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第6章
第16話
しおりを挟む食事が終わって一息付いてから、ギルド本部で連れて行かれてからの出来事を話した。
「ミーツちゃん、その別のギルド証を使う時は、あたしたちと別行動を取るのかしら?」
「そうだね。俺は早めに今よりもっと強くならなければならないみたいなんだ。だから、この国に超難関のダンジョンとなる場所を単独で踏破しなければならないようなんだ」
「なんか、仲間なのに寂しいな。俺たちはミーツさんを慕ってミーツさんの帰りを待っていたし、ここまで来たっていうのにな」
「そうだよ!兄ちゃんの言う通りだよ!
あたしも、おじさんに追い付いて行けるように頑張るから置いて行かないでよ!」
「そ、そうですアマの言う通りです!一度でも足手まといになったら、その時は置いて行って貰っても構いませんので、行ける所まで連れて行って下さい」
「ふん!ミーツ、お前が既に俺やダンクより強いことは分かっているが、俺をあの国から連れ出した責任があるだろうが。
アミの言う通り俺が足手まといと感じたら、その時は好きにしたらいい。俺もお前の足枷になるのは御免だからな」
「俺、ミーツさんの行くとこ、行く」
「普段ほとんど話さないヤスドルちゃんも、ミーツちゃんのことになったらこう言うんだもの、皆んなミーツちゃんを慕ってここにいるのよ?だから、今度簡単なダンジョンに連れて行って、実力を見てから付いて行きたいと願うメンバーと、ミーツちゃんが挑むダンジョンに実力が伴って合っているメンバーだけ連れて行けばいいわ」
俺は良い仲間たちに恵まれているようだ。
他の冒険者パーティがあまり知らないというのもあるものの、彼らが俺に付いて行きたいと願う言葉に目頭が熱く感じる。
そんな時に控えめに士郎が手を上げた。
「なんか、一致団結しているところ申し訳ないですけどミーツさん、どちらの時にパーティとしての活動をするんですか?仮面を付けている時ですか?それとも、付けてない時ですか?
僕は正直、暮らしに不自由がない程度に稼いで、アキラを育てていけたら良いと思っていますので、全体のパーティとしての活動の時のみ付いて行きたいと思います」
申し訳なさそうにそう言う士郎に姐さんが、士郎の頭を撫でながら「それは全く問題ないわよ。付いて行かないからといっても、仲間はずれなんかしないわ」とそう言いながら俺に向かって微笑むことで、慌てて俺も姐さんの言う通りだと言って、追加でそのうち新たに仲間になった者がいたとしたら、士郎と同じように付いて行きたくないと願う者はその通りにし、他のメンバーみたいに付いて行きたいと願う者はできるだけ連れて行くとこの場でそう宣言した。
「はい!これでこの話は終わりね。でもミーツちゃん、その仮面は危険ね。仮面被っている時のミーツちゃんは、ミーツちゃんだと認識できなかったんだもの。
あの時はピリピリしてたから、不意に背後から近付いてきたから手が出そうになったわ」
「なるほど、それじゃ全体のパーティとして活動するときは仮面を付けて、それ以外は外してようかな。本部のギルマスには仮面を被っている時に一人で活動しろと言われたけど、結局前から持ってるギルド証でも紅と蒼の紹介の証があるから、同じランクになれるはずなんだよね。だから新たに貰ったギルド証と前から持ってる物では同じランクってことになるはずだからね」
俺はそう言ったのち、同調の話題になって、同調についても一緒に話していたことで最初にリアクションと口を開いたのはアマだった。
「え~、それじゃあ、おじさんはその同調っていうの?スキルを使えば、あたしたちの心の中が見えるの?」
「いや、同調を使う時は同意を求めようと思うよ。誰かれ好き勝手に使っていいスキルじゃないと思うしね。確かに俺の想像魔法との相性は抜群に良いだろうけど、まだ誰にも使ったことないから、今のところ使ったらどうなるかは分からないから、検証は必要だと思う」
俺がアマの質問に答えたら、同調について話し出した辺りから、アミが俯きながらぶつぶつと呟き出して、何を呟いているのだろうかと耳を傾けたら「告白チャンス?いやでもこんな告白していいの?いやダメよアミ、自分に甘やかさないで自分の口から言うの!」と、他のメンバー同士の同調が可能だと思っているのか、繰り返して呟いているのをソッとしておいて、メンバーの誰かに試させて欲しいと頼んだら、皆んなどうなるか分からないと戸惑っている中、仕方ないなあっという感じで姐さんが手を上げた。
