりますよ!」
「ふふふ、おじさん、うちの家族で怒ったら一番怖いのアミなんだよ。本当にキレたら手の付けられないんだからね」
「もう!そんなことないもん!ミーツさん、私全く怖くないですからね!」

 アマはアミがキレたら怖いことを言うと、アミはすぐさま否定して、俺が分かったと言うまで詰め寄って見つめてきた。

「あははは、アミ必死だね。ミーツくんは分かったって言ってんだし、そこまで詰め寄らなくてもいいんじゃない?」

 シロヤマがアミにそう言ったあと、彼女はハッとしたのか、俺から離れて恥ずかしそうに顔を手で覆い隠して、チラチラと俺の様子を指の隙間から見つめている。

「ミーツさん、アミちゃんの気持ち気付いているんですよね?同じパーティなんですから、その辺りはハッキリさせた方がアミちゃんの為になりますよ」

 意外にも士郎が耳元でボソリと言って来たものの、彼女の気持ちって何言ってんだと士郎に言ったら、すぐ側で聴いていたシロヤマと一緒になって、盛大な溜め息を吐いた。

「ミーツくんはいつかアミか他の女の子に刺されるよ」
「うん、僕も同意見です。むしろ刺されればいいのに」
「二人とも酷いなあ。なんで俺が刺されるんだよ」
「シロヤマ姉様と士郎さん、なんで私がミーツさんを刺すんですか?」

 シロヤマと士郎が普通に刺されればいいのにとか言うものだから、その言葉を聴いたアミが首を傾げて何で?と二人に詰め寄った。
 しかし、彼らもその理由については口ごもり、いずれ分かると思うと二人揃えて言った。


「しかし、あの恐竜の大群から逃げ切れたのはいいが、ここはやたらと鬱蒼としてるな」

 シーバスの言う通り、逃げる前は日が照って暑いくらいだったのが、木々が茂って薄暗くて微妙に肌寒い。
 このような場所なら、逃げなければいけないような恐竜は現れないだろうと、小休憩をしていたら、人間くらい大きなカブトムシや岩山で襲われた大蛇よりも、大きくて長いムカデなどが現れ、アマとアミに士郎までもが悲鳴をあげて腰を抜かした。

「馬鹿!刺激しちゃったら襲ってくるじゃない!
ミーツくん倒しちゃって!」

 シロヤマが倒せと言った瞬間、俺は焦熱剣を手にムカデから倒そうと斬りかかると、カブトムシの方はヤスドルが飛びかかって、カブトムシの角部分を引っこ抜こうと力を込めるも、カブトムシも暴れて回りの木々に体当たりをして彼を落とそうとするも、踏ん張って頑張っているところ、カブトムシは彼に任せてみようと思って俺はムカデに向き合った。

 焦熱剣が虫ごときに俺様を使うなと怒ってしまったが、焦熱剣しか倒せないとおだててその気にさせたら、焦熱剣も仕方ねえなといった感じでヤル気になってくれて、巨大ムカデの頭を斬って胴体と別れさせたら、胴体はしばらく暴れて動いていたものの、次第に動きが鈍くなっていって動かなくなった。
 カブトムシの方はというと、タイミングよく彼が角を頭ごと引きちぎっている場面を見てしまい、カブトムシ虫の中身を見て気持ち悪くなってしまった。

 具合が悪くなったのは俺だけではなく、腰を抜かしてカブトムシの側にいる先程悲鳴をあげたメンバーも青ざめた顔をして見上げて、アミと士郎は吐いてしまっていて、アマは吐こうとしているのに前ので吐き切ったのだろう、唾液しか出ない。 ヤスドルはというと、やっと倒せたからか、スッキリとした顔をして額の汗を腕で拭いている。

「うん、結果はどうあれ倒せちゃったんならオッケーかな?とりあえず、ミーツくんとヤスドルお疲れ。ここからなら、次の階層までの距離は大してないけど、この森は見ての通り、巨大で厄介な魔蟲(まちゅう)がいるから気を付けてね。
あと、今回みたいに素材を傷付けずに倒せたやつは、ヤマトで良い値で買取してくれるからね」


