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本編
第一話~緊迫した情勢下~
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聖戦の鎮魂歌~緊迫した現状~
大陸歴853年(西暦2034年)
3月9日
「はぁ!?また、うちに出動要請ですか。」
鬼のような形相で詰め寄ろうとする部下から顔を隠すようにファイルを斜めに持つ。
「黒羽皐月中佐、貴官の言うこともわかるがこれは上からの"命令"だ。」
そんな返しをすると気の抜けたように「はぁ」というため息をつかれた。
ほんとこいつ男勝りだなと思いつつやっぱり命令の一言って便利だよなと思っていると
「失礼しました。どのような任務で?」
と姿勢を正し質問をしてきた。言われるまでも言うつもりだがまぁいい。
「ナポーズドが4日前から中規模艦隊を我が国の国防識別海域ギリギリを航行しているのは承知しているな?」
と簡単な確認をしたところ。
「はい、承知しております。」
と案の定の答えが帰ってきた。というか北方の海軍軍人がこれを知らなかったら減給ものである。
「よろしい、今この警戒にあたっているのが第7潜水隊、第23、24、駆逐任務隊、第3航空任務グループ、第5打撃任務隊の計19隻と60機だ、しかし3日前ナポーズドのツノスト港から補給艦4隻と駆逐艦8隻巡洋艦2隻が出港したことが情報部の調べで発覚した。」
ここまで語り終わった後少し間、黒羽は少し考える素振りをして
「なるほど、つまり我が艦隊はその増援への対処として送り込まれるわけですか。」
と口を開いた。ここまで話せば嫌が否でもわかるか。
「あぁ、我が艦隊からは貴官の第44駆逐隊と扶桑大佐の第13空母打撃群を出す、これは連合艦隊指令部から出された指令だ、したがって上で変更されない限りはこの2部隊を出す、他にも第32駆逐任務隊と第36駆逐任務隊が送り出されるそうだ。」
今回、この件にあたって書類上、第44駆逐隊は第六艦隊所属になっているがさすがに一々第六艦隊を通すわけにもいかないので無理やり指揮権をこちらに委譲させた。頭の固い連中に何か言われそうだが知ったことではない。すると、
「樋川中佐の第45駆逐隊ではなく空母打撃群をですか?」
少し腑に落ちないという返答が帰ってきたがそれも仕方ない。すでに航空戦力は航空巡洋艦の艦載機と合わせて60機も現状対処に向けられているからだ。
「万が一相手側が攻撃を仕掛けてきたさいに、今出ている第5打撃任務隊をこちら側唯一の航空母艦戦力だと思わせ攻撃を集中させる、もちろん防御を固めることは大前提だがな。そして相手の意識外から秘匿しておいた第13空母打撃群でたたく、囮作戦が立案されたからだ。」
これは第13秘匿艦隊(書類上、第三分遣艦隊)と第14秘匿艦隊(書類上、第四分遣艦隊)の艦艇しか搭載していない対偵察衛星欺瞞装置があってこその作戦でもある。そこまで説明をし終えると納得したように
「なるほど、了解しました」
と返事が帰ってきた。有事を見越しての出動である。少し表情が固くなった気もする。
「扶桑大佐にはもう話してある、3日後に出港とする務めをはたせよ。」
秘匿十三艦隊表向きは第三分遣艦隊と言った方が正しいが実は直属の部隊は第十三空母打撃群と港湾警備用のミサイル艇4艇のみなのである。第44駆逐隊と第45駆逐隊は本来第六、第七艦隊所属なのだが指揮はうちがしているようなものだ。しかし形式は必要なようで毎回それらを通さねばならず即応とは言えなかった。今回もそれらの手続きが掛かってしまったために黒羽中佐より先に扶桑大佐に話しをする二度手間になってしまった。
「では、私はこれで。」
と部屋から出て扉を閉める黒羽中佐を見ながら最悪の事態にはならなければいいがと昨日東部方面指令部から送られて来たケース06のファイルを見ながらため息をついた。
ケース06とはナポーズドと信濃が全面戦争、核の使用をも辞さない事態に発展するケースだ。
ナポーズドが信濃近海から撤退するもっとも望ましいケース01
ナポーズドの艦隊が領海に侵入し信濃側が警告射撃等を行いさらに国際情勢が緊迫するケース02
小規模ながら軍事衝突が起きるケース03この時点であらたな冷戦の開幕は不可避だろう。
軍事衝突が起きた後ナポーズドがフェリラース諸島などの戦略的要地を奪取、もしくは海上封鎖を行うケース04
核の使用がちらつくわけではないが両国が本格的に戦争状態に突入するケース05
これらのケースはさらに細分化されておりケース06の中でも最悪なのが核による報復攻撃だ。
他国が核を使用しない場合自国から核の攻撃を行わないことが暗黙の了解となっている信濃だが国民感情に押される可能性が無いとも言いきれないまたそれはナポーズドも同様である。
そしてこれは将官クラスにしか知らされていない機密情報だがナポーズド国政政府内の動向が怪しいというものがある。実際大統領がここ2ヶ月程度表舞台に姿を出していない。さらには軍上層部の数名が実質的な更迭処分にあったこともわかった。
