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Artémis des larmes ~アルテミスの涙~
第14話
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「セシルから聞いたぞシャル、昨日のピアノのレッスンはなかなか面白そうだったじゃないか」
さて翌日のことです。
日当たりの良いお城の南側にあるバルコニーでウィリアム様とシャルロット様はお茶を楽しまれております。セバスチャンの淹れてくれた、アールグレイの紅茶を一口飲まれてウィリアム様はいたずらっ子ぽくシャルロット様に微笑みかけられました。
「やだ!セシルったら!」
「あの叔父上を唸らすとはなかなかやるなぁ」
「んもぅ!お兄様茶化さないで!シャルはとても真剣にピアノのレッスンを受けていたのよ?!」
「ピアノ弾くまでに至ってないじゃないですか」
「んもぅヴィーうるさい!」
濃いめのアールグレイにたっぷりのミルクと蜂蜜を入れたミルクティーを飲まれていたシャルロット様は、んもぅ!と少しプンスカしながらカップをソーサーに置いてヴィンセントを睨みます。
しかしヴィンセントは子猫は一生懸命何も考えずに睨んできている、とでも言いたいような目でシャルロット様を後ろから腕組みをして見ております。
「まぁまぁ二人とも。でもどうだ?叔父上のレッスンは面白かっただろう?」
「そ…そうね。今までの先生方と比べたらとても分かりやすかったし楽しかったわ!」
「私も小さい時は叔父上にピアノを教えてもらっていたよ。子どもを飽きさせないように、興味を持ってもらえるようにと遊ぶように教えるのがとっても上手いんだよなぁ」
「ちょっと待って…子どもを飽きさせないってどういう…」
「めちゃめちゃ子ども扱いされてるんですよ姫様」
「…」
頭をがっくり落としてシャルロット様はチーンと撃沈してしまいました。ウィリアム様はまぁまぁ…とシャルロット様を慰めるようにお声を掛けますが、ヴィンセントはシレッと後ろから静かに見つめておりました。
「まぁつい何故か子ども扱いしてしまうんだよなぁ、シャルは」
「もうすぐ15になられるというのにねぇ」
「なによぉ」
ヴィンセントは後ろから聞こえよがしにはぁ…と溜息をついてシャルロット様を見つめます。ぱっと後ろを振り返り、シャルロット様はヴィンセントをキッと睨みつけますがヴィンセントは呆れたような視線でシャルロット様を見ております。
「まぁまぁ二人とも。でもまぁ…ゲルハルト王子はお前のことをいたく気に入っている様子だったぞ」
「そうなの?」
「幻の宝石を贈られるくらいですからねぇ」
「あぁ。まぁ豪華すぎる贈り物だったがな。昨日もお前と一緒に踊った時の感想をたーっぷりと述べてくれたよ」
「何だか恥ずかしいわ」
「あははははは。とても美しくて愛らしくて素敵だったと言っていたよ」
「!」
「思わず思いっきり笑ってしまうところを堪えるのが大変でしたよ」
「んもぉ!ヴィーったら茶化さないでよっ!」
少しシャルロット様のお顔が赤くなりましたが、それを茶化すかのようにヴィンセントは無慈悲にも突っ込みを入れます。パッと振り返りヴィンセントを睨みますが、相変わらずヴィンセントはシレッとした何か?と言った顔でシャルロット様を見返します。
「いやぁ…ホンットお城の外の人たちは皆姫様のその外見に騙されてますよね。こんなにもお転婆ではねっかりでワガママのお子ちゃまなのに…」
「パレードの時以外はめったに市街に出ないからな。深窓の令嬢だな」
「使用人たちも国民の夢を壊さないように絶対口外しませんもんね。出来た使用人たちです」
