250 / 830
第十四章 異質なるモノ、人心を惑わす
こだいへいき
しおりを挟む
とりあえず試したいもの。
魔導弓タイマーネタ。巨大なバリスタだ。
バリスタと言っても、その外見は小型の馬車1台分程の大きさでバリスタの形をした石の塊。ちょうど矢をつがえて、今にも発射しそうな状況を模型にしたような姿をしている。
機械的に動く場所はまったくない。
矢の部分に、くぼみがあり、そこに弾丸状をした触媒をはめ込み使用する。
触媒は複製の魔法を使い適当に増やした。
百個以上はある。この触媒が一つあれば、10発くらいは撃てるようだ。
フルパワーだと1発。
せっかくだ。最初は景気よくフルパワーでいくことにする。
『バリ、バリバリ』
前方で、アレイアチと呼ばれる魔物が、半透明の壁を次々と破っていく姿がみえた。
カガミの魔法により、次々とうっすらと見える魔法の壁が生成される。
そんな次々と追加される魔法の壁に対して、アレイアチは巨大な両足を前に突き出し破壊していく。
何枚も何枚も、軽々と破壊され続ける状況に駄目かもしれないと思ったが、そんなことはなかった。
大量に重なり立ち塞がる魔法の壁を前にして、アレイアチの勢いは大きくそがれ、とうとう最後には、つんのめるように地面に着地した。
その直後、サムソンが生み出したゴーレムの手が、体に似合わない長く巨大な足をグッとつかみ、アレイアチの体を倒す。
「そのまま抑えておいてくれ頼む!」
サムソンに一声かけ、準備を続ける。
「ラルトリッシに囁き……」
はめ込んだ触媒に両手をつき、キーワードをつぶやき、決められた言葉を続けて発する。
「右手は体を、左手は剣を」
オレの両手が黄色く光り出す。一応、説明書きのとおりだ。
これで右手で打つ方向を指さし、左手を右肩に置く。
「リーダ! まだか! 持たない!」
サムソンの大声が響く。
みると、サムソンの作り出したゴーレムの手はもがくように足をばたつかせるアレイアチに壊れかけていた。
「あと少しだ!」
大声で、返答したあと、最後の動作をする。
右肩に置いた左手を、右腕をなでるように動かす。
左手が右の指先まで動けば発射だ。
『ドォン!』
爆発音がして、古代兵器である魔導弓タイマーネタが発射される。
双子が使っていたときのように、巨大な魔法の矢が出現するのだとばかり思っていた。
だが、違った。発射されたのは魔法の矢ではなかった。
巨大な光線……レーザー砲がレーザー光線を発射するように、鮮やかな黄色い線が出現し、まばゆい光とともに地表を削り伸び上がるように空へと打ち上がった。
その光線はアレイアチには直撃しなかったが、ほんの少しだけかすり、巨大な鳥の頭を吹き飛ばした。
それは一瞬の出来事だった。
後に残ったのは、体の3分の1が消し飛んだアレイアチの死体と、倒れた魔物の背後に見える延々とえぐられたような地面だけだった。
かすっただけでこれか。
「マジか」
「リーダ。やりすぎじゃ……」
誰もが唖然としている。
「いや、こんなに威力があるとは思わなくてさ」
オレもこんなに威力があるとは思わなかった。
確実にオーバーキルだ。
「ちょっと使いどころがないぞ、これ」
サムソンが絞り出すように言った言葉に同意だ。
とんでもない破壊力に、持て余す未来しか見えない。
フルパワーはやめた方がいいだろう。
皆、驚いていた。
なかでもイアメスは相当だったようだ。
ぽかんと口を開けたまま。呆然と立ちすくんでいた。手に持っていった細身の剣をおもわず落としてしまったようだ。彼の剣は大平原の草むらに落ちていた。
「リーダは凄いね」
逆に、ノアは嬉しそうに笑っていた。
「さてと、せっかくの大平原のお肉だ」
気を取り直して、解体することにする。
恐竜ではないが、せっかくの大平原の巨獣だ。
いつものように、黄昏の者スライフを呼び出すことにする。
そそくさと魔方陣を広げていると、イアメスが遠巻きに近づいてきた。
「何をされますのデ?」
「せっかくの大平原の巨獣なので、解体してお肉をいただこうかなと」
「解体?」
イアメスが素っ頓狂な声をあげる。
「ええ、せっかくなので」
