底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第5章

第32話

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第32話

 階段では文句を言っていたシーバスに、自棄になっていた士郎、魅了状態だったアマとアミも、サキュバスの群れを殲滅したあとに階段に近づいてくる俺を見て、恐怖を抱いているのだろうか、階段の段差に足を上げてのぼった瞬間、ヒィッと声を漏らした。

「ちょっと!みんな酷いよ!ミーツくんはね。
正気じゃなかった皆んなを助けてくれたんだよ?
それなのに、そんな怖がっちゃうなんて…」
「そ、そうだな。ミーツさん済まなかった。
ミーツさんの強いところなんて沢山見てきたはずなんだが、あまりにも……な?」
「ミーツさん!お詫びに僕を殺して下さい!
なんの役にもたたない僕なんて居ても居なくても変わらないだろうし」
「おじさんごめんなさい。おじさんが急に怖くなっちゃって」
「ミーツさんすみませんでした。私はまだ魅了状態なんでしょうか。ミーツさんが途轍もなく格好良く見えます」


 アミだけ目を潤ませて見つめてくるのを見て、彼女の言う通りまだ少し魅了状態なのだろう。
 しかし士郎はどんな幻覚を見せられたのだろうか、殺してくれと懇願してきて、ヤスドルは未だに頭を抱えてぶつぶつと呟いている。

「じゃあ、ちょっと皆んな落ち着こうね。
アミと士郎にヤスドルは正気に戻りなよ」

 それぞれに正気に戻そうと額にデコピンで弾いて当てて行ったが、それでも彼らは変わらなかった。 アミだけが痛いと言いながら額を摩って俯いているところに、シロヤマに抱きつかれて正気じゃなかったときのことを教えてもらうと、真っ赤な顔を手で覆い隠した。
 士郎とヤスドルは未だに、ぶつぶつと呟いて殺してくれと言っているのが聴こえて、二人を手加減しつつ殴り飛ばした。

「士郎!役に立たないから殺してくれとか、ここまで来て言うことじゃないだろ!だったらなんで、ここまで付いて来た?俺と同郷で懐かしくて?それとも、俺が強いから守ってもらえると思った? ヤスドルもだ!ぶつぶつと何を呟いているかと思ったら、士郎と同じように殺してくれって馬鹿か!
 お前をこんなところで殺したら、俺に任せてくれたドスドルに申し訳が立たない。
 お前たちがどんな幻覚を見たかは分からないから、あまり強いことは言えないけど、お前たちが見たのはあくまで幻覚なんだ!
 現実ではないことなんだ!だから気にするな!
俺は士郎が役に立たないとは思ってないし、ヤスドルも頼りにしていると思っている」


 俺は彼らに自分の思った気持ちをぶつけた。
 俺の暴力と言葉にヤスドルは目が覚めたのだろう、頭を下げてすみませんでしたと言ってスッキリした顔になっているが、士郎は階段のところでぐったりと横たわって、身動きをしなかった。

「ミーツくん、強く殴りすぎだよ。
士郎くん白目剥いて気絶しちゃってるよ」

 シロヤマに言われて彼に駆け寄ると、本当に白目を剥いて軽く揺すっても気が付かないのに仕方なく、気が付くまで皆んなで休憩がてら待っていたら、急に目をバチッと覚めた彼は、この階層での出来事であるサキュバスを数体倒したくらいは憶えていたものの、彼の見た幻覚や自棄になっていたことの記憶が無くなっていた。

「いったい、僕になにが起きたんですか?」
「うん。記憶にないならもういいかな。
このダンジョンを無事に突破することができたら、シロヤマにでも聞いてよ」

 この階層で唯一、皆んながどうなったかの全てを見知っている彼女に聞いてと言ったら、アミは彼に自分のことだけ聞いてくださいね!と割り込んで言ってきて、俺の顔を見るとまた顔を手で覆い隠して離れた。

「なんなんだ?アミはどうしちゃったんだろう。
アマ、どうしたか分かるかい?」
「おじさん、そろそろ気付かなきゃだよ」

 彼女が何を言っているのか分からず、何に気付くべきか考えるも、その理由について思い当たる節がなく、仕方なく現状保留ということにして、次の階層についてシロヤマに聞いたら、次の階層は全体的に寒い階層で、広さも中々の広さがあるものの、出現する魔物は冷気を出す魔物が多く、氷雪狼や冷雹ゴブリンに雪毛皮などとといった魔物が現れるらしく、どの魔物も卑怯なことに、温め合っているときや、こちらが油断しているときなどに襲ってくるそうだ。

 強さは大した強さではないそうだが、とにかく寒いらしく、氷雪狼は氷の塊や雪をぶつけてきては体温を奪って体力低下を図って、一緒に行動している冷雹ゴブリンにトドメを刺させるといった行動を取るらしい。
 雪毛皮は中々の強さらしいが、滅多に現れないとのこと。どんな魔物かを聞くも、寒さに強い毛皮に覆われた魔物ってことしか分からなかった。
 彼女は一応、対策となる魔道具は持ってきているものの、凍死しない程度の温かさの魔道具らしい。しかも、その魔道具を使う彼女を中心に半径十メートルほどしか効果がないときたものだ。

