召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十五章 待ちわびる人達

きぞくとどれい

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『ドンドンドンドン』

 豪華なベッドですやすやと寝ていたら、扉が激しくノックされる音で目が覚めた。
 なんだよ。朝早くから……と、ぼんやり気分で扉を開けると、プレインとノアがいた。

「おはよう。具合悪いの?」
「先輩……寝てたんスか?」

 ノアも驚いていたところから、けっこう寝入っていたようだ。

「いや、元気だよ。それにしても、フカフカのベッドっていいよね」
「それで、ちょっと、ミズキ姉さんが……」
「ミズキがどうしたんだ?」
「ミズキお姉ちゃんが、喧嘩しちゃったの」

 あいつ。
 あれほど言われているにもかかわらず、騒ぎをおこすとは。
 まったく、ミズキの奴め。
 表にでると、少し離れた場所に、腕を組んだミズキと、お腹を押さえてうずくまっている男がいた。真っ白いシャツに、紺のズボン。見た目の年齢からも、学生を彷彿とさせる出で立ちだ。だが、よくみるとシャツには刺繍が施されていて、見るからに高価な代物。
 貴族……か。

「先輩」
「喧嘩したんだって?」
「私とノアちゃんが馬に乗っているところを、ミズキが見ていたら、あの人が言い寄ってきて……」
「それでミズキが殴ったと?」

 オレの側に駆け寄り神妙に頷くカガミを見て、なんとも言えなくなる。
 どうしようかなと考えていたら、ミズキと目が合った。
 彼女は彼女で、困った様子だ。後先考えず、とりあえず手が出てしまったといった様子がありありと分かる。

「奴隷が、貴族に手を出すなどと……。君達は、身分の違いをわきまえていないのかね!」

 しょうがないかと近づいてみると、相手の男は立ち上がるなりオレを睨みつけて怒りだした。こっち見るな。殴ったミズキを見て言えよ。
 ……身分の違い。

「んん?」

 その言葉に反応したミズキが、男を睨みつけると、彼は後ずさりした。
 ミズキも、ミズキで好戦的すぎるだろう。
 カルシウムが足りていないのか。
 まったく。

「ちょっとミズキも落ち着けよ」
「落ち着いてるって、リーダ」

 ミズキは口では落ち着いていると言うが、落ち着いているようには見えない。
 さて、どうしようか。奴隷が、貴族に手を上げると不味いんだよな。
 なんか罰が酷かった憶えがある。
 あまり思い出せないが。さて、どうしたものか。

「何の騒ぎだ」

 そんな時、男の声がした。
 声がした方をみると、昨日の……男。
 カロンロダニアがいた。
 また、この人の部下か。

「そちらの女が、身分もわきまえず、このクラクレス家のセルベテに対し、手を上げたのです」
「そっちが、チョコチョコと触ってきたからじゃん」

 セクハラ案件。
 しかも、加害者の男は悪びれもしない。ミズキが怒るのもしょうがないかな。

「仔細はどうでもいい……そう、どうでもいい。セルベテよ」

 表情を変えず、そう言ったカロンロダニアの言葉を聞いて、セルベテと呼ばれた加害者の男が「えぇ」と頷き笑みを浮かべる。
 それみたことか、そんな感じだ。

「その者は、ノアサリーナ様の所有奴隷だ。この場で、それがどういう意味を持つのか……わからぬお前ではあるまい?」

 続けてカロンロダニアが言うと、セルベテが顔色をサッと変える。

「それは、その、あの、迂闊でした」
「うむ」

 そして、先ほどの調子に乗った態度から一転し、うなだれカロンロダニアに頭を下げる。

「申し訳ない。度々、騒がせてしまった」

 そういうと、カロンロダニアはオレ達にお辞儀し、その場にいた人を連れ去って行った。
 本当に、騒がせまくりだ。

「あれで謝ったつもり?」

 ミズキは怒り心頭だ。言いたい事はわかる。
 対策くらいは必要だろう。
 だが、ここは異世界。いろいろと特殊ルールがある。
 今後の事もある。言い聞かせておかねばなるまい。

「いや。ミズキ。怒るのはわかるけれど、身分差があるんだから、穏便に、穏便に」
「でもさ、リーダ。あれは無いと思わない?」

 いや、思うけれど。思いはするけれど、それで何とかなる世界では無いのだ。

「言いたい事はわかる。だがな、いいか。いちいち、あんなのにこれ以上かまっても良いことないだろ」
「んー」
「何かしら、あのチキン野郎、あたしが睨んだら怯えてたじゃん。きっと、無能なクズね、フフン。クズ野郎一号ね……とか、心の中で適当に悪態ついて」
「あの、リーダ」

 オレが注意している側から、ミズキが口を挟む。

「いいから聞け。いちいちあんな頭の悪そうなのにかまうな。ムカつくんなら心の中で、無能なゴミクズ野郎とか、あのとぼけた面した小心者とでも、悪態をついて……」
「だから、リーダ……後」

 ん?
 後?
 げっ!
 まだいたの?

「決闘だ!」

 オレの鼻先に指が突きつけられる。
 そこには、顔を真っ赤にして睨みつけるセルベテの姿があった。
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