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第十一章 不思議な旅行者達
ふなたび
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船旅も10日がすぎ、だいぶ慣れてきた。
海亀はというと、カロメーでの餌付けに成功し、ノアの言うことを素直に従う。ロープをずっと加えたままというのは大変ではないかと思ったが、昨日みたらロープを加えたまま寝ていた。
初めてその様子を見たときは、目をつぶっているだけかと思ったが、途中、ビクッと動きロープを口から離し、慌てて泳いで、またロープを加えるという光景に遭遇し、寝ていると結論づけた。
また迷子にならないかと心配になる。
そんなわけで、たまに海亀の様子をみるが、大抵はグータラと寝ているばかりだ。
「アハハハ。この海亀ってリーダに似てるよね。カロメーが好きで、グータラだしさ」
なんてことをミズキがいいやがった。
この船にも慣れてきたので、タイミング良く甲板にでることも増えてきた。
一応、甲板にはいつ出てもいいのだが、船員さん達の邪魔になるので、暇そうな時や、景色が綺麗だと教えてくれた時だけ出るようにしている。昨日は星空が綺麗だった。
今日は外に出て空を見る。たまに大きな魚が併走しているのが見えた。クジラぐらいの大きさだ。
「あんな大きな魚がいるんですね」
「たまに捕まえて港に運ぶけどよ。やっぱり、あの大きさの魚よりかは小さい魚のほうが味がいいんだよ。うろこは潮風に強い屋根の素材になるし、歯も装飾品のいい素材になるんだがね……味がさ」
船員さんに、そんな小話を教えてもらう。
快適な船旅は続く。
一回だけ、海賊らしき船に遭遇したが、先手必勝でオレ達が乗っている以外の戦艦が撃沈した。
やや不謹慎だが、まるで映画のような海戦風景に見入ってしまった。
そんな船旅は、海岸線に沿って南下する。もうしばらくすると海岸線から離れて一面海の中を進むそうだ。目的地はミングヘット諸島にある。オルオルスという町だ。
「ところでこの船ってすごい武装してるんですけど、何かあるんですか?」
船員さんとも仲が良くなったので、前々から疑問に思っていたことを聞いてみる。
「えっとー、まぁそうですよね。海賊に……あと海には海の魔物がいるので、これくらいはね」
少ししどろもどろになりつつも教えてくれる。
なんでも海賊が出る海域が近いそうだ。念のためということで最低限の武装が必要らしい。
確かに先日も海賊に遭遇していたな。
船団において、船のそれぞれに役割があるそうだ。
目的のため、メリハリをつけた装備をしている。
この船も本当は、戦艦特に用心を運ぶための作りをしているらしい。
「まぁ、お客さんは要人の部屋にいるっていうわけですね」
なるほど。要人の部屋か……どうりで立派な部屋なわけだ。
甲板から見える風景は、前回の船旅と大きく違う。
大量の鳥の群れを見たかと思うと、飛竜にのった船員さんたちが飛び回る風景もみえる。何をしているのだろうと思っていたら、航行中の船と船の行き来は飛竜を使っておこなっているそうだ。
それにこの船には獣人が多い。
ギリアとの違いを実感する。
少しだけ船員の態度が気になったが、他には何事も無く時は進む。平和な日々だ。
そしてその日も、同じように船の甲板から外をみていた。
「なんか光ったっスね」
かじきに似た姿、頭の先が鋭く尖った魚が海面を飛び跳ねるように泳いでいた。
特徴的なのは、その長く尖った先が光っていることだ。雷のように黄色く点滅する光だ。
「ありゃりゃ。あれはボリテル魚だが……数が多いな」
光った光ったと盛り上がっていたオレ達を見た船員の1人が教えてくれる。
「ボリテル魚? あの光ってる魚のことでしょうか?」
「そーだ、もうちょっとここから西方の島海に棲む魚だ。光って見えるのはやつらが鼻先にまとう電撃だよ」
「へー、なんかカッコイイっスね」
「それがな。遠目で見る分にはいいんだが、近づくととても厄介だ」
「襲いかかってきたりするんスか?」
「いやな、襲いかかってはこない。だけどなぁ、何かの間違いで、あの鼻先にまとった電撃がちょっとでもかすれよーものなら死んじまう。近寄りがたい魚なんだよ」
「怖い魚もいるんですね」
「あぁ、海は怖いことがいっぱいだ。だが、いいこともいっぱいだよ」
その日に見た、ボリテル魚は1匹だけではなかった。何匹も何匹も、ボリテル魚が飛び跳ねるように泳いで向かってきている。鼻先の電撃による輝きが海面に照らされて、海が黄色く光り輝いているようだ。
