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第6章

第17話

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「今回、貴方のそのギルド証でのランクアップは認められません。蒼紅からの紹介もギルドマスターの権限によって無効にされてます」

 アマと共にランクアップのための長い列を並んでようやくランクを上げるための手続きをしようとしたら、受付にてそう言われてしまった。 しかも紹介も無効となっていることに憤りを感じるも、どうしようもないことで直ぐに落ち着きを取り戻して、どうしたらいいか分からないといった感じの彼女と共に、せめて今更I.Bに入れて貯め込んだ魔物の死骸の買い取りだけでもしてもらおうと買い取り所に行ったら行ったで、下の大陸での魔物は多くの病原菌を所持しているとかで買取が出来ない物や、安めに買い叩かれる結果となった。
 だが、上大陸でも珍しい数点の魔物は喜んで買取してもらうことができて、まだ良かったといえる。
 その辺りは事前に姐さんに聞いていたため、ある程度は覚悟していただけにショックは低いものの、この国に来る時のダンジョンで手に入れた暴食竜などの素材は高値で売れて、全体の半分ほどを売却した。
 後々、二本の魔剣に手伝って貰いながらも、一人で倒しまくった他の恐竜やドラゴンなどの魔物や魔獣は、暴食竜で高値で売れたことで問題になりそうだと考え、今度は商業ギルドとなる場所に持って行ってもいいと考える。

「おじさん元気だして、ランクアップは出来なかったけど、これから頑張ればおじさんなら簡単に上がるよ。あたしたちも手伝うからさ。それに、素材売って一気に大金持ちになったじゃん。それに、仮面さえ被れば、あたしたちと一緒のランクなんだしさ」

 そう言葉を掛けて慰めようとする彼女に、無理に慰めようとしなくて良いよと返す。

「無理になんてしてないのに…。
 まあいいや。おじさん、気晴らしも兼ねてあたしの依頼を手伝わせてあげる」
「どっちにしろ、アマがいないと帰れないから別に良いんだけど、そうだね。八つ当たりに魔物を倒しまくろっかな」

 そう言ったら彼女は、そおっこなくちゃと満面の笑顔で腕を引っ張ってきた。
 腕を引っ張られながら彼女に付いて行った先は魔法陣がある部屋ではなく、フロアの一番隅っこにあるエレベーターで、押しボタンは一つしかなく、それを押したら勢いよくエレベーターが落下して絶叫アトラクションかと思うほどの重力が身体に乗しかかり、アマの身体が宙に浮いた。

「キャー!これこれこれ、楽しー!」

 彼女は楽しそうに叫び声を上げている中、俺は元の世界でも絶叫系は平気で、度々空を飛んだり落ちたりを繰り返していたため、この程度ではなんとも思わなくなっていた。
 落下もある程度したら、ゆっくりとした速度になって、彼女は宙に浮いた身体は地に足がつき、俺は初めから最後までエレベーターが止まるまで普通に立っていたら、先程まで楽しそうに叫んでいた彼女が頬を膨らませて睨んでいた。

「もう!おじさんなんで平気なの!
おじさんが慌てる姿を期待してたのに」
「なにを今更…。この程度は俺の世界では序の口のアトラクションだし、この世界でも飛んだり落ちたりしてるし、たかが数十秒程度の落下なんかどうってことないよ」

 彼女は俺が慌てる姿を想像していたのか、頬を膨らませて怒ったものの、俺の平気に答える返答に残念そうに俯いて直ぐに気を取り直し、肩に掛けていた鞄から黒い玉を取り出して宙に浮かせて、さあ先に行こうと俺の腕をを引っ張って行く。

 ギルドの地下は俺が捕まった時の地下よりも広く、通路一つ取っても、暴食竜が二体並んで向かってきてもまだ余裕があるくらい広い。
 壁はよく見るレンガ調で、しばらく何もない通路を一方的に話しかけてくる彼女の話を聞きながら歩いていたら、壁が剥き出しの土になった通路に変わり、目の前に俺の知ってるオーガより二回りほどの身体が大きく、所々に古傷を負ったようなオーガが通路を塞いで雄叫びを上げていた。

「うーん、運が悪いなあ。初っ端からエルダーオーガかあ。おじさん気を付けてね、エルダーオーガっていう中々凶暴なオーガだからね。
大きな魔法を使うから時間稼ぎを頼んだよ」

 オーガを見た彼女は苦そうな表情をしたあと、俺の背後に回り込んでぶつぶつと詠唱を唱え出す。
 俺はこれくらい、一人でも倒せると思うが、彼女の出番を台無しにするのもどうかと思って、巨大な拳を振り下ろしてくるオーガの拳を彼女を抱き抱えながら避けては、時々シールドを張りつつ、言われた通り時間稼ぎに徹底していたら、彼女から声が掛かった。