ウィリアム様とヴィンセントがうんうん、と頷き合うとプッと吹きだし笑い合いました。その様子を見てシャルロット様はさらにんもぅ!とプリプリ怒られます。
「んもぅ!お兄様もヴィーも嫌いよぉ!」
「すまんすまん、ちょっと茶化してしまったな」
「姫様、黙っていれば賢そうにも見えるのに…残念ですね」
「なによぉ!」
「…そう言うところですよ姫様」
聞こえよがしに大きな溜息をついて言うヴィンセントの厭味の挑発に乗るシャルロット様を、ばあやはセシルはヒヤヒヤと冷や汗をかきながら見守っておりました。セバスチャンは動じずにスッと瞳を閉じて口元に笑みを浮かべながら静かに立っておりました。
「んもぅ!ヴィーったらホント、厭味ばっかり言うんだから!もぅ大嫌いよ!」
「嫌いで結構です。姫様のお世話は私の仕事ではありませんし、姫様の手がかからなくなるなら大歓迎ですから」
「…そんなこと言って寂しがっても知らないんだから!」
「は?」
「ごちそう様でした!もぅ!シャルはお部屋に帰るわ!!御機嫌よう!!」
スッとシャルロット様は勢いよく立ち上がると、ご挨拶だけして振り返りもせずにお部屋へと戻って行かれます。慌ててセシルとばあやがウィリアム様に一礼をしてその後を追っていきます。
その場に残されたウィリアム様とヴィンセントは、ちょっと意外と言った様子で呆気に取られておりました。
まぁ座れよ、とウィリアム様は合図をされると、ヴィンセントはスッと頭を下げて空いている席に座りました。セバスチャンが素早くお茶を淹れてくれてヴィンセントの前に出してくれております。
「…おや、ちょっと怒らせてしまったかな?」
「ですかね。いつもはフグみたいにほっぺを膨らませて拗ねるだけなのに」
「何だか最近ワガママに拍車がかかってるような気がするんだが」
「今頃気が付かれました?まぁ陛下がこのチョコレートでコーティングされた甘々のケーキのように姫様を甘やかすからですよ」
「そうかぁ?そういうお前だってなんやかんや言ってシャルをこのロールケーキのスポンジのように包み込んでるじゃないか」
はぁ…と呆れたようにヴィンセントは腕組みをしながらため息をつき、テーブルの上に鎮座しているワゴンから一口サイズのチョコレートケーキを手に取り摘まむと、甘っ!!と顔をしかめセバスチャンが淹れてくれたお茶を一気に飲み干します。するとウィリアム様もワゴンからこれまた一口サイズのロールケーキを手に取りパクッと口の中に放り込み笑顔で返しました。
「いやいや、私はそんな甘やかしておりませんよ」
「さぁどうだかな。今朝だってアレだろ?シャル起こしに行ってるんだろ?」
「それは姫様がなかなか起きないってセシルとばあやに泣きつかれたからですよ」
「その後抱っこしながらお風呂まで運んでたじゃないか」
「あぁ、あれは姫様が寝ぼけていたからですよ。フラフラ寝ぼけ眼で歩いていて壁や柱にぶつかっていらっしゃったので。あざでも作られたりしたら大変じゃないですか」
セバスチャンが新しく淹れてくれたお茶を飲みながら、ヴィンセントはシレッとした涼しげな顔で返しました。ウィリアム様はワゴンから次はスフレタイプのチーズケーキを取り、これまた一口でパクッと召し上がられます。
「髪も乾かしてやったんだろ?今日のヘアアレンジ可愛かったけど、あれお前がやったんだろ?」
「えぇ。最近新人のメイドが姫様の朝のお世話係になったんですがヘアケアやボディーケアなどお風呂のお世話が雑すぎますので―――…」
「まさかお前…風呂まで一緒に…」
「いや、さすがにそれはしてません」
「あぁよかった…」
「まぁ一緒にお風呂にいたところで何も思いませんけど。姫様がナイスバディ―のセクシーゴージャスでしたら私も抑えるモノが抑えられませんが、姫様は全然その範疇にいらっしゃいませんので大丈夫ですし」