 シロヤマはそう言うと、ヤスドルに指示を出してカブトムシの硬い外骨格を丁寧に剥いでいる。
俺の倒したムカデは既にI.Bに収納しているため、ヤスドルに指示を出す前に俺の方をチラリと見て残念そうにしていた。
 それからは鬱蒼とした森の中で現れる魔蟲を俺とヤスドルで倒し、魔蟲が苦手なアマとアミは兄であるシーバスが二人を背負い、士郎は具合悪そうにしながらなんとか魔蟲に対する耐性を身に付けて、後ろから行く道を指示するシロヤマと一緒に歩いており、森の中では様々な巨大な魔蟲を倒し、森を抜ける頃には、士郎も戦闘に参加できるようになってヤスドルの手伝いをしていた。

「あー、やっと森を抜けられたね。
夜通しになっちゃうけど、あとちょっとしたら安全に休むことができる所に着くから頑張ろっか」

 森を抜けたことで魔蟲から襲われる緊張感から解放されたことにより、背伸びをしながらシロヤマはそう言い、後方から先頭に移動し、森の中では魔蟲がやって来るため出せなかった光の玉を出して、ここから急ぎめで行くよと言い出したあと、木の実を握り潰して皆んなの肩や腰などに擦り付けたあと走り出した。

 何のための木の実だったかの説明も無しに、急に走り出した彼女を少し出遅れて追いかけるメンバーたちの最後尾に移動して付いて行っていたら、森を抜けても妹たちを背負ってるシーバスが遅れだしたことにより、俺が彼女たちを持っていくことにしたが、二人ともシーバスの背中で眠っていた。

 この状況で彼女らを起こしても付いては来られないだろうと判断して、俺の両脇に挟んで連れて行くことにしたが、両脇に挟む際、二人とも起きたものの、走っている最中だったため、走りながら状況を説明する。説明後二人とも自分で走ると言って走ってくれたが、皆んなの走る速度が速くてすぐに置いていかれそうになって、すぐに再度俺が両脇に挟んで走ることになった。


「おじさん、最後にお風呂入ったのいつ?」
「ん?臭いか?」

 走りながらアマが鼻を押さえてそう聞いてきて、自身で臭いか分からないため、臭いかどうかを聞き返したら、彼女は縦に首を何度も振って頷いた。

「ミーツさんは臭くなんてないですよ。
逆にアマが臭いんです。アマは吐いたあと、そのまま何もせずだからアマが臭いと言っているのは自分自身の臭いなんです」

 アマに言われて自身の肩の匂いを嗅ぐが分からず、首を傾げていたら、すぐにアミが臭いのはアマだって言ってくれた。
 確かにアミの言う通り、アマは吐いたあと、ローブに付着した吐瀉物がそのままで、今は乾いているものの、異臭を放っていた。


「確かにあたしも臭いけど、おじさんもだよ。
それにいくら妹でも失礼だよ!」
「お、意外な事実が発覚したね。アマがお姉さんだったとはね」
「違います!アマが私の後から産まれたって、母様は言ってました。アマが勝手に言ってるだけです」
「違うよ!あたしは父ちゃんに聴いたもん!」

 臭いについてどうでもよくなったのだろうか、今度はどちらが姉か妹かで俺の両脇で口喧嘩をしだした。 正直、どちらでも良い話だが、俺の前を走るシーバスがうるせえと一喝して二人を黙らせた。

「アマ、お前はミーツさんに甘え過ぎだ!
運んでもらっているのに、臭いとか失礼なこと言うなよ!あとで安全な場所に着いたら拳骨だ!」


 シーバスの言葉で黙った二人はお互いに睨み合って、アマがアミの所為で怒られたと言わんばかりに指を差し合っている。
 こうして見ると喧嘩している姿は珍しく、普段から仲がいいだけに良いものが見れたと微笑んでいたら、俺の顔を見たであろうアマからシーバスに聴こえない声量で、おじさんなに笑ってんの!と怒った口調で言われるも、なんでも無いさと笑顔で返したら、脇腹を手の届く範囲でポカポカと叩かれながらも、僅かな光の玉とシロヤマを追い掛けて走り続ける。

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