 階段のところで話を聞いていたら、サキュバスの階層の通路が段々と暗くなってきている気がしていたら、本当に奥から暗転していき、一番手前が暗くなったとき、シロヤマがこのままでは生きたままダンジョンに取り込まれちゃうと叫んだことで、俺を先頭に皆んな一斉に階段を駆け上がって行ったら、一段一段上にあがる度に冷っと寒くなってくる。

 階段は螺旋階段のように、ひたすら曲がっていて、上がどうなっているか見えないでいたのだが、急に視界が真っ白になって階段が消えた。
 俺の後ろに続いていたアマとアミに士郎が、立ち止まった俺に当たって転倒してしまって、倒れた先は幸いにも固い地面ではなく、新雪のような柔らかい雪で痛くなくてよかったものの、柔らかい雪なだけに動けば動くほど雪に埋まり沈んで行く。

「ミーツくーん、大丈夫~?
ほらほら、ミーツくんが埋まってるからアマとアミに士郎くんはどいてあげなきゃだよ」
「おじさんごめ~ん。あと、士郎さん重いよぉ」
「あわあわ、ミ、ミーツさんの上に乗っちゃった」
「ミーツさんすみません!それにアマちゃんにアミちゃんもごめんね。すぐ退くから」

 俺の上に乗っているであろう、彼女らが退いたことにより、身体が多少軽くなってシーバスとヤスドルの手によって埋まった雪の中から助けてもらった。

「シーバスにヤスドル、ありがとう助かったよ」
「ミーツさん大丈夫か?ぶつかったのが俺たちじゃなくて良かったな。俺たちだったら抜け出せなかったかもだしな」
「仲間だから助け合いは当然」
「さて、ミーツくんも助かったし、これから魔道具を使うからボクから離れないようにしなよ。
場所によっては寒さの温度が全然違うから、下手したら凍死しちゃうからね」


 彼女はいつも使っている杖に、赤いシールみたいな物を張り付けて杖を掲げた。
 魔道具の効果は服を一枚羽織った感じの温かさは感じるものの、俺の場合ローブの下が裸だからか、全く変わらない。

「寒~い!シロヤマ姉ちゃん、何も変わんないよお。寒い寒い寒い!おじさん、一緒に温まっろ!
ん?え?キャーーー、おじさん、なんで中に何も着てないの!」

 他のメンバーたちも寒そうにしながらも、アマが一緒に温まろうと言って、俺のローブの中に入ってペタペタと脚を触りだしたと思ったら、珍しく悲鳴を上げてローブを捲り上げて出てきた。
 それにより、俺の下半身を皆んなに見らてしまい、アミも悲鳴を上げて顔を手で覆い隠すも、指と指の隙間から目が見えている。

「なんでって、言ってなかったっけかな。
燃え盛る炎の中に入って、剣とギルド証以外全部燃えたんだよ」
「え!ミーツくん、まさかボクが貸してたアレも燃やしちゃったの?」

 一瞬、シロヤマがなんのことを言っているのか分からなかったが、すぐに猫耳のカチューシャのことだと思い出して、一緒に燃えたことを言ったら、弁償してと白銀貨十枚を要求され、無事にヤマトに到着したら案内料と一緒に払うと約束した。

 それからはシロヤマを先頭に皆んな寒いと言いながらも、くっついて歩いて行き、激しい吹雪の中、新雪の所は避けて氷の上を歩いていたものの、裸足である俺の足はもう限界を迎えていて、これ以上歩くのは無理だと思い、途中で立ち止まって想像魔法で足元に岩を出現させて岩の上で足を摩っていたら、俺が最後尾だったのもあってか、吹雪の所為で俺の前を歩いていたヤスドルの姿が見えなくなっていた。

 シロヤマと十メートル以上離れたのもあってか、急激に体温が下がった気がして、このままでは凍死してしまうと思って、岩の上に想像魔法で薪を出して火を付けて焚き火をするも、背後から気配を感じて振り向くと、吹雪の中から真っ白なゴブリンが現れて、氷の槍で突いてきたが、間一髪の所で避けることができて滑る氷の上で転がると、今度は背中や顔に氷の塊がぶつかってきた。

【お前さん、俺様は出番はまだか? 俺様の力が必要ならよ、俺様にMPを吸わせて掲げろ】


 焦熱剣がそう、語りかけてきたことにより、剣の言う通りにMPを思いっきり流し込んで掲げた。


【キタキタキタキター!こんな所、俺様が破壊してやるぜー!】


 焦熱剣を中心に熱気を発しだして風が止まって吹雪が止み、青い空が見え、目の前に迫っていた白いゴブリンと同じく白い狼の動きが止まった。
 剣はまだまだこれからだぜー!と言いながらも、熱気の熱さは強くなっていき、地面の氷が溶け始めて所々にヒビが入り出したことにより、このままでは不味いと思って、未だに熱気を出し続ける剣を一旦鎮めようとI.Bに仕舞った。

