召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

文字の大きさ
67 / 830
第五章 空は近く、望は遠く

そしてみんなが……

しおりを挟む
「リーダ!」

 ミズキがオレを見て声をあげる。
 気がつけば、獣人達3人もプレインもオレをみていた。
 しゃがみこんだノアを見る。
 腹痛に、視点の定まらない目、何かを言おうとしているが言えない様子。
 そして、エリクサーを飲んでも治らない状況。病気ではないということだ。
 幸いオレにも経験がある。耐えきれない何かによるストレスによるものだろう。
 ノアは何かに気がついた、それが何かは分からない。
 言わないのは、言えないということだ。オレ達にも関わることだと判断したのだろう。
 そうであれば無理に聞けない。
 オレが……オレ達が、ノアのためにできることは、その言えない何かをくみ取り、答えをだすことだ。
 良い結果でなくても、共感できれば大分楽になると思う。
 そうと決まれば、まずは出来ることをしよう。

「ノア……きっと、捜し物に疲れたんだよ」

 ノアに近づき、頭をそっとなでた後、抱えあげベッドに寝かせる。

「チッキー、トッキーにピッキーは、ノアと一緒にいてくれる?」
「わかったでち」
「ノア、少しだけカガミとサムソンに話をしてくるね」
「あのね……いなくなったりしないよね」

 部屋をでる寸前、ノアに消えるような声で質問される。
 いなくなる? どうして、そんなことを考えたのだろう?
 見当がつかない。やはり、サムソンとカガミに相談してみたほうがいいだろう。

「もちろん」

 上手く笑えているだろうか、笑顔で答える。

「私、ここに残るよ」

 そう言ったミズキに頷いて、カガミとサムソンに合流し、事情を伝える。
 何か思い当たることがないかもあわせて聞いておく。

「鞄に何をいれていたがカギだと思います。思いません?」

 そうだ、何を探していた?
 ハロルドを探していたのに、鞄を探す理由がわからない。
 さすがにハロルドが鞄の中に隠れているとは思えない。

「そうだな……そういえばリンゴ……誰か食べた?」

 しばらく3人で考えていると、唐突にサムソンが妙な質問をした。

「リンゴ?」
「あぁ、召喚魔法で呼び出したリンゴだ。いつの間にかなくなっていたけど、誰か食べたか?」

 オレは食べていない。

「私も食べてないですが……」
「少し聞いてくる」

 サムソンは、走ってノアのいる場所へと、向かったかと思うとすぐに戻ってきた。

「ノアも、ミズキも食べていなかった」
「リンゴがどうかしたんですか?」
「召喚したものが無くなっているんだ……オレの召喚した琥珀は消えていた。岩塩は残っていた。もっとも、ほんの少し前まで、俺は何処かに落として無くしただけだと思っていたんだがな」
「ノアちゃんに、貝殻をあげた。私……召喚したものをあげた……それが無くなっていた?」

 やっとサムソンの行動の意図も、ノアがストレスに倒れた理由もわかった。
 召喚したものが消えたんだ。
 ハロルドも、貝殻も、他にも消えたものがあるのかもしれない。
 オレ達も消えると考えたんだ。
 対策、解決策は……考えたままを口にする。

「ノアのケアをしつつ、召喚魔法について、今回の現象について調べる」
「ブラウニーさん達に聞いてみることにしようと思います」
「だったら、俺は書籍をあたるぞ」

 オレの思いつきを2人は具体化してくれた。
 頼りになる同僚と、今、この場所にいることに感謝する。オレ1人では到底無理な事がサクサク決まる。

「2人はその路線で、いちおうジラランドルにアドバイスを求めてくれる欲しい」
「ええ……そうね」
「あとチッキー達には、できるだけノアと一緒にいてくれるように伝えておいて」
「わかった」
「それから……」
「大丈夫だ。こっちはこっちで考えて進める。リーダも何か考えがあるんだろ?」

 そうだ。オレには本命の考えがある。
 召喚魔法について、知識をもっていると答えていたあいつだ。

「あぁ、オレは鹿を狩って、その血肉を触媒に黄昏の者スライフをあたる。あいつは前に話をしたときに知っていそうな……そんな、そぶりを見せていたからな」
「ミズキとプレインを連れていって、できるだけ早く終えて欲しいと思うんです」
「了解。それに今回は遊びじゃない。見つけ次第魔法を使って狩る」

 何が起こるかわからない。手段はできるだけ持っていたほうがいいと考えた。
 すぐに弓と矢を携えて森へと向かう。プレインとミズキがすぐに追いかけてきた。ミズキは槍を抱えて馬に乗っている。

「ノアノアには、チッキー達と、カガミかサムソンのどちらかが必ず一緒にいるって」
「了解、それじゃさっさと済ませて戻ろう」
「そうっスね、雨も降ってきましたし……」

 空を見るとパラパラと雨が降ってきた。小雨だ。本降りになるかもしれない。本当に時間の勝負だな。
 幸い、鹿の現れる場所には見当がつく。
 雨が降っていることもあって森はいつもよりもずっと暗く、場所はわかっているのに辿り着くのに手こずる。何度も森に入っていなければ、進むのも困難だった。
 遊び半分に森に入っていたのは無駄ではなかった……ではなかったが……。

「遊んでないでサッサと鹿を狩って、スライフに聞いておけばよかった」
「こんなことになるとは思わなかったっスもんね……」
「そうそう、過ぎたことはしょうがないじゃん。いまからサッサと鹿を狩ってしまおう」

 そうだな。プレインとミズキの言うとおりだ。後悔先に立たずだ。

「サッサと鹿を見つけて、サッサと狩ろう」
「ノアノア心配だしね。一瞬で始末しようか」
「そうっスね……見つけたっス!」

 小雨が降り、薄暗い森の中にある丘の上、静かに立ちオレ達を見下ろす鹿を見つけた。
 それは今までみた鹿とは違った。
 オレ達の前に現れたのは、普段見かける倍はあろうかと思われる巨大な鹿だった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...