手を上げた姐さんの元に行って頭に手を乗せて一言、行くよと言って同調を使ってみたら、姐さんの頭の中はシオンばかりだった。
これは想像魔法で何を出したら良いのだろうかと少々悩んだのち、姐さんの想像する姿のシオンの生写真と等身大の人形を出してみた。
「あら~、本当にあたしの考えていたことが分かったのね」
「お前の考えていることくらい、ミーツじゃなくても分かるだろ!」
「あらあらシオンちゃん、それは違うわ。
あたしは表面的にシオンちゃんのことを想像したけれど、深層的な気持ちは別のことを考えて想像してたもの。それはミーツちゃんも読めたかしら?それを読めたのにこっちを出したのなら、凄いけど怖いスキルね」
姐さんが深層的にどんなことを考えて想像していたかは分からないが、表面的な想像しか読み取れなかったことを話したら、ヤスドル以外の皆が一斉にため息を吐いた。
「アミちゃん良かったわね。次はアミちゃんが同調されたら良いんじゃないかしら。ミーツちゃん、次はアミちゃんにしてちょうだい」
ため息を吐いてホッとした表情だったアミだったが、不意に姐さんによって指名されたことによって、首が取れるんじゃないかと思うほど横に振って目を回しながら無理ですを連呼した。
それでは他に同調を使われてもいいという人はと聞くも、ヤスドルとシオン以外の他のメンバーの誰もがこちらを見ずにいたところ、シオンが仕方ないという感じで手を上げた。
それにより、シオンの頭に手を乗せて同調を使ったら、何も考えていないのか、真っ白な色しか見えなかったものの、しばらく頭に手を乗せたまま待ってみると、一本の剣がじわじわと姿を現した。
剣は飾りや凝った彫り物などが一切ない武骨な剣だが、剣を眺めている彼が懐かしそうに見ているのを同調で見て、彼が思い浮かぶ剣を想像魔法で出してみると、二メートルはあるのではないかと思うほどの大剣が現れた。
それを彼は手に取って、またこれを手にすることが出来る日がくるとは思わなかったと言い、同調が終わったあとの俺にありがとうと礼を言って彼にとっては珍しい行動である抱擁をして来た。
「はい!はいはい!次、次私お願いします!」
俺とシオンとの抱擁中に次に手を上げたのはアミだった。アミは俺とシオンとの抱擁を引き剥がそうとシオンの身体を引っ張って抱擁を無理矢理終わらせた。
「ふ、アミが思っているようなことじゃないんだがな。まあいい、ミーツよ。最後にありがとうとだけ言わせてもらおう」
彼はそう言うと、鞘を作りに行ってくると言って先に店を出て行った。
何故か鼻息が荒いアミは、俺の顔を見て真っ赤な顔をして動揺し出す。
「あわあわ、私はシオンさんに妬いてなんてないです。でもでも…」
彼女は動揺し、俯いて黙ってしまったことにより、熱があるのではないだろうかと考えて彼女の額に手を当てて熱を測るも、少し熱いかなっという感じで、あまり分からないことから自身の額を彼女の額に直接当てたら、ただでさえ真っ赤な顔で辛そうな彼女はぷしゅ~っという声と共に後方に倒れそうになったことで、咄嗟に抱き支えた。
「あらあら、アミちゃんったら、普段言い寄ってくる男の子たちには冷たく足払っているのに、ミーツちゃんが近付いただけでそうなるなんて、本当にミーツちゃんのこと好きなのね」
「姐さん、何言ってんだ。アミは熱があるから辛いんだろ。
なんか、俺と再会してくらいから顔が赤かったから、多分風邪でも引いているんだと思う。それに、アミが好きなのはヤスドルだろ」
姐さんの言葉に反応して答えたら、ヤスドルを除いた全員が一斉にため息を吐いた。
「ミーツちゃん、アミちゃんの気持ちを分かってて、そんなこと言っているの?冗談で言っているなら酷いわ」
「ホントだよ。ダンクさんの言う通りだよ。おじさん、本当にアミの気持ち分からないの?」
「俺は妹の幸せを考えて、ミーツさんは止めた方がいいと普段から言っているが、ミーツさんがこうだとアミがちょっと可哀想だな」
「本当にミーツさん、一度で良いんで馬に蹴られて下さい。僕は非力だから、ミーツさんを叩いても大してダメージを与えられないだろうし」