「おじさん!いいよー。行っくよー。
ファイヤードラゴン」

 そう彼女が言うと、前にドズドルが出した炎の竜より小形の竜がオーガを襲った。
 オーガは竜を攻撃するも、炎で出来た竜は実体がないため、繰り出すオーガの攻撃は無効化されていって苦しみながらも焼かれていき、時間と共に段々と炎の竜が徐々に小さくなって消えた。炎の竜に焼かれてもまだ瀕死の状態だが、息があるところを見ると、中々の生命力であることが分かる。

「あちゃ~、やっぱりこれだけじゃあ倒しきれなかったかあ。いつもならアミも居て、兄ちゃんかシオンさんに手伝ってもらってるから、これで倒せるんだけどねえ」

 彼女はそう言いながら、全く攻撃をしてない俺をチラリと見て、ここは俺がトドメを刺すターンだなと理解して、瀕死状態のエルダーオーガにI.Bから取り出した焦熱剣で胴体を真っ二つに斬り裂いて倒した。

「おー!おじさん。久しぶりだけど、全く衰えてないね。おっと回収しなきゃ。ここの部分はダンジョンだから直ぐに吸収されちゃうんだよね。定期的にこうやって倒して、ダンジョンに吸収される前に取って置かないとダンジョン自体が広がっちゃって、更に強い魔物が湧き出すらしいんだ」
「へえ、そうなのか。この程度ならまだ弱い部類に入るし、強い魔物ってのがどんなのが出るのか興味が出てきたな」
「ダメだよおじさん。本当に不味いんだって!
なんなら放置しちゃうと、魔物同士で倒しあってダンジョンを強化しちゃったりするんだからね。このダンジョンであたしが一番強いと思った魔物はね、パーティ皆んなで戦った二つの頭の赤と青の竜だったよ。流石のダンク姉ちゃんでも簡単に近づけなかったんだよ。って、次のがやってくるよ」

 一番強い魔物が竜だと聞いてガッカリしたものの、次の魔物がやってくると言う彼女より先に気付いていた気配の魔物が視界に確認出来た所で、焦熱剣投げ飛ばして一刀両断してそのままにして置いたら、30秒ほどで地面に吸収された。 魔物はエルダーオークと呼ばれるものだったらしく、そのオークの睾丸は状態の良い物だったら、高値で引き取って貰えるとかで、放置して吸収される時、彼女は残念そうにしていた。

 ダンジョンに吸収されたオークの所に新たな魔物が出現するも、その魔物は獅子の胴体に蠍の尻尾、蝙蝠の翼に人の顔を持つマンティコアという魔物で、現れると共に複数の炎弾を放ってきた。

「もうおじさんの馬鹿あああ!あんな強い魔物が現れちゃったじゃん。ダンジョンの広がりを止めるのと、魔物討伐とその回収が依頼なのにあんなのが出ちゃったら、あたしが責められるんだよ」

 彼女は屈み炎弾を避けながらそう叫んだ。
 俺に向かってくる炎弾は焦熱剣が高速回転して全てを吸収し、マンティコアは新たに取り出した凍結剣によって斬り倒してI.Bに収納した。
 二本の魔剣を出したことにより喧嘩をし始めるものの、黙って二本ともI.Bに収納した。
 後で小言を言われるだろうが、仕方ないと思って想像魔法で出した、ただの鉄の棒を手にする。

「おじさんおじさん、今のもう一つの剣はなあに?また皇族の人にもらったの?いいないいなあ。あたしも欲しい杖があるんだけど、滅茶苦茶高いんだよね」
「違うよ。あれはダンジョンで手に入れたんだ。でも自我があって、しかも焦熱剣と仲が悪いからいつも喧嘩するんだ。
 だから後で小言を言われるだろうけど、今はうるさいから直ぐに仕舞ったんだよ。
 欲しい杖は節約して貯めるしかないんじゃないか?それか、報酬の良い依頼を受けまくって買うか」

 彼女は景気良く俺が買ってやると言われるのを期待していたようで、思ってた返答と違うと頬を膨らませて、ほら次行くよと一人で先に進み出す。
 エルダーオーガやエルダーオークにマンティコアを倒したあとは、しばらく魔物が現れることもなく、通路を進んで行く。次第に枝分かれしていく通路の先々で誰かが戦っている音が響いていた。

 そして、先に聞いていた通り、地下全てがダンジョン化している訳ではなく、レンガ調の壁と土壁が所々入り混じっており、時々ダンジョン化してない所に宝箱や魔物の死骸があったりしてゲームみたいな所だと思いつつも、それらの回収も依頼としてしなければいけないらしく、ボロボロに朽ち果てた死骸や宝箱ごとの回収に、前に通った冒険者の使用したであろう焚火やゴミの残骸などを回収しながら進んでいたら、俺たちの前で戦う冒険者がパーティがいた。

「げえ、面倒な奴がいたよ。おじさん、あの人のことは無視していいからね」
「誰なんだ?なにか因縁があるとか?」
「いいのいいの。あたしたちがこの国に来て、結構すぐにSSランクになったことで僻んで絡んでくる奴らだから気にしないで。
 それに、ちょくちょくアミとあたしをパーティ加入に誘っては絡んでくるんだよ」