「ちょっと!ミーツくん何があったの!」

 晴れた空には徐々に雲が現れて雪が降りだしてきて、吹雪となる風が止んでいることはありがたいものの、ヒビ割れて溶けかけている地面の氷の状況に俺から随分と離れていた仲間たちが引き返してきて、俺を中心に白い狼とゴブリンが取り囲んでいるのを見て何があったか説明を求められるも、先に魔物たちを倒すのが先決だと思って、拳で取り囲んでいる魔物たちを殴り倒してI.Bに収納してから、この状況に至るまでの説明すると、シロヤマは溜め息を一つ吐いて、マジックバックから靴を取り出して渡してくれた。


「ありがたいけど、シロヤマの足のサイズと俺のサイズでは大きさが違うから遠慮するよ」
「これは、どんな足のサイズの人でも履ける物だからミーツくんでも大丈夫だよ。それに、例えボクの替えの靴だとしても、裸足よりはマシでしょ?」


 確かに彼女の言う通りで、氷の上で歩くうえで裸足よりはサイズの違う靴はつま先だけでも履ければ違うだろう。
 しかし、彼女が渡してくれてのはフリーサイズの靴だと言う、どういうことだろうと思いながら渡された靴に足を差し込んでみたら、どう見ても彼女の足のサイズの靴だったのが、見る見るうちに靴が大きく広がって、俺の足を包み込んでサイズが変わった。

「おー、面白いね。こんな靴があるのか」
「ヤマト産のだよ。って悠長に話してる場合じゃないね。地面の氷が溶け出しているから、早めに進むよ。言っておくけど、その靴代も後で請求するからね!」

 シロヤマも地面の氷が溶け出しているのを気付いて、走りながら話す。俺は走りながら先ほどI.Bに仕舞った焦熱剣を取り出したら、焦熱剣はいきなりI.Bに仕舞ったことによる怒りをぶつけられてしまった。

【てめぇこんにゃろが、いい所で俺様を仕舞うとはどういうことだ!いくら、俺様が認めた主でも気持ちよく力を使ってるときに何てことしやがるボケが!】
「いや悪かったよ。でも、あのままだったら、この溶けかけている氷が完全に溶けて足場が無くなっていたと思うよ」
【そ、そんなの俺様は分かっていたぞ馬鹿が!】
「はいはいはい、分かった分かった。じゃあ、今回は俺が悪かったということでいいよ。ごめんね」

 焦熱剣は自分のやったことの非を認めない様子に、こちらから折れてやって謝ったことで、今回は仕方ねえなといった感じで機嫌が直った。

「ちょっと!ミーツくん、なに一人でまたぶつぶつと喋ってるの!吹雪が止んでも雪は降ってるし、魔物たちも、いつ襲い掛かって来るか分かんないんだから、周りに警戒してよね!」
「シロヤマ姉ちゃん、おじさんはまた一人で剣と話してたんだよ」
「ふふふ、こんな状況でも剣と話すミーツさん可愛いです」
「ミーツさん、剣と話すなとはもう言わないけどよ、時と場所を考えてくれよ」

 焦熱剣と話しているところをシロヤマに怒られて、シーバス兄妹に未だに信じて貰えてない焦熱剣との会話を弄られてしまった。
 士郎は言葉を発してないが、残念な人を見るような目で見てくるし、ヤスドルは我関せずといった感じで、辺りを警戒しながら黙って走っている。

 こんな緊張感の欠片もない空気の中、魔物の方も隙があると思ったのか、吹雪のときより丸見えな状況で襲い掛かってくるが、警戒していたヤスドルの手によってゴブリンは倒されるも、狼の方はヒラリと躱して遠くに逃げては、野球ボールほどの荒々しい形の氷の塊をぶつけて怯んだ隙に近寄って攻撃をしてくる。

「だー!性根の腐った攻撃をしてくる狼だな!
攻撃を当てようにも逃げやがる!
こんな相手、どうやって倒すんだよ!」
「もうシーバス、ミーツくんの所為で氷が溶けているんだから、立ち止まって戦っている暇なんてないんだよ」
「でもよお。このままじゃ、俺はよくても俺の妹たちと愛する恋人が、被害に遭っちまうよ」
「んもう、シーバスったら、愛する恋人だなんて、そんなことこんなところで言わなくても分かっているよ。だ・か・ら、あんな氷雪狼のことは無視しちゃってよ。それよりも、この先で現れる魔物の警戒をしてよ」
「この先ってまだ何か現れるのか?」
「うん。雪毛皮だよ。とんでもない怪力で、大きな雪玉を投げ付けて来たり、転がしてくるから、こんな小物を相手してる場合じゃないからね。
 滅多に現れないけど、一応警戒しててよね」

 シーバスとシロヤマの会話を背後で走りながら聴いていたら、雪毛皮という魔物の話になって、雪毛皮の攻撃方法を聴いて、対処方法は焦熱剣で雪玉ごと斬るしかないなと考えながら、未だに溶け出している地面の氷の上を滑って転びそうになりながらも、最後尾にて彼女らに付いて行く。




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