「…カレー食べたい」
ついさっき食べたばかりなのにもう腹が減ったのだろうか、ヤスドルがボソリと呟いたものの、他のメンバーはそれぞれ俺のことを非難する言い方に、俺の何が悪かったか頭を悩ませるも、それが分からずにいたら、姐さんがアミに向かって「此処でハッキリと告白しなきゃミーツちゃんは分かってくれないわよ」と俺に抱きかかえているアミに言うと、彼女は恥ずかしそうに顔を手で覆い隠したものの、すぐに手を退けて真面目な表情になって俺の支えてる手から離れて俺に向き合った。
「ミーツさん!初めて会って助けて貰ってから短い間に色々ありましたけど、私はミーツさんのことを異性として好きです!恋人同士になりたいと思ってます」
彼女はそう言ったあと、あわあわと動揺しだして姐さんに抱き付いて、姐さんの胸に顔を隠した。
どうやら彼女が今まで好意を寄せていたのはヤスドルではなく、俺だったことに驚きを隠せないでいる。
今までの人生で愛の告白なんてされたことが無いことで、彼女の突然の告白に顔が熱くなって、心臓の鼓動も早くなっていく。
俺の半分ほどしか生きてない彼女に告白されて動揺を隠せないし、どう答えたらいいか少し悩む。
「そうだったのか。女の子から告白するなんて、とても勇気が必要だっただろうに、告白してくれてありがとう。
でも、返事は今じゃなくてもいいかな。
真剣に考えたいし、年も親子ほど離れているのに俺で良いといってくれているアミには今度は二人っきりで話したいと思うし」
俺は真剣に考えるつもりで、そう返答したところ、姐さんに抱き着いているアミはモジモジと俺に向き合って一言「はい」とだけ言った。
「今、ミーツちゃんの返事が聞けないのは残念だけど、真剣に考えてくれるだけ可能性はあるのかしらね。アミちゃん良かったわね。
じゃあ此処で解散としましょうか。この店の支払いは、今までリーダー代行だったあたしがしておくわ」
俺の答えに姐さんがそう言って、この場はお開きになり、退出する際、最後に残った姐さんが部屋の壁にギルド証を翳していた。
なんでも、この国での人たちは、キャッシュレスの生活が当たり前らしく、買い物などの支払いは冒険者はギルド証で、冒険者以外の人は、通信機や住民カードと呼ばれるカードでの支払いで買い物が出来るようになっているらしい。
だから、ヤマトではいちいち金貨や銀貨などの貨幣が必要ないのだとか。
この国での貨幣を持つ者は、余程の古い者か、辺境にいる者以外は使われないようだが、一応ヤマトの貨幣はあるにはあるのだとかで、主に商人ギルドで取り扱っているようだ。
他にも下大陸で稼いだ貨幣や金などの鉱石での買取は下の大陸ほどの価値はないそうだ。
だからといって、そういったヤマトの貨幣は他国からの観光客や冒険者などの短期間しか滞在しない人たちは、買わなくても良いようで、その国々で使われている貨幣で買い物が出来るものの、物価が他所の国々に比べると少々高いため、多めに支払わなければならないのだとか。
俺はこの国で新たなギルド証を手に入れたばかりなものの、最初から持っているギルド証には金貨などの報酬をグレンが入れてくれた分しかないため、大した買い物が出来ないであろう。そして、この国で買い物するときの貨幣の呼び方はP(ポイント)と呼ぶらしい。
説明を聞きながらも、Pについて詳しく聞いたところ、Pは元の世界での円と同じとみていいようだ。
一通り、この国での買い物の仕方やPの話を聞いたところで、商人ギルドという聞き慣れないことを聞いたところ、商売をする商人による商人のためのギルドで、仕組み自体は冒険者ギルドとほぼ変わらないそうだが、商人ギルドは年に一度納める金が必要だそうで、ランクが上がるにつれ、納める金額が上がるのだとか。
その代わり、高ランクで多くの金額を納めた商人は、貴族街での商売が出来たり、貴族の屋敷レベルの商店を持てたりと、優遇される点が多いそうだ。
下大陸でもその影響はあって、下大陸では商人ギルドの数は少ないものの、高ランクの商人ともなれば、信用度が増して王族との謁見も容易くなり、王族相手の商売もできるそうだ。
「そうそう、最後に言っておくけどね。
冒険者ギルドと商人ギルドは物凄く仲が悪いから、依頼人が冒険者ギルドとしての依頼と商人ギルドの人たちが被っちゃった場合はなるべく、一緒に行動しない時間帯で活動することをお勧めするわ」