「ホントにきな臭くなってきたなぁ、、、」
そう呟かざるをえなかった。
大陸歴853年(西暦2034年)
3月9日
「はぁ!?また、うちに出動要請ですか。」
鬼のような形相で詰め寄ろうとする部下から顔を隠すようにファイルを斜めに持つ。
「黒羽皐月中佐、貴官の言うこともわかるがこれは上からの"命令"だ。」
そんな返しをすると気の抜けたように「はぁ」というため息をつかれた。
ほんとこいつ男勝りだなと思いつつやっぱり命令の一言って便利だよなと思っていると
「失礼しました。どのような任務で?」
と姿勢を正し質問をしてきた。言われるまでも言うつもりだがまぁいい。
「ナポーズドが4日前から中規模艦隊を我が国の国防識別海域ギリギリを航行しているのは承知しているな?」
と簡単な確認をしたところ。
「はい、承知しております。」
と案の定の答えが帰ってきた。というか北方の海軍軍人がこれを知らなかったら減給ものである。
「よろしい、今この警戒にあたっているのが第7潜水隊、第23、24、駆逐任務隊、第3航空任務グループ、第5打撃任務隊の計19隻と60機だ、しかし3日前ナポーズドのツノスト港から補給艦4隻と駆逐艦8隻巡洋艦2隻が出港したことが情報部の調べで発覚した。」
ここまで語り終わった後少し間、黒羽は少し考える素振りをして
「なるほど、つまり我が艦隊はその増援への対処として送り込まれるわけですか。」
と口を開いた。ここまで話せば嫌が否でもわかるか。
「あぁ、我が艦隊からは貴官の第44駆逐隊と扶桑大佐の第13空母打撃群を出す、これは連合艦隊指令部から出された指令だ、したがって上で変更されない限りはこの2部隊を出す、他にも第32駆逐任務隊と第36駆逐任務隊が送り出されるそうだ。」
今回、この件にあたって書類上、第44駆逐隊は第六艦隊所属になっているがさすがに一々第六艦隊を通すわけにもいかないので無理やり指揮権をこちらに委譲させた。頭の固い連中に何か言われそうだが知ったことではない。すると、
「樋川中佐の第45駆逐隊ではなく空母打撃群をですか?」
少し腑に落ちないという返答が帰ってきたがそれも仕方ない。すでに航空戦力は航空巡洋艦の艦載機と合わせて60機も現状対処に向けられているからだ。
「万が一相手側が攻撃を仕掛けてきたさいに、今出ている第5打撃任務隊をこちら側唯一の航空母艦戦力だと思わせ攻撃を集中させる、もちろん防御を固めることは大前提だがな。そして相手の意識外から秘匿しておいた第13空母打撃群でたたく、囮作戦が立案されたからだ。」
これは第13秘匿艦隊(書類上、第三分遣艦隊)と第14秘匿艦隊(書類上、第四分遣艦隊)の艦艇しか搭載していない対偵察衛星欺瞞装置があってこその作戦でもある。そこまで説明をし終えると納得したように
「なるほど、了解しました」
と返事が帰ってきた。有事を見越しての出動である。少し表情が固くなった気もする。
「扶桑大佐にはもう話してある、3日後に出港とする務めをはたせよ。」
秘匿十三艦隊表向きは第三分遣艦隊と言った方が正しいが実は直属の部隊は第十三空母打撃群と港湾警備用のミサイル艇4艇のみなのである。第44駆逐隊と第45駆逐隊は本来第六、第七艦隊所属なのだが指揮はうちがしているようなものだ。しかし形式は必要なようで毎回それらを通さねばならず即応とは言えなかった。今回もそれらの手続きが掛かってしまったために黒羽中佐より先に扶桑大佐に話しをする二度手間になってしまった。
「では、私はこれで。」
と部屋から出て扉を閉める黒羽中佐を見ながら最悪の事態にはならなければいいがと昨日東部方面指令部から送られて来たケース06のファイルを見ながらため息をついた。
ケース06とはナポーズドと信濃が全面戦争、核の使用をも辞さない事態に発展するケースだ。
ナポーズドが信濃近海から撤退するもっとも望ましいケース01
ナポーズドの艦隊が領海に侵入し信濃側が警告射撃等を行いさらに国際情勢が緊迫するケース02
小規模ながら軍事衝突が起きるケース03この時点であらたな冷戦の開幕は不可避だろう。
軍事衝突が起きた後ナポーズドがフェリラース諸島などの戦略的要地を奪取、もしくは海上封鎖を行うケース04
核の使用がちらつくわけではないが両国が本格的に戦争状態に突入するケース05
これらのケースはさらに細分化されておりケース06の中でも最悪なのが核による報復攻撃だ。
他国が核を使用しない場合自国から核の攻撃を行わないことが暗黙の了解となっている信濃だが国民感情に押される可能性が無いとも言いきれないまたそれはナポーズドも同様である。
そしてこれは将官クラスにしか知らされていない機密情報だがナポーズド国政政府内の動向が怪しいというものがある。実際大統領がここ2ヶ月程度表舞台に姿を出していない。さらには軍上層部の数名が実質的な更迭処分にあったこともわかった。
「ホントにきな臭くなってきたなぁ、、、」
そう呟かざるをえなかった。
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