召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十九章 帝国への旅

ゆうかい

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「チッキー!」

 慌てた様子で、チッキーが乗った馬車を追いかけようとしたピッキーの首根っこを掴む。

「リーダ様」

 あいつらにピッキーがさらわれたら大変だ。

「オレ達は、一旦宿に戻る。ミズキ、これを使ってチッキーの居場所を突き止めてくれ」

 そういって、チッキーの居場所がわかるコンパス型の魔導具を渡す。

「了解」
「もし、町の外に出たら一旦戻ってくれ。別の手を考える」
「わかった」

 ミズキと別れ、宿へと戻る。
 ピッキーは、なんども後を振り返り「チッキー……」と弱々しく呟いていた。
 だが、ピッキーを行かせるわけにいかない。
 これ以上、被害を拡大させるわけにはいかないのだ。

「何かございましたか?」
「ええ、ちょっと」

 オレ達の様子に何かを感じ取ったのか、宿の中に控えていた職員が俺に声をかけてきた。
 それを、軽くあしらって、自分たちの部屋へと早足で戻る。

「どうしよう」

 ノアが弱々しい声でオレに問いかける。

「私は……」

 カガミも独り言のように呟く。

「大丈夫。落ち着こう。まずは、皆に報告だ」

 オロオロとしているトッキー。
 真っ青な顔をしているカガミ。
 そして、オレをジッと見つめるノア。
 3人の顔をゆっくりと見回して、静かに落ち着くよう伝える。

「おいらがもっとしっかりしとけば」
「ピッキーのせいじゃないよ」

 部屋に戻りながら色々と考える。
 居場所が見つけた後どうするかだ。
 それは決まっている。
 助け出すだけだ。
 ただ、不安な点もある。
 町の外に出た場合だ。
 その場合は、クローヴィスとノアに追跡を頼む。
 空から探す。
 もう一つの懸念材料。こちらの方が怖い。
 所有権の移転。
 オレや同僚達と違い、チッキー達の奴隷契約は一般的な奴隷契約だ。
 手順さえ踏めば簡単に所有者……つまり主をノアから別の人に変えることができる。
 あんまりぐずぐずしていると、所有者の別の人間にされるかもしれない。
 加えて……持っている魔導具を奪われるかもしれない。
 そうなると追跡が難しくなる。
 どちらにしろ速攻で片づけなくてはならない。
 でも、慌てちゃダメだ。
 そう、自分に言い聞かせながら宿へと戻る。

「何か……あったんスか?」
「チッキーがさらわれた、取り戻さなくてはいけない」

 泣きそうなノアを見て、駆け寄ってきたプレインへ簡潔に状況を説明する。
 オレの言葉を聞いて、何やら工作をしていたサムソンも近づいてくる。

「どうするんだ、お前?」
「どうするもこうするも、チッキーを助けるしかないだろう?」

 それに思った以上に、モルトールに長居するのは面倒くさそうだ。

「問題を解決して、そのまま町を出られるのであれば、そうしたい」
「わかった」

 なんとなく今回の件に、パルパランが関係していると思った。
 あいつは何か時間を稼ぎたい事情があるのだと思う。
 確定ではないが、パルパランとのやり取りの中で、そう感じている。
 どちらにしろパルパランの思惑に乗る気はない。
 さっさと出ていく。
 必要な物は買い揃えた。
 用意は十分できている。

「で、方針はどうしますか?」
「まずはチッキーがどこにいるのかを突き止める。チッキーを連れ去った馬車を、ミズキが追っている」

 あの馬車は相当なスピードを出していた。
 馬車を引く馬は案外すぐに疲れてしまうのだ。
 だから、そんなに遠くには行っていないのではないかと思う。

「ミズキ氏がまかれたら?」
「その時は、ノアにクローヴィスを呼んで貰って空から探す」
「うん。クローヴィスも絶対に助けてくれるはずだよ」
「見つかったら、すぐに皆でチッキー救け出そう」