商人ギルドについて姐さんは最後にそう付け加えて話して、これから寄る所があるとかで店を後にして行った。
俺も店を出た所で、姐さんはもちろんのこと、他のメンバーたちの姿が無いことに気付き、俺が今何処に居て、何処に行けば宿に辿り着けるか分からないことに気付いた。
「え、これって俺どうしたらいいんだろう」
独り言を呟くも、辺りには店の前で佇む俺をジロジロ見ては通り過ぎる通行人に宿の場所を聞こうにも、宿の名前が分からず、とりあえずのところ佇んだところで店に入る客の邪魔になると思って、大きく目立つギルド本部を目指して歩きだす。
店が本部の近くにあったことで、難なく直ぐに着くことができて中に入ったら、出て行く時は仲間たちと一緒だったからよく回りを見ずに出て行ったことで、本部の入口で何処に行けばいいか分からずに立ち止まっていたら、後ろから蹴飛ばされた。
「邪魔だ!何入口で立ち止まってやがる!」
「どうせ万年低ランクだろうよ!おっさんみたいな奴は本部に来んじゃねえよ」
「本当ねえ、お金も力も無さそうな冴えないおじさんだこと」
蹴飛ばされて直ぐに振り向くと、男二人に女一人の三人組の冒険者がそう怒鳴っているのに床に座り込んだまま呆然と眺めていたら、男二人に通りざまに唾を掛けられた。
入口で呆然と立っていた俺も悪いが、ここまでされるほどの事かと、ニヤついた笑いと共に去って行く彼らに威圧を掛けようとしたとき、彼らを先に呼び止める声が聞こえた。
「ちょっと!そこの雑魚たち!うちのリーダーになんてことするの!おじさん、大丈夫?
おじさん強いんだから、あんな雑魚いつものように指で弾いて倒しちゃってよ」
声の主はアマだった。彼女は彼らを雑魚と呼んで俺に手を差し伸べた。
「げえ!撲殺ツインズかよ」
「え、この子たちが撲殺ツインズなの?魔法使いなのにメイスや拳で獲物をタコ殴りして倒すとかいわれてる、あの双子ちゃん?」
「そうだよ!俺たちもつい最近ツインズにボコられたんだからよ!コイツらの仲間がギルド本部の職員に手を出した所為で、一番ランクの低いギルドにしか所属できないんだからよ。
俺たちの所に来ないかと誘っただけなのに、一方的に殴られたんだからよ」
「あれはアンタたちが、アミのおっぱいとお尻を触ったからでしょ!それに、まだ帰って来てなかったおじさんを馬鹿にしたからアミがキレたのが原因だったじゃない!」
なるほど、アマとアミが撲殺ツインズと呼ばれているのに驚いたが、彼らと彼女の会話で彼らと何があったか察した。
つまり、俺が不在だった期間、実力があるのにランクが低いギルドに飛ばされた彼女らを自分のパーティに誘ったところ、アミの逆鱗に触れて一方的に殴られたというところかと納得していたところで、アマが動いて武器も使わず素手で彼らを殴り出した。
その光景は異様で、拳が鉄で出来ているのではないだろうかと思うほどの金属音が聞こえる。殴られている者も、最初に俺を蹴飛ばした男を中心に殴り続け、その光景に同じ仲間の女は怯え、もう一人の男は逃げていた。
流石に俺の仲間である彼女をこのままにしてはいけないと思い、男の腹に乗って殴り続ける彼女の腕を掴んで強制終了させた。
「もう!おじさん。こんな奴は冒険者自体を続けられないようにしなきゃいけないんだよ!」
「随分と過激な発言だな。俺はリーダーとして流石に止めなきゃいけないと思って止めたんだよ。それにやり過ぎだよ。
彼、意識がない上に、顔の原型がないよ」
「ふふん、おじさんが居なかった間、あたしたちはダンクお姉ちゃんに鍛えて貰ってたから、今のあたしなら、力だけならおじさんと良い勝負になると思うよ?」
姐さんはどんな鍛え方したんだよと頭が痛くなってきた所で、この騒ぎを聞きつけたギルドの制服を着た女性職員が駆けつけて来たものの、アマの姿を見てこの状況を理解したのか、ため息を吐いた。
「また貴女ですか。つい先日もう片方の方と問題起こしたばかりなのに…。いくら武闘拳聖の仲間だからって、ギルド本部内での問題は困ります」
「前も言ったけどさあ、今回もコイツが悪いんだよ!今回はうちのリーダーを蹴飛ばして唾を吐いたからさあ」