 彼女の言う通りなら、今回もちょっかいを掛けてくるだろうと予測できる。それならばと、今来た通路を引き返して別の通路に行こうとした時、先程まで戦っていた者から声を掛けられた。

「おや~、そこにいるのは愉快な仲間たちのアマじゃないか。やっと俺さまのパーティに入りたいと思ってここまで来たのかあ?」
「は?頭に蛆でも湧いてんの?死ねばいいのに。あたしがアンタのハーレムパーティに入るわけないじゃん」
「いやいやいや、そんな照れ隠しをしなくてもいいんだよ?いつもいる筋肉のオカマ野郎や、妹たちより弱い兄を見限ってきたんだろお?」

 そう彼女と話す彼の言葉に聞き捨てのならない言葉に、俺が彼女の前に出た。

「キミに一つ聞きたい。今言ったオカマ野郎とは誰のことを言っているか聞いてもいいかな?」

 俺の思っている人でないならいいが、もし姐さんのことを言っていたら、力ずくで謝らせて今後関わらせないようにしようと思ってそう言った。

「はあ?なんなんだこのおっさんは!ってぷぷぷ、よく見たらBランクかよ。アマ、お前おっさんに寄生されてんのかよ。
 ってことはこのおっさんも愉快な仲間たちのダンクの仲間か!
 あーはっはっは、あのパーティはアマとアミ以外おっさんばっかだな。それに、あのパーティはダンクのカマ野郎とオーガもどきさえなんとかできれば大したことないからな。
 あとは魔法が得意なアマとアミを手中に収めれば崩壊するんじゃね。あとは、ほとんど居ねえ崩れ騎士に子育て中のカマ野郎だけだもんな!ははは」
「おじさん殺しちゃダメだよ!」

 彼が姐さんのことをカマ野郎と言った瞬間に俺の気持ちが昂って、殺そうという気持ちが一気に溢れ出したことにより、アマが殺したらダメだと背中を引っ張るも、今の感情を抑えることなど出来ず、俺が睨む彼は苦しそうに咳をしだした。

「こ、、この野郎!なんて殺気を放ちやがる!」
「おっと、この程度の殺気で苦しむなんて、見た目通りの実力者じゃないみたいだな。
 また俺の仲間たちを馬鹿にしたら殺す。
 いや、下手に殺したら罪に問われるかも知れないから、半殺しが打倒かな。
 つまり、この半ダンジョン内だったら君を痛め付けても問題ないよね」
「おじさん!ダメだったら!このダンジョンはね、まだダンジョン化してない部分の所々に、監視魔導具が設置しているんだよ。
 それに、ずっと浮いて付いて来てる玉も記録用だから、あたしたちの行動が記録されてるんだよ。ほら、あっちも同じのが浮いてるでしょ?」

 そう彼女に言われて、彼女が地下に降り立って最初に取り出して浮かせた玉の存在の意味がやっと分かった。
 それに、彼女の言う通り、向こうのパーティの頭上に同じような玉が浮いている。
 彼女は続けて、戦うならギルドの闘技場で戦った方が色々と得だよとも付け加え、怒りに身を任せて一方的に痛め付けてやろうという気持ちを落ち着かせるために、深い深呼吸を何度も繰り返して、最後に自身の頬を両手で叩いて気持ちを落ち着かせた。

「なるほどね。という訳で、君も強目の殺気を当てられて腹立っているだろうし、闘技場というところで戦おうじゃないか」
「乗ってやろうじゃねえか!ただし、賭けの対象はアマとアミだ!それに加えて、低ランクのテメェが俺さまに刃向かった罰として、土下座だあ!」
「人を賭けの対象にしたくないけど、この場合はどうしたらいいのかな?」

 相手がアマとアミを賭けの対象に選んだけど、この場合はどうたらいいのか賭けの対象者である彼女に聞いたら、満面の笑顔で大丈夫と親指を立てた。向こう側の賭ける物は、彼の仲間の女性全員とのこと。

 最初にアマがハーレムパーティと呼んだこともあって、向こう側の仲間たちは彼以外全員女性で、彼を入れて全部で六人だが、此処では六人ってだけで、地上に上がればもっといるのだとか。
 これは賭けて大丈夫なのか心配になるものの、正直、要らない人を賭けられても困ることで、一旦賭けの対象は俺の場合は保留ってことにして決定した。

「チッ、胸糞悪くなっちまった!テメエ逃げんじゃねえぞ!あとでギルドを通して、正式に決闘状を申し込むぞ」
「望むところだ!俺の仲間たちを馬鹿にした君のことは絶対に許さない」

 彼の言葉に俺はそう言って、元来た通路を引き返して彼女と共に同じエレベーターを使って地上に戻った。元に戻ったら一緒に付いていた玉はフラフラっと何処かに飛んで行って、アマは玉が飛んで行った方を確認後に同じ方向に行って、俺もそれに同行した。




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