「…うん、だいぶ問題発言だぞ」
「あぁすみません。何の話でしたっけ…あぁそうそう、最近その新人メイドが姫様の朝のボディーケアが非常に雑なので私が代わりに姫様の御髪を整えたんです。毛先も少し痛んでいたので1、2センチほどカットしました」
「お前なんでも出来るな」
「まぁ器用な方だとは思います」
「そうだなぁ。まぁ…シャルはお前にとっても可愛い妹みたいなもんだろうしな」
「遠縁とは言え一応親戚ですしね」
「まぁこれからも手のかかる妹としてシャルの面倒を見てやってくれ」
「…ご命令なら」
その時、静かにお茶を飲む二人の間にス…っと風が通り過ぎ、肩にかかる辺りで緩く結って前に流していたヴィンセントの銀糸のような柔らかい髪をフワッと遊ばせました。
二人の後ろで控えているセバスチャンの燕尾服のテールも微かに風で揺れております。
するとガサッと近くの茂みから物音が聞こえてきました。
三人がそちらに視線を落とすと、シャルロット様のペットの黒猫のノアが出てきて悠然と三人の前を歩いて過ぎて行きました。
「…さて、そろそろ午後の会議の準備でもするか」
「そうですね。事前にお目通しをいただきたい資料がございます」
「分かった。書斎へ行こう」
スッとウィリアム様が立ち上がってセバスチャンにごちそう様、と一言声を掛けて歩き出しました。ヴィンセントは、残ったケーキをバスケットに詰めてください、とセバスチャンに指示しました。おや?と思ったセバスチャンに、どうせ後でお腹空いた~って不機嫌になるでしょうから…とヴィンセントはシャルロット様の口調をまねてみせます。
プッと吹き出してしまったセバスチャンに、フフフ…とヴィンセントは笑うと、お二人は顔を見合わせて笑い合いました。
「ではすぐにシャルロット様のお部屋にお持ちいたしましょう」
「よろしく頼みましたよ」
「はい」
青い空には雲一つない穏やかな昼下がり、今日もローザタニアには笑いと平穏が流れております。
さて翌日のことです。
日当たりの良いお城の南側にあるバルコニーでウィリアム様とシャルロット様はお茶を楽しまれております。セバスチャンの淹れてくれた、アールグレイの紅茶を一口飲まれてウィリアム様はいたずらっ子ぽくシャルロット様に微笑みかけられました。
「やだ!セシルったら!」
「あの叔父上を唸らすとはなかなかやるなぁ」
「んもぅ!お兄様茶化さないで!シャルはとても真剣にピアノのレッスンを受けていたのよ?!」
「ピアノ弾くまでに至ってないじゃないですか」
「んもぅヴィーうるさい!」
濃いめのアールグレイにたっぷりのミルクと蜂蜜を入れたミルクティーを飲まれていたシャルロット様は、んもぅ!と少しプンスカしながらカップをソーサーに置いてヴィンセントを睨みます。
しかしヴィンセントは子猫は一生懸命何も考えずに睨んできている、とでも言いたいような目でシャルロット様を後ろから腕組みをして見ております。
「まぁまぁ二人とも。でもどうだ?叔父上のレッスンは面白かっただろう?」
「そ…そうね。今までの先生方と比べたらとても分かりやすかったし楽しかったわ!」
「私も小さい時は叔父上にピアノを教えてもらっていたよ。子どもを飽きさせないように、興味を持ってもらえるようにと遊ぶように教えるのがとっても上手いんだよなぁ」
「ちょっと待って…子どもを飽きさせないってどういう…」
「めちゃめちゃ子ども扱いされてるんですよ姫様」
「…」
頭をがっくり落としてシャルロット様はチーンと撃沈してしまいました。ウィリアム様はまぁまぁ…とシャルロット様を慰めるようにお声を掛けますが、ヴィンセントはシレッと後ろから静かに見つめておりました。