「リーダー?貴女の所のリーダーは武闘拳聖でしょ?それに何なのかしら、そこの冴えない男は。まさかこの人がリーダーってことはないでしょうね」
女性職員の怪しみながら俺を見る態度にアマの身体がビクンと震え、職員に向かって拳が振るわれたところ、当たる直前で俺が彼女の拳を止めた。
「おじさん!何で止めるの!おじさんが馬鹿にされたんだよ?おじさんが馬鹿にされたってことはあたしたち皆んなが馬鹿にされたと同じことなんだよ?なのに、なのに…」
「なんか、うちの仲間がすみません。
そこの殴られた人は、彼女の言う通り最初に手を出してきたのは彼らの方なんで、正当防衛とかになりませんかね。もし訴訟とか起こすのであれば受けてたちますとだけ言っておきます」
「へ~、貴方が本当の愉快な仲間たちのリーダーってことですか。
では、拳聖さんのリーダー代行って本当だったんですね。分かりました。
では正式に手続きをして下さい。訴訟については、そちらで話し合って決めて下さい。
今回ギルドでの損害はないですから、ギルドからは口出すことはありません」
彼女はそう言うと、次に大きな問題を起こしたらリーダーが責任取ってもらいますからと一言そう付け加えてそそくさと去って行った。
残された俺たちと顔がボコボコで気絶した男と逃げ損なった女だけになったものの、同じ仲間である女は訴える気はないと言ってくれたことにより、今回は運が良かったのだと思って、アマと一緒に帰ろうとした時、逃げた男と共に見覚えのある真っ赤に燃えるような髪の男と一緒に戻って来た。
「おう!おっさんじゃねえか。なんだあ、お前たちが喧嘩売った相手ってのは、おっさんのことだったのかあ?
そりゃあ、無謀ってなもんだ。俺や蒼でも相手にならないっていうのによ」
「その炎のような髪形と髪色ですぐに君だって分かったけど、まさか君のところの仲間だったんだね」
「よせやい。余所余所しいぜ、模擬戦とはいえ、手を合わせた仲じゃねえかよ。俺とは良い戦いだったけどよ、蒼の野郎を瞬殺したのは面白かったぜ。
お前ら、そういうなわけだからよ。
俺らのパーティ『蒼紅(そうく)』は余程のことでもねえ限り、このおっさんのパーティとは敵対しねえぞ。
おっさん、うちの小物共が悪かったな。あとで、キツイ仕置きをしておくからよ。詫びとして今度奢るからよ、飲みに行こうぜ」
彼はそう言ったあと、アマによって顔が変形した仲間の襟首を掴んで引きずって去って行った。残された俺はどうしようかと隣にいるアマを見たら、満面の笑顔で俺を見つめる彼女の顔があった。
「おじさんすっご~い!ねえ、いつ蒼紅のリーダーと知り合いになったの?しかも、勝ったってどういうこと?」
「皇宮でちょこっとね。彼とはレインの騎士団の後で手合わせをしただけだよ」
「えー、本当に~?それにレイン様も呼び捨てって、おじさん本当になにやったの?」
興味深々でそう聞いてくる彼女には、今度話すよと返して、迷ったから一緒に帰ろうと付け加えて話したら、彼女は腹ごなしをしに本部にしかない依頼を受けに来たそうで、どのような依頼か気になって一緒に付いて行ったら、ギルド本部の依頼表はよく見る依頼表の掲示板ではなく、タブレットほどの大きさの液晶モニターの前で確認できる仕様となっていた。
彼女はあまり使い慣れていないのか、慣れない操作でモニターを操作し、自分のランクのSSの字を打ち込んだところで、いつの間にSSランクになったんだと思わず声を出した。
「え~、おじさん今更~。皆んなSSランクになっているんだよ。あ、士郎さん以外だった。士郎さんは転移者だから、ギルド証の作り直しをさせられたんだけど、この国に来るまでのダンジョン踏破によって最低ランクは免れたけど、ランクはBになっちゃって、でも頑張ってSまでになったんだよ。
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「うん、そのはずだと思うけど、とりあえずアマの受けたい依頼を受けたら、ランクアップのできる場所に連れて行ってもらおうかな」
「うん。全然いいよ~。任せてよ」
彼女はそう言ったあと、SSランクの後になにやら数字を打ち込んで、SSランクが受けられるであろう依頼表が部類別にズラッと出てきた。
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