召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十七章 伝説の、真相

じっかんしたせいちょう

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 余り者のオレは、クルズヤンクという男と組むことになった。

「うっ」

 始まりの合図と共に魔法の矢を喰らった。すでに詠唱を完成させていたらしい。
 いきなりの攻撃に油断した。
 わりと痛い。結構ハードだ。
 もっとも、この程度なら魔法で鎧を作り出せば防御可能だ。

「ハインハイグ先生」

 さて反撃という時に、ピサリテリアが声をあげた。

「どうしたのかね? ピサリテリア君」
「最初の模擬戦は見学だけで実戦はしないはずです。リーダ様は、今日が初めての模擬戦にございます」

 そうなのか。確かにハードだからな。最初は見学して心の準備をするというのもおかしくない。

「リーダは、ほら……あの、ノアサリーナの従者だろう? このくらいなんでもない」

 そんなピサリテリアの言葉に、オレの模擬戦の相手であるクルズヤングがなんでもないかのように応じる。

「ですが……、魔法が制限されていて、いつもと使い勝手が違います」

 そりゃそうだろうな。制限無しで戦うなんて、普通に命がけだ。
 それで先ほどの魔法の矢も、威力がなかったのか。

「申し訳ありません。どのくらい制限されているのか、試してみたいのですが?」

 ということで、少し試してみたいと申し出る。

「あちらの人形に向けて魔法を使いなさい」

 オレの申し出に担当教授であるハインハイグは、演習場の端にある人形を示した。
 木製の等身大をした人形だ。
 早速魔法を詠唱する。

「早い」

 セルベテが驚きの声をあげる。魔法の矢は結構使っているからな、慣れっこだ。

『シュッ』

 魔法の完成と同時、矢の飛ぶ音と共に、魔法の矢が出現する。
 だけど、まだ標的に飛ばさない。すぐに、停止を念じる。
 止めるのは、案外簡単だった。さて、本数は……。
 ひぃふぅみ……21本か。出現する本数は制限によって減らないらしい。
 空中に留めた魔法の矢を数えて成長を実感する。
 オレも成長したものだ。結構、増えている。停止を解除し、標的に向かって解き放つ。

『ダダダダダ』

 木製の人形に魔法の矢が当たり、太鼓を叩いたような音が鳴った。
 人形はグラグラと揺れているが、傷は付いていない。

「威力が……」

 クルズヤンクの呟きが少し聞こえた。
 言われなくてもわかる。
 威力はやはり相当制限されているな。
 普通に使えば、木製の人形くらい粉々にできるだろう。
 でも、魔法の制限下では、人形はびくともしない。
 威力がこの程度なら、今使っている鎧を作る魔法で防御は楽勝だ。

「い、いや。リーダ……君は、初日だからな。今日の所は見学したほうがいいだろう」

 オレが魔法を試している間に、クルズヤングは考え直したようだ。
 見学でいいという。
 ハインハイグも、静かに頷いていた。
 そちらのほうがありがたい。痛いのは嫌だ。

「わかりました。クルズヤンク様、次の講義で、お相手をお願いします」
「あ……あぁ、そう……だな」

 元の世界での学生生活とは違い、オレはとても楽しく講義をうけていた。
 社会人生活を経験しているからか、勉強が楽しく感じる。
 学生生活は順風満帆。
 休みを挟み、学校生活9日目の昼までは、確かにそうだった。

 順調な学生生活に、暗雲が立ちこめたのは大学内の食堂での出来事がきっかけだった。
 高級感溢れるファミレスといった感じの食堂。

「ノーセンキュー」

 美味しい食事を終えた後、向かいに座る同僚2人を前にして、オレは静かに言った。
 肩の辺りまで両手をあげて、静かに厳かに、そう言った。

「もう……」

 カガミが泣きそうな声で呟く。

「違うんだ、カガミ氏。それにリーダ。大事な話なんだ」
「うん」
「彼女は原石なんだ。応援が必要だ。シルフィーナ様は俺の生きがいなんだ」
「そうか」

 サムソンには生きがいがあるらしい。
 元の世界でアイドルを応援しているときのフレーズそのままに、熱心に説明する。
 この学校には生徒会があるのだとか。そして生徒会長であるマルグリットという人は、今年の年末には卒業の見込みだという。
 問題は後任だ。
 青の月、元の世界でいえば7月に選挙をして、次期会長を決めるらしい。
 立候補予定は二人、その一人がシルフィーナという子爵令嬢だという。彼女は、会長になるべく動いていて、定期的に演説を行っているそうだ。演説の前には歌を歌い、人を集めるらしい。
 そんな彼女がサムソンに声をかけた。

「リーダ様に、相談したいことがあるのです」

 講義の後、書類をまとめているサムソンに、彼女はそう声をかけたらしい。
 なんでも、ケルワッル神官からオレの事を聞いたという。神官からのアドバイス、ロクな予感がしない。
 賢者リーダ様ならば、生徒会長選挙に向けて良い助言をするはずだと……神官は言ったそうだ。
 余計な事を言いやがって。

「かしこまりました。私とリーダは共にノアサリーナ様にお仕えする身です。共に貴女に協力するでしょう」

 そうサムソンは即答したのだとか。

「あの、効率的に行動して卒業しようって……そう思っていたんですけど」
「ミートゥー」
「大丈夫だ。そういうわけで、これからシルフィーナ様に面会して欲しい」
「私、これから教授の実験を手伝う約束があるので……」
「ミートゥー」
「リーダは、3級だから、担当教授いないだろ。いいから、行くぞ」

 音も無く遠くへと逃げたカガミに見送りのもと、オレはサムソンに引きずられる。
 そして、彼が原石と呼ぶ子爵令嬢シルフィーナと会うことになった。
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