「まぁつい何故か子ども扱いしてしまうんだよなぁ、シャルは」
「もうすぐ15になられるというのにねぇ」
「なによぉ」
ヴィンセントは後ろから聞こえよがしにはぁ…と溜息をついてシャルロット様を見つめます。ぱっと後ろを振り返り、シャルロット様はヴィンセントをキッと睨みつけますがヴィンセントは呆れたような視線でシャルロット様を見ております。
「まぁまぁ二人とも。でもまぁ…ゲルハルト王子はお前のことをいたく気に入っている様子だったぞ」
「そうなの?」
「幻の宝石を贈られるくらいですからねぇ」
「あぁ。まぁ豪華すぎる贈り物だったがな。昨日もお前と一緒に踊った時の感想をたーっぷりと述べてくれたよ」
「何だか恥ずかしいわ」
「あははははは。とても美しくて愛らしくて素敵だったと言っていたよ」
「!」
「思わず思いっきり笑ってしまうところを堪えるのが大変でしたよ」
「んもぉ!ヴィーったら茶化さないでよっ!」
少しシャルロット様のお顔が赤くなりましたが、それを茶化すかのようにヴィンセントは無慈悲にも突っ込みを入れます。パッと振り返りヴィンセントを睨みますが、相変わらずヴィンセントはシレッとした何か?と言った顔でシャルロット様を見返します。
「いやぁ…ホンットお城の外の人たちは皆姫様のその外見に騙されてますよね。こんなにもお転婆ではねっかりでワガママのお子ちゃまなのに…」
「パレードの時以外はめったに市街に出ないからな。深窓の令嬢だな」
「使用人たちも国民の夢を壊さないように絶対口外しませんもんね。出来た使用人たちです」
ウィリアム様とヴィンセントがうんうん、と頷き合うとプッと吹きだし笑い合いました。その様子を見てシャルロット様はさらにんもぅ!とプリプリ怒られます。
「んもぅ!お兄様もヴィーも嫌いよぉ!」
「すまんすまん、ちょっと茶化してしまったな」
「姫様、黙っていれば賢そうにも見えるのに…残念ですね」
「なによぉ!」
「…そう言うところですよ姫様」
聞こえよがしに大きな溜息をついて言うヴィンセントの厭味の挑発に乗るシャルロット様を、ばあやはセシルはヒヤヒヤと冷や汗をかきながら見守っておりました。セバスチャンは動じずにスッと瞳を閉じて口元に笑みを浮かべながら静かに立っておりました。
「んもぅ!ヴィーったらホント、厭味ばっかり言うんだから!もぅ大嫌いよ!」
「嫌いで結構です。姫様のお世話は私の仕事ではありませんし、姫様の手がかからなくなるなら大歓迎ですから」
「…そんなこと言って寂しがっても知らないんだから!」
「は?」
「ごちそう様でした!もぅ!シャルはお部屋に帰るわ!!御機嫌よう!!」
スッとシャルロット様は勢いよく立ち上がると、ご挨拶だけして振り返りもせずにお部屋へと戻って行かれます。慌ててセシルとばあやがウィリアム様に一礼をしてその後を追っていきます。
その場に残されたウィリアム様とヴィンセントは、ちょっと意外と言った様子で呆気に取られておりました。
まぁ座れよ、とウィリアム様は合図をされると、ヴィンセントはスッと頭を下げて空いている席に座りました。セバスチャンが素早くお茶を淹れてくれてヴィンセントの前に出してくれております。
「…おや、ちょっと怒らせてしまったかな?」
「ですかね。いつもはフグみたいにほっぺを膨らませて拗ねるだけなのに」
「何だか最近ワガママに拍車がかかってるような気がするんだが」
「今頃気が付かれました?まぁ陛下がこのチョコレートでコーティングされた甘々のケーキのように姫様を甘やかすからですよ」
「そうかぁ?そういうお前だってなんやかんや言ってシャルをこのロールケーキのスポンジのように包み込んでるじゃないか」