 もし町の中にある建物にチッキーが連れ込まれたとしても、すぐに場所を動かされるかもしれない。
 見つけたら速攻で救助するのみだ。

「全員で固まって動くのはまずいと思うぞ」
「そうですね。それに、ノアとピッキー達は、宿から出ない方が……いや、出るときは海亀の背にある小屋に入ったまま出た方がいいと思います」
「確かにそうだな。素早く動けるやつが救出に向かった方がいいな」
「だったら、ボクが行くっス」
「では、私が残ります……足手まといになりそうですし……」
「私は……」
「ノアは残っていて。何かあったらハロルドと協力して対応してほしいと思います」
「うん」
「ただいま。チッキー、すぐ近くにある屋敷にいるみたい」

 オレ達が対応を話ししているとミズキが戻ってきた。予想外に早い戻りはオレ達にとって朗報だ。

「屋敷ですか……?」
「そうそう。貴族街にある屋敷。チッキーがさらわれた馬車……あれに、ウィルオーウィスプがへばりついてるって」
「ウィルオーウィスプが? そっか」
「あと、ヌネフが見張ってくれるって。モペアが、教えてくれた」

 忘れていた。モペア達の存在を。
 なんだかんだ言ってオレも焦っていたな。

「さて、まずは現場に行ってみるか」
「了解っス」

 それから、ミズキの案内でチッキーが捕らわれているという屋敷へと向かう。
 助けにきたことがバレないよう、変装の魔法を使い姿を変えて向かった。

「私が、悪意を感じ取るのが遅かったので……急に膨らんだのです」
「ヌネフのせいじゃないさ。パルパランが怪しいと思っていたのに警戒を怠っていた、オレのミスだ」

 妙に殊勝な態度のヌネフを慰め、ヌネフ達が見張っていたという屋敷を見る。
 その屋敷は、思った以上に近くにあった。
 チッキーをさらった馬車が走った方向とは別方向にある屋敷。
 立派な壁に囲まれた屋敷。
 壁越しにみる屋敷は、この辺りの一般的な貴族の屋敷と同じ作りをしている。円筒形の石造りの建物を中心とした建物。屋根は赤い円錐形。
 堅く閉じられた扉に、守りを固めている印象をうける。
 中はどんな状況なのかな……。

「ロンロ」
「なぁに?」
「中を見てきてくれるか?」
「いいわぁ」
「でも、見つからないようにな」

 いつもだったらロンロは、別の人間に見えないから安心できるが、今回は違う。
 少なくてもパルパランは警戒すべきだ。
 あいつはロンロの声が聞こえているとオレは考えている。
 姿が見えても不思議じゃない。
 だから、ロンロには気をつけて行動して欲しいということを添える。
 門を遠目で見張りつつ、ロンロが戻ってくるのを待つ。

「リーダ」

 待っていると、見知らぬ男に名前を呼ばれた。
 一瞬、敵かと思い焦る。

「誰だ?」
「俺だ。サムソンだ。カガミ氏が宿の人に聞いてこの辺りの地図と、町を出るまでの道を聞いてくれたぞ」

 なるほど。地図か。
 確かに、情報は多い方がいい。

「クビシテリア男爵」

 屋敷の所有者の名前、つまりチッキーをさらったのは、この男爵に関係する人間ということになる。
 他にもいろいろなことが、地図を見ていて分かった。
 空き屋があったり、サルバホーフ公爵の別邸も見つけた。
 結構情報が盛りだくさんだな。

「この通りをぐるりと回ると、外に出られるようっスね」

 プレインが地図の道をなぞるように指を這わせる。
 大回りにはなるが、貴族街からすぐに東へと出ることもできるようだ。

「見てきたわぁ」

 地図を見ているとロンロが無事戻ってきた。

「どうだった?」
「そうねぇ。チッキーは地下に居たわぁ。他にも沢山の人が居たわぁ」
「他?」
「えぇ、檻に入れられてたのぉ」
「チッキーは怪我とかしてなかった?」
「怪我してなかったわよぉ。すっごく冷静でぇ、周りの人を励ましてたわぁ」
「よかった」

 他の人というのが誰かわからないが、無事でなによりだ。
 さて……どうやって救出するかだな。
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