召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第五章 空は近く、望は遠く

そなえ

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 方針が決まったので、皆が動く。
 オレは、魔力の補給を行う。余裕があればカガミとサムソンを手伝う予定だ。

「今度は倒れないようにしないとな」

 祭壇の前に立ったとき、以前魔力を補給しすぎて倒れたことを思い出す。

「大丈夫よぉ、倒れても助けを呼ぶからぁ」

 オレを追いかけて祭壇までやってきたロンロに、適当な言葉を掛けられた。
 確かに、倒れても大丈夫だろうが、倒れないようにしたい。
 魔力の補給を始める。
 相変わらず補給はトロトロと進む。

「この補給、ノアも出来るのかなぁ」
「どうかしらぁ。呪い子は、魔力の色が特殊だからぁ、あまり補給しない方がいいわぁ」

 魔力の色? 今まで聞いたことがない話だ。属性みたいなものだろうか?

「魔力に色があるんですか?」
「色っていうのは比喩よぉ。たとえ……ねぇ。人によって得意な魔法、不得意な魔法があるのぉ。そして、人によって上手く魔法の道具を作動できたり、出来なかったりするのぉ」

 魔法の才能的なものか。
 いつも思うが魔法についてオレは知らないことばかりだ。

「呪い子はぁ、魔法の道具を壊してしまうことが多いと言われているのぉ。それが呪い子のもつ魔力の色……その特性なのねぇ」

 魔法の道具を壊すか……。確かに、この祭壇をはじめ、屋敷の設備が壊れてしまうのは避けたい。
 ジラランドルの鎖を解いたのはノアだった。
 もしかしたら鎖はノアの魔力によって壊れてしまったのかもしれない。

「少しなら大丈夫だろうけどぉ。一度に大量の魔力を補給するのは色が強くでるだろうからぁ、避けたほうがいいわぁ」
「なるほどなぁ。ちなみに、魔力の色ってどうやって調べるんだ?」
「いろんな魔法を使っているうちに気がつくものよぉ」

 魔法的な何かで調べるとか、そんなものでもないのか。
 色っていうから、測定器みたいなもので調べられるのかと思った。

「調べられたら、ノアの得意分野見つけられるかなって思ったんだけど。残念だな」
「きっとノアも自分で気がつくわぁ。そろそろ限界じゃないのぉ?」

 言われてみると、一仕事終えた程度の疲労感がある。
 予定では限界ギリギリまで補給することを考えていたが、倒れてしまって大事な時に動けないのは避けたい。そろそろ切り上げることにしよう。
 補給を終えて、祭壇を起動させる。
 屋敷の魔力残量を調べるとまだまだ補給の余地があることがわかった。
 あとで、ミズキとプレインにもお願いしよう。
 翌日も、補給と召喚魔法を調べることで1日をすごす。

「召喚魔法の本でなくて、魔法解除の本に載っていたんです。苦労しました」

 3日目に、カガミが強制送還の魔法陣を探し当てた。

「強制送還というわけでなくて、正確には召喚魔法によって対象と結ばれた魔力のつながりを断つ魔法だな」
「へぇ、それで解除の分野になるのか」
「逆召喚の魔法って名前です。魔法の名称に召喚ってつくんだから、召喚魔法の本に載っていても良かったと思うんです。思いません?」

 カガミが愚痴る。オレもそう思った。

「それで、その魔法が成功すれば、銀竜クローヴィスは元の場所に帰ると?」
「そのようです。成功すれば、召喚されたものは即座に帰還するみたいです」

 オレも逆召喚の魔法が乗っている部分を読んでみる。
 物体召喚の魔法陣に比べると随分と複雑な魔法陣だ。
 しかも、触媒も特殊だった。
 木を短剣の形に加工しないとならないらしい。屋敷にあった本には形状も事細かに描かれていた。

「手分けして作業したほうがいいと思います。思いません?」
「カガミ氏のいうとおりだ。触媒を作る人間と、魔法陣を描く人間で別れて作業したほうが早く準備できそうだ」

 特に反論もなくカガミの提案にのっとって、2チームに分ける。
 比較的手先が器用な、オレとプレインが触媒を作る。
 残り3人は、魔法陣を描く。
 どうやら逆召喚の魔法を使うと触媒が壊れてしまうらしい。
 本番の前に実験することを考えると複数本必要だ。
 すぐに別れて作業が始まった。
 そうやって作業を進めているうちに瞬く間に日々がすぎた。

「そんなに大きなリンゴがあるの?」
「そうなんだ。大きくて黄色いリンゴなんだ」
「一口で食べちゃうの?」
「うん。尻尾で木から叩き落として、落ちてきたらものガブリと食べるんだ」

 広間の側を通ると声が聞こえる。ノアの声音から随分と話が弾んでいることがわかる。
 ノアと銀竜クローヴィスは随分と仲がよくなったようだ。
 作業は別の部屋で行っているので、あまり銀竜クローヴィスとは顔を合わせない。
 オレ達がいっても、かしこまってしまうのだ。
 結局のところ、あの銀竜の方もオレ達を恐れているのかもしれない。

「苦労したっス」
「こっちも魔法陣、描くのが大変でした」
「大きさの指定がされてなければ簡単だったんだが。まったく肩が痛い」

 魔法陣を描き上げたとき、オレとプレインは8本の触媒を作っていた。
 つまりは本番入れて8回ほど逆召喚の魔法が使えることになる。

「ところでさ、トッキーとピッキーはどうする?」
「それじゃ、いつも通りミズキが迎えにいってもらえるか?」

 トーク鳥でトッキーとピッキーに連絡したが、二人もチッキーと同じ答えだった。
 危険があっても避難はしない。いつも通りで頑張るということだ。
 その意見を尊重することにした。
 いつ来るのか分からない。明日かもしれないし、数ヶ月後かもしれない。
 延々と疎開してもらうこともできないし、獣人達3人もその気は無いそうだ。
 そんなわけで、トッキーとピッキーは、いつものように定期的に屋敷に帰ることになった。

「それでは、実験だけでも進めたいと思うんです。思いません?」

 さて、次の段階だ。
 オレ達は、逆召喚の魔法を試すことにした。
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