「すごい数のボリテル魚だ。珍しいこともあるもんだ」
幸いこの船団から離れている場所でのことだったので、船員達も気楽だ。
ところがその魚の群れは、ゆっくりと数を増やし、向きを変える。
「あれって近付いてない?」
ミズキが甲板から身を乗り出すように遠くをみて言う。確かに近づいて見える。
ふと頭上で大声がした。マストのにいる船員が何かを叫んでいる。
「あれ、何やってんだろう?」
「そうねぇ。見てくるわぁ」
何か起こっているのだろうか、気になったので、ロンロに様子を見てきてもらう。
「ロンロ、何があったの?」
「船の進路を変えるみたいよ。あのボリテル魚は船団に迫ってくるんだってぇ」
「襲いかかってくるってことっスか?」
「違うみたいよぉ。隊列を組み直すみたいねぇ。通り道を開けて、ぶつからないようにするらしいわ」
その日はそれで終わり。
テキパキとした船員さんたちの行動と、ダイナミックに船が隊列を変える様に、感心した。
翌日また騒ぎが起こる。
今度は何だろう。
部屋の窓からでも、なんとなく想像ができた。
大量の木片が浮いていた。暫くして、それが船の残骸だと分かる。
この船団の残骸ではない、もっと別の船だそうだ。
「海賊船の残骸だってさ。なんかさ、何隻分もあるって」
いつの間にかいなくなっていたミズキが部屋に戻り報告してくれる。
外に聞きに行ってきたのか。
「海賊船の残骸なんスか。へー、僕たちが襲われなくてよかったっスよね」
それからすぐに、なぜ船の残骸がそんなに浮いていたのか、理由について知ることになった。
辺りが一瞬だけ暗くなる。
『ドォン』
いきなり爆発音が響く。
「クラーケンだ!」
ベランダ越しに、甲板でクラーケンという名前を口々に叫ぶ船員さんたちの声が聞こえる。
ただ事では無い。
「様子を見てくる」
今度はオレも甲板に上がる。
「クラーケンだ、クラーケンが出たぞ!」
「ちくしょう。先日のボリテル魚はこいつから逃げてきたのか。海賊船もこいつにやられたってことだ!」
クラーケン?
真っ白な蛇のようなものが、船にまとわりついていた。
いや、違う。
蛇じゃ無い……これはイカの足だ。吸盤がある。
思い出した。船を襲う巨大イカの話。元の世界でも聞いたことあった。
空想上の生き物だと思っていたが、異世界では実在するのか。
「逃げろ!」
「迎撃しろ!」
全員が口々に叫ぶ。まとまりのない言葉が飛び交う。
そして、混乱する船に強い衝撃がはしった。
海亀はというと、カロメーでの餌付けに成功し、ノアの言うことを素直に従う。ロープをずっと加えたままというのは大変ではないかと思ったが、昨日みたらロープを加えたまま寝ていた。
初めてその様子を見たときは、目をつぶっているだけかと思ったが、途中、ビクッと動きロープを口から離し、慌てて泳いで、またロープを加えるという光景に遭遇し、寝ていると結論づけた。
また迷子にならないかと心配になる。
そんなわけで、たまに海亀の様子をみるが、大抵はグータラと寝ているばかりだ。
「アハハハ。この海亀ってリーダに似てるよね。カロメーが好きで、グータラだしさ」
なんてことをミズキがいいやがった。
この船にも慣れてきたので、タイミング良く甲板にでることも増えてきた。
一応、甲板にはいつ出てもいいのだが、船員さん達の邪魔になるので、暇そうな時や、景色が綺麗だと教えてくれた時だけ出るようにしている。昨日は星空が綺麗だった。
今日は外に出て空を見る。たまに大きな魚が併走しているのが見えた。クジラぐらいの大きさだ。
「あんな大きな魚がいるんですね」
「たまに捕まえて港に運ぶけどよ。やっぱり、あの大きさの魚よりかは小さい魚のほうが味がいいんだよ。うろこは潮風に強い屋根の素材になるし、歯も装飾品のいい素材になるんだがね……味がさ」
船員さんに、そんな小話を教えてもらう。
快適な船旅は続く。
一回だけ、海賊らしき船に遭遇したが、先手必勝でオレ達が乗っている以外の戦艦が撃沈した。
やや不謹慎だが、まるで映画のような海戦風景に見入ってしまった。
そんな船旅は、海岸線に沿って南下する。もうしばらくすると海岸線から離れて一面海の中を進むそうだ。目的地はミングヘット諸島にある。オルオルスという町だ。
「ところでこの船ってすごい武装してるんですけど、何かあるんですか?」
船員さんとも仲が良くなったので、前々から疑問に思っていたことを聞いてみる。
「えっとー、まぁそうですよね。海賊に……あと海には海の魔物がいるので、これくらいはね」
少ししどろもどろになりつつも教えてくれる。
なんでも海賊が出る海域が近いそうだ。念のためということで最低限の武装が必要らしい。