はぁ…と呆れたようにヴィンセントは腕組みをしながらため息をつき、テーブルの上に鎮座しているワゴンから一口サイズのチョコレートケーキを手に取り摘まむと、甘っ!!と顔をしかめセバスチャンが淹れてくれたお茶を一気に飲み干します。するとウィリアム様もワゴンからこれまた一口サイズのロールケーキを手に取りパクッと口の中に放り込み笑顔で返しました。
「いやいや、私はそんな甘やかしておりませんよ」
「さぁどうだかな。今朝だってアレだろ?シャル起こしに行ってるんだろ?」
「それは姫様がなかなか起きないってセシルとばあやに泣きつかれたからですよ」
「その後抱っこしながらお風呂まで運んでたじゃないか」
「あぁ、あれは姫様が寝ぼけていたからですよ。フラフラ寝ぼけ眼で歩いていて壁や柱にぶつかっていらっしゃったので。あざでも作られたりしたら大変じゃないですか」
セバスチャンが新しく淹れてくれたお茶を飲みながら、ヴィンセントはシレッとした涼しげな顔で返しました。ウィリアム様はワゴンから次はスフレタイプのチーズケーキを取り、これまた一口でパクッと召し上がられます。
「髪も乾かしてやったんだろ?今日のヘアアレンジ可愛かったけど、あれお前がやったんだろ?」
「えぇ。最近新人のメイドが姫様の朝のお世話係になったんですがヘアケアやボディーケアなどお風呂のお世話が雑すぎますので―――…」
「まさかお前…風呂まで一緒に…」
「いや、さすがにそれはしてません」
「あぁよかった…」
「まぁ一緒にお風呂にいたところで何も思いませんけど。姫様がナイスバディ―のセクシーゴージャスでしたら私も抑えるモノが抑えられませんが、姫様は全然その範疇にいらっしゃいませんので大丈夫ですし」
「…うん、だいぶ問題発言だぞ」
「あぁすみません。何の話でしたっけ…あぁそうそう、最近その新人メイドが姫様の朝のボディーケアが非常に雑なので私が代わりに姫様の御髪を整えたんです。毛先も少し痛んでいたので1、2センチほどカットしました」
「お前なんでも出来るな」
「まぁ器用な方だとは思います」
「そうだなぁ。まぁ…シャルはお前にとっても可愛い妹みたいなもんだろうしな」
「遠縁とは言え一応親戚ですしね」
「まぁこれからも手のかかる妹としてシャルの面倒を見てやってくれ」
「…ご命令なら」
その時、静かにお茶を飲む二人の間にス…っと風が通り過ぎ、肩にかかる辺りで緩く結って前に流していたヴィンセントの銀糸のような柔らかい髪をフワッと遊ばせました。
二人の後ろで控えているセバスチャンの燕尾服のテールも微かに風で揺れております。
するとガサッと近くの茂みから物音が聞こえてきました。
三人がそちらに視線を落とすと、シャルロット様のペットの黒猫のノアが出てきて悠然と三人の前を歩いて過ぎて行きました。
「…さて、そろそろ午後の会議の準備でもするか」
「そうですね。事前にお目通しをいただきたい資料がございます」
「分かった。書斎へ行こう」
スッとウィリアム様が立ち上がってセバスチャンにごちそう様、と一言声を掛けて歩き出しました。ヴィンセントは、残ったケーキをバスケットに詰めてください、とセバスチャンに指示しました。おや?と思ったセバスチャンに、どうせ後でお腹空いた~って不機嫌になるでしょうから…とヴィンセントはシャルロット様の口調をまねてみせます。
プッと吹き出してしまったセバスチャンに、フフフ…とヴィンセントは笑うと、お二人は顔を見合わせて笑い合いました。
「ではすぐにシャルロット様のお部屋にお持ちいたしましょう」
「よろしく頼みましたよ」
「はい」
青い空には雲一つない穏やかな昼下がり、今日もローザタニアには笑いと平穏が流れております。
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