「か……解体できるのですか」
「ええ、私が解体する訳ではないのですが」
いつものようにスライフを呼び出す。
「久しいな」
「そういや、そうだな。んで、これ。いつものようにチャチャっと頼むよ」
「まかせておけ。我が輩、仕事に手を抜かぬ」
いつも通り捌いてもらう。
瞬くまに、さばかれて、いつものように複数の塊が空中に浮く。
「この肉ってうまいの? 大平原の巨獣って食ったことないから、料理法でいいのがあれば教えてほしいんだけど」
「これは、大平原の巨獣でない。どこにでもいる魔物だ。それに、こいつは食わない方がいいだろう」
「そうなの?」
怪鳥なんていっていたから、毒でもあるのかな。
食えないなら、全部スライフに持って行ってもらうかな。
代わりに何を聞こうか、考えていなかったから悩むな。仲間にも相談してみるか。
「ある意味、毒だ。こいつはデルコゼに身体を冒されている」
デルコゼ。
魔物を操る魔石。確かそういう物だった。
つまり、怪鳥アレイアチは操られていたのか。
この場に魔物を操ってオレ達を襲いそうな人間は一人しかいない。イアメスだけだ。
もしかしたら、もっと遠くにいるのかもしれないが、一番怪しいのはイアメスだ。
やはりイアメスが……。
チラリと彼を見やる。
「デルコゼに覚えがありますか?」
「デ……デルコゼですト?」
「ええ、魔物を操る」
「そうだよ。そいつが昨日の晩、デルコゼを魔物にやってたよ」
ヒョイと柵の方に身を乗り出し、モペアが証言する。
「昨日の夜……そうだったのねぇ」
ロンロが真っ暗で見えなかった状況も、モペアには見えていたようだ。
「もっと早く言えばいいのに」
「あっ、いや、ワタクシ、それは……」
唐突に始まった追及に対し、イアメスがうろたえ、後ずさる。
「大体わかりました。安心してください、イアメス様」
そんなイアメスの前に、カガミがすました顔で近づいていった。
魔導弓タイマーネタ。巨大なバリスタだ。
バリスタと言っても、その外見は小型の馬車1台分程の大きさでバリスタの形をした石の塊。ちょうど矢をつがえて、今にも発射しそうな状況を模型にしたような姿をしている。
機械的に動く場所はまったくない。
矢の部分に、くぼみがあり、そこに弾丸状をした触媒をはめ込み使用する。
触媒は複製の魔法を使い適当に増やした。
百個以上はある。この触媒が一つあれば、10発くらいは撃てるようだ。
フルパワーだと1発。
せっかくだ。最初は景気よくフルパワーでいくことにする。
『バリ、バリバリ』
前方で、アレイアチと呼ばれる魔物が、半透明の壁を次々と破っていく姿がみえた。
カガミの魔法により、次々とうっすらと見える魔法の壁が生成される。
そんな次々と追加される魔法の壁に対して、アレイアチは巨大な両足を前に突き出し破壊していく。
何枚も何枚も、軽々と破壊され続ける状況に駄目かもしれないと思ったが、そんなことはなかった。
大量に重なり立ち塞がる魔法の壁を前にして、アレイアチの勢いは大きくそがれ、とうとう最後には、つんのめるように地面に着地した。
その直後、サムソンが生み出したゴーレムの手が、体に似合わない長く巨大な足をグッとつかみ、アレイアチの体を倒す。
「そのまま抑えておいてくれ頼む!」
サムソンに一声かけ、準備を続ける。
「ラルトリッシに囁き……」
はめ込んだ触媒に両手をつき、キーワードをつぶやき、決められた言葉を続けて発する。
「右手は体を、左手は剣を」
オレの両手が黄色く光り出す。一応、説明書きのとおりだ。
これで右手で打つ方向を指さし、左手を右肩に置く。
「リーダ! まだか! 持たない!」
サムソンの大声が響く。
みると、サムソンの作り出したゴーレムの手はもがくように足をばたつかせるアレイアチに壊れかけていた。
「あと少しだ!」
大声で、返答したあと、最後の動作をする。
右肩に置いた左手を、右腕をなでるように動かす。
左手が右の指先まで動けば発射だ。
『ドォン!』
爆発音がして、古代兵器である魔導弓タイマーネタが発射される。
双子が使っていたときのように、巨大な魔法の矢が出現するのだとばかり思っていた。