確かに先日も海賊に遭遇していたな。
船団において、船のそれぞれに役割があるそうだ。
目的のため、メリハリをつけた装備をしている。
この船も本当は、戦艦特に用心を運ぶための作りをしているらしい。
「まぁ、お客さんは要人の部屋にいるっていうわけですね」
なるほど。要人の部屋か……どうりで立派な部屋なわけだ。
甲板から見える風景は、前回の船旅と大きく違う。
大量の鳥の群れを見たかと思うと、飛竜にのった船員さんたちが飛び回る風景もみえる。何をしているのだろうと思っていたら、航行中の船と船の行き来は飛竜を使っておこなっているそうだ。
それにこの船には獣人が多い。
ギリアとの違いを実感する。
少しだけ船員の態度が気になったが、他には何事も無く時は進む。平和な日々だ。
そしてその日も、同じように船の甲板から外をみていた。
「なんか光ったっスね」
かじきに似た姿、頭の先が鋭く尖った魚が海面を飛び跳ねるように泳いでいた。
特徴的なのは、その長く尖った先が光っていることだ。雷のように黄色く点滅する光だ。
「ありゃりゃ。あれはボリテル魚だが……数が多いな」
光った光ったと盛り上がっていたオレ達を見た船員の1人が教えてくれる。
「ボリテル魚? あの光ってる魚のことでしょうか?」
「そーだ、もうちょっとここから西方の島海に棲む魚だ。光って見えるのはやつらが鼻先にまとう電撃だよ」
「へー、なんかカッコイイっスね」
「それがな。遠目で見る分にはいいんだが、近づくととても厄介だ」
「襲いかかってきたりするんスか?」
「いやな、襲いかかってはこない。だけどなぁ、何かの間違いで、あの鼻先にまとった電撃がちょっとでもかすれよーものなら死んじまう。近寄りがたい魚なんだよ」
「怖い魚もいるんですね」
「あぁ、海は怖いことがいっぱいだ。だが、いいこともいっぱいだよ」
その日に見た、ボリテル魚は1匹だけではなかった。何匹も何匹も、ボリテル魚が飛び跳ねるように泳いで向かってきている。鼻先の電撃による輝きが海面に照らされて、海が黄色く光り輝いているようだ。
「すごい数のボリテル魚だ。珍しいこともあるもんだ」
幸いこの船団から離れている場所でのことだったので、船員達も気楽だ。
ところがその魚の群れは、ゆっくりと数を増やし、向きを変える。
「あれって近付いてない?」
ミズキが甲板から身を乗り出すように遠くをみて言う。確かに近づいて見える。
ふと頭上で大声がした。マストのにいる船員が何かを叫んでいる。
「あれ、何やってんだろう?」
「そうねぇ。見てくるわぁ」
何か起こっているのだろうか、気になったので、ロンロに様子を見てきてもらう。
「ロンロ、何があったの?」
「船の進路を変えるみたいよ。あのボリテル魚は船団に迫ってくるんだってぇ」
「襲いかかってくるってことっスか?」
「違うみたいよぉ。隊列を組み直すみたいねぇ。通り道を開けて、ぶつからないようにするらしいわ」
その日はそれで終わり。
テキパキとした船員さんたちの行動と、ダイナミックに船が隊列を変える様に、感心した。
翌日また騒ぎが起こる。
今度は何だろう。
部屋の窓からでも、なんとなく想像ができた。
大量の木片が浮いていた。暫くして、それが船の残骸だと分かる。
この船団の残骸ではない、もっと別の船だそうだ。
「海賊船の残骸だってさ。なんかさ、何隻分もあるって」
いつの間にかいなくなっていたミズキが部屋に戻り報告してくれる。
外に聞きに行ってきたのか。
「海賊船の残骸なんスか。へー、僕たちが襲われなくてよかったっスよね」
それからすぐに、なぜ船の残骸がそんなに浮いていたのか、理由について知ることになった。
辺りが一瞬だけ暗くなる。
『ドォン』
いきなり爆発音が響く。
「クラーケンだ!」
ベランダ越しに、甲板でクラーケンという名前を口々に叫ぶ船員さんたちの声が聞こえる。
ただ事では無い。
「様子を見てくる」
今度はオレも甲板に上がる。
「クラーケンだ、クラーケンが出たぞ!」
「ちくしょう。先日のボリテル魚はこいつから逃げてきたのか。海賊船もこいつにやられたってことだ!」
クラーケン?
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いや、違う。
蛇じゃ無い……これはイカの足だ。吸盤がある。
思い出した。船を襲う巨大イカの話。元の世界でも聞いたことあった。
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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