だが、違った。発射されたのは魔法の矢ではなかった。
巨大な光線……レーザー砲がレーザー光線を発射するように、鮮やかな黄色い線が出現し、まばゆい光とともに地表を削り伸び上がるように空へと打ち上がった。
その光線はアレイアチには直撃しなかったが、ほんの少しだけかすり、巨大な鳥の頭を吹き飛ばした。
それは一瞬の出来事だった。
後に残ったのは、体の3分の1が消し飛んだアレイアチの死体と、倒れた魔物の背後に見える延々とえぐられたような地面だけだった。
かすっただけでこれか。
「マジか」
「リーダ。やりすぎじゃ……」
誰もが唖然としている。
「いや、こんなに威力があるとは思わなくてさ」
オレもこんなに威力があるとは思わなかった。
確実にオーバーキルだ。
「ちょっと使いどころがないぞ、これ」
サムソンが絞り出すように言った言葉に同意だ。
とんでもない破壊力に、持て余す未来しか見えない。
フルパワーはやめた方がいいだろう。
皆、驚いていた。
なかでもイアメスは相当だったようだ。
ぽかんと口を開けたまま。呆然と立ちすくんでいた。手に持っていった細身の剣をおもわず落としてしまったようだ。彼の剣は大平原の草むらに落ちていた。
「リーダは凄いね」
逆に、ノアは嬉しそうに笑っていた。
「さてと、せっかくの大平原のお肉だ」
気を取り直して、解体することにする。
恐竜ではないが、せっかくの大平原の巨獣だ。
いつものように、黄昏の者スライフを呼び出すことにする。
そそくさと魔方陣を広げていると、イアメスが遠巻きに近づいてきた。
「何をされますのデ?」
「せっかくの大平原の巨獣なので、解体してお肉をいただこうかなと」
「解体?」
イアメスが素っ頓狂な声をあげる。
「ええ、せっかくなので」
「か……解体できるのですか」
「ええ、私が解体する訳ではないのですが」
いつものようにスライフを呼び出す。
「久しいな」
「そういや、そうだな。んで、これ。いつものようにチャチャっと頼むよ」
「まかせておけ。我が輩、仕事に手を抜かぬ」
いつも通り捌いてもらう。
瞬くまに、さばかれて、いつものように複数の塊が空中に浮く。
「この肉ってうまいの? 大平原の巨獣って食ったことないから、料理法でいいのがあれば教えてほしいんだけど」
「これは、大平原の巨獣でない。どこにでもいる魔物だ。それに、こいつは食わない方がいいだろう」
「そうなの?」
怪鳥なんていっていたから、毒でもあるのかな。
食えないなら、全部スライフに持って行ってもらうかな。
代わりに何を聞こうか、考えていなかったから悩むな。仲間にも相談してみるか。
「ある意味、毒だ。こいつはデルコゼに身体を冒されている」
デルコゼ。
魔物を操る魔石。確かそういう物だった。
つまり、怪鳥アレイアチは操られていたのか。
この場に魔物を操ってオレ達を襲いそうな人間は一人しかいない。イアメスだけだ。
もしかしたら、もっと遠くにいるのかもしれないが、一番怪しいのはイアメスだ。
やはりイアメスが……。
チラリと彼を見やる。
「デルコゼに覚えがありますか?」
「デ……デルコゼですト?」
「ええ、魔物を操る」
「そうだよ。そいつが昨日の晩、デルコゼを魔物にやってたよ」
ヒョイと柵の方に身を乗り出し、モペアが証言する。
「昨日の夜……そうだったのねぇ」
ロンロが真っ暗で見えなかった状況も、モペアには見えていたようだ。
「もっと早く言えばいいのに」
「あっ、いや、ワタクシ、それは……」
唐突に始まった追及に対し、イアメスがうろたえ、後ずさる。
「大体わかりました。安心してください、イアメス様」
そんなイアメスの前に、カガミがすました顔で近づいていった。
0
あなたにおすすめの小説
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ドラゴネット興隆記